2.仏性ヒーロー・シッダー★ルッター
★このお話は、実在の宗教・団体とは一切関係ありません
一人の年老いた男が袋小路に追い込まれて、振り返った。
追い掛けている壮年の男は、ドカドカと素早く走る大きな亀に乗っている。
「そこまでです、梵天!」
「誰が梵天じゃい! ブラフマーと呼ばんか」
虚勢を張るブラフマーだが、味方もなく逃げ場すらない。この場には二人だけで、周囲には亀に乗る男性の仲間が二人を探しているのだ。
「皆、仏道に
「お断りじゃ! ただでさえ若い神どもに押されて影が薄いのだ……、ここで活躍せねばなるまいて。お前ごときに邪魔はさせん」
ブラフマーはキッパリと拒絶する。しかし戦う術は持っていない。そして追跡者もそれは同じで、彼は
そう、彼の武器はその言葉なのである。
「すぐに皆がやって参ります。一緒に禅問答をいたしましょう」
「まっぴらごめんよ!」
「ここか、シッダー・ルッター!」
駆けつけたのは、筋肉質で鎧に身を包んだ若い男性だった。
「インドラ!」
「帝釈天」
二人が同時に違う名を呼ぶ。原名はシャックロー・デーヴァーナーン・インドラハというそうだ。wikiより。
「梵天、お前もシッダー・ルッターとともに生きるといい。既にシヴァも大黒天として運命を受け入れている」
「シヴァ……、マハーカーラまでも……」
ブラフマーは唇を噛んだ。第三の目の破壊光線で神一人くらいピーっとぶっ殺しちゃうあの男が……、と小さく呟いている。
「彼は七福神の一人として、皆と船に乗ってくださいます」
「キャラが違い過ぎる……っ、受け入れがたい解釈違いじゃー!」
老人の慟哭も当然だろう。筆者も未だ結びつかないでいる。
「弁財天が“ちょ、逆ハー船って言ったじゃん。話が違う!”と、怒っていた」
「何とむごい、サラスヴァティーよ……!」
帝釈天は助け舟を出すことに失敗した。
「問題ありません。
「川の女神が芸術・学問などの知を司る女神になっとるが、知識も欲じゃろうが」
「……難しいことはどうでもいい。後はお前だけだ!」
インドラこと帝釈天は、力強くブラフマーに迫る。
「ふ……はは、ははは!」
「何がおかしい!?」
「儂一人などと言うからだ。まだ気付かんか……」
言葉に合わせ、シッダー・ルッターが乗っている亀が彼を甲羅から落として前へ進んだ。トタトタとブラフマーの元へと向かう。
「どうしたんですか、亀吉……!?」
「そのような美しくない名で呼んで頂きたくないですね」
無言だった亀が、突如として流ちょうに喋った。声を聴いた帝釈天が、息を止めて目を見開く。
「まさか、お前は……」
「やっと気付きましたか。薄情なことです」
大きな亀は煙のように消え、代わりに光り輝く美しい若者が姿を現した。
「ビシュヌ!」
「あの姿は、私の
「亀なのに車!」
乗り物にはピッタリだ。
追い詰めたと思ったシッダー・ルッターだったが、ブラフマーの味方であるビシュヌは、強い上に美形だ。しかも三界を三歩で歩ききる、謎の特技を持っている。事態は
「こうなれば……私も手段を選びません」
シッダー・ルッターは、地面に横向きに寝た。ブラフマーとビシュヌが、驚愕の表情を浮かべる。
「うおお、まさか……」
「最終奥義! 絶対他力!」
★ついに発動されたシッダー・ルッターの最終奥義、絶対他力!
次回、長きにわたる戦いに決着の時が……!?(嘘です、終わりです)
★★★★★
ていうか、仏陀もビシュヌのアヴァターラの一つとされていたんですね。知りませんでした。仏教がヒンズー教を侵食していく……と思ったら、とんでもないどんでん返しでしたよ(笑)。
苦情は受け付けないよー!
「神と戦う」と考えた時に、「宗教の敵は宗教だな」と思った、というだけの話。
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