色彩
僕は、いつも護られている。狐の面をつけた、僕よりも遥かに小さな少女に。
いつも僕達は、一緒に行動している。
親や学校の先生は、見て見ぬふり。黙認。
そんな僕を気に入らない同級生。
放課後。
旧校舎に僕達を呼び出し、僕に汚い言葉を吐くと、持っていた棒で危害を加えようとした。
その瞬間ーーーー
相手の腕が消し飛ぶ。それを見ていた仲間の一人が、叫ぶ。
「うぁ!? なッ、な、何だ、おまっ!!」
「………………」
僕は何もしていない。まるで化け物でも見るような、そんな目をされても困る。
逃げた仲間を執拗に、笑いながら追いかける少女。すぐに捕まり、体を破壊されていた。豆腐でも千切るように、無数の肉片に加工された。
僕は、そんな見慣れた光景にうんざりし、止まらない欠伸をしながら旧校舎を後にした。
【 誰も僕を傷つけることは出来ない 】
もう、二度と。
誰もーーーー
うん?
「…………」
自分で自分を傷つけたらどうなる?
僕は、トイレに行くと少女に嘘をつき、隠し持っていた小型カッターで腕を少し切ってみた。
僕の腕には、すでに僕の知らない切り傷がいくつもあった。
「………………?」
小さな傷口から溢れた、初めて見る自分の血。確かに感じた『痛み』と『興奮』。
いつも邪魔をする少女は、まだトイレの入口で僕が出てくるのを待っている。
数分後。トイレから出た僕は、まだ血が止まらない腕を自慢気に少女に見せつけた。
少女は驚いた様子だったが、すぐにいつもの調子を取り戻し。そして、静かに僕の前から消えた。
狐の面を置いて。
顔に殴られたような痣がある少女がいなくなると僕は面を拾い、興味本意でつけてみた。
狐の面をつけると周りの景色が、すべて灰色に。色のない世界が広がった。
面は、顔に貼り付いたように剥がれない。
仕方なく、僕は面をつけたまま生活を続けた。暇な時間をすべて費やし、他の色を探した。
何日も何日も………。
そしてやっと見つけた。
色のあるカラフルな人間を。僕は、その女子高生に近づき、影のようにその人と行動を共にした。女に近づく危険な輩は、片っ端から排除した。この面をしていると人間を超えた力を発揮出来た。そうして、僕は護る。僕を癒す唯一の色を。
「あなたは、ダレなの? どうしていつも私を守ってくれるの?」
理由は、一つ。はっきりしている。
君だけが、イジメで自殺した僕に温かい色を見せてくれるから。
完
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