巨蟹宮(キャンサー)ノ章~自動人形逍遥譚

【改稿前】

どんな時空の谷にいたって

あなたは私を見つけるわ


星屑の砂に埋もれてたって

銀河の海に流されてたって

宇宙の次元が違ってたって


きっとあなたは私を見つける

判ってた




【改稿後】

キリキリキィ……ギッ


水銀灯の霞む夜は

まって螺子ネジの動きが鈍くなる

機械仕掛けの発条ゼンマイ

湿度にとても弱いから


襯衣シャツの右袖のボタン

何処かに落としてきてしまったみたいダ

まっすぐに歩けないのさ

左半分が重くってネ

遠目にも不格好な形姿フィギュール

これじゃ見つかるのも時間のうちダ


博士は今ごろ

ボクが座ってた天側窓から

渾天儀こんてんぎを使って

必死に捜してるんだろう

噫!

天赦日てんしゃにちを狙って

抜け出してきたつもりだったのに


もっともっと彼方おちかた

往けるところまで

往けるところまで


カタコトカタコト、カタッ……コトッ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


当初のサブタイトルは『迷宮(ラビリンス)』。

原形を留めてない怒涛の改稿っぷりは、自分が蟹座だからという贔屓目による。

蟹の動きって自動人形みたい、と好みの世界をこれでもかと詰めこんだ。

12星座中、一番地味で扱いにくい外観ゆえ、もっとも難産だったきゅう

え…蟹?! なんだよ蟹って、みたいな。

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