闇の生き物
やっと……。
最高の状態に仕上がった。これ以上はないと言い切れる。やるだけのことは、やった。
俺の前に立つ息子。夕闇に浮かぶ亡霊のように朧げ。優しく、丁寧にその左手にナイフを持たせた。
「良くここまでパパの指導に耐えたなぁ。偉いぞ。お前は、パパの誇りだ」
「うん」
「じゃあ……。今から最終試験。やることは分かってるな?」
「うん」
俺は、息子と同じタイプのナイフを片手に持ち、一度深呼吸。
息子に刃を向けた。
「朝は?」
「退屈………」
「昼」
「鬱陶しい………」
「晩」
「狩に酔え」
この瞬間を夢見て今まで生きてきた。昔々、俺が自分の親父を刺殺し、見下ろした時のように。今度は、息子が………。
俺の顔に涙がポタポタ落ちてくる。
「パ…パ……」
「これで良い。父を超えた今、お前は立派な殺し屋になったんだから。おめでとう」
「ごめん…なさ…い」
息子はガクンッと両膝をつき、両手でナイフを握り直す。今度は躊躇なく、何度も何度も。
何度も。
何度も。
俺の体を傷つけた。
「ごめんなさい。嬉し泣きがとまらない……」
息子は笑いながら、俺を破壊し続けた。
これでお前も闇の住人に…………。
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