第十話 デートって何だ?

流星said

今日は水川さん——―美海とデートか…。

俺は何度も鏡の前で服装を確認する。


「…って、女子かよ俺は‼」


叫んでからハッとする。


母さんいなくて良かったー。

そろそろ出たほうがいいかな…。

美海、仕事終わりだから腹減ってるかな…。

そう思い、キッチンに立つ。

っていうか、美海小食だったな。


俺は再び部屋に戻り、スマホで行き方を確認する。


そもそも、彼女いたことあるけど俺、デートしたことない…。

っていうか、デートって何だ?

俺は自分自身に問いかけた。

考えれば考えるほど、わからない。


俺ははっとした。


美海が喜ぶことすればいいんじゃね?


早速、バイト先の花屋に駆け込んだ。

「ゆう兄、いる?」

「おう、流星か」

ゆう兄こと、品川裕太先輩がバックヤードから出てきた。

「で、彼女に合う花束を、ね。いいんじゃない?流星、お前結構な腕だし、彼女きっと喜ぶよ」

ゆう兄に背中を押され、俺は急いで花を選んだ。


美海への思いを込めて、赤をベースにしたミニブーケを手早く作る。


「お、赤いアネモネか。やるなぁ、琉星」

そう、赤いアネモネの花言葉は、『君を愛する』だ。

それに今回俺が選んだのは、愛に関する花言葉を持つ花々だ。ピンクのガーベラは、『燃える神秘の愛』、カスミソウは、『純潔』。

心を込めて作ったブーケを、赤いリボンで飾り付けて仕上げ、俺はやっと時計をみた。


「やっべ。待ち合わせ10分前…」

「お前らしくないな、待ち合わせに遅れんの」

バッグヤードから再び顔を出したゆう兄が、にやりと笑った。

「俺が連れてってやる」

「え、でも、バイトは――」

気づいたときには、ゆう兄は俺の腕をつかんで走り出していた。

「店長に言ったら、いいって。ほら、来いよ」

俺はゆう兄に言われるがままに車に乗り込んだ。

そっか、ゆう兄、もう車の免許持ってんだな…。

今更そんなことを感じながら、美海に渡すブーケを、壊れないようにそっと抱きしめた。

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