最終話 いざよいフレンズ ドグマくん

ドグマくんが境界線にきて十六日目。

とうとう森を抜けることが出来ました。

ドグマくんは、なんとも言えない顔で、今まで歩いてきた森を眺めています。

「どうした?戻りたいか。」

「んーん。なんか、いろいろあったなぁって。」

ドグマくんはえへへっといい、振り返ると、

「わあ、いいながめだね。」

「うむ。」

あたりはのどかな風景が広がっていました。

さらさらと流れる川。遠くにそびえる山々。そこかしこに色とりどりのお花も咲いています。

「村まではもう少し歩く。そこで、ある人物に会ってもらう。」

「だあれ?めがみさま?」

「否。会えばわかる。」

「うん……。」

「どうした?いささか不満気に聞こえるが。」

「なーんかヤタガラスさんもコタンコロさんも、とおまわりないいかたするよね。」

「……。」

「それに、ちゃんとおしえてくれないし。、あえばわかるー、いけばわかるーばっかだね。」

「そういう決まりゆえ……。」

「ふーん。たいへんだね。」

「ホー……。」

ドグマくんとコタンコロは、森であった事なんかを話しながら歩き続け……


しばらく歩いていると、ひとつの扉がぽつんと野原にそびえ立っていました。

「なにこれ?なんでこんなところに、どあがあるの?」

コタンコロはおもむろに、何やら唱え、

「我はコタンコロ。いざよいの村の守護神。さまよえる魂がひとり、ドグマ殿をお連れした。彼の心、魂、見事試練を突破せり。我が村に招き入れる事となりにけり。」

そして扉をコンコンとならすと、扉がギィーっと開き、中からひとりの老人が出てきました。

老人は両手を合わせ、深々とおじぎをし、

「ははー。コタンコロ様。その者の魂。私共が在らん限りの力添えをし、必ずや、幸福にせんことをここに誓い申し上げまする。」

「そう堅苦しくせずとも良い。」

「ありがとうございます。ドグマくんといったな。ようこそ、我がいざよいの村へ。」

「ねぇ、おじいちゃんだあれ?」

「おお、自己紹介がまだじゃったのう。はじめまして。わしはこの村を治める、いざよい・ふたばりーと申します。よろしく。」

「はじめまして!ぼくドグマくん!いざよい村ってなあに?どこにあるの?」

ドグマくんの疑問はもっとも。そこには扉があるだけで、村はどこにも見当たりません。

「お主、ここまでに何日かかったか覚えておるか?」

ドグマくんはうーん、と考え

「わかんないや。」

「めざめの地より五日、ヤタガラスに案内され、分岐点まで五日。そして、我コタンコロの導きにより、森を抜けるのに五日。合わせて十五夜が過ぎ、今日で十六日目。すなわち、十六夜の月の登りし夕べ、その村の扉、開かれん。」

「よくわかんないや。」

「わからずとも結構。お主はこのご老人の治める村の住人となるのだ。」

「そういう訳じゃ。この扉をくぐると村の一員になれるんよ。」

「ふーん。」

ドグマくんはまだ少しわかってない様子。

「それではお主、達者でな。」

コタンコロが最後の挨拶をします。

「うん、コタンコロさんもげんきでね!」

そう言い、ドグマくんは振り返り、森を眺めながら今までのことを思い出していました。


ジム、ジム。ぼくはジムとはさよならだね。

たのしかったよ。ちょっとざんねんだけど、ぼくはぼくのみらいにいくね。

ヤタガラスさん、ついてきてくれてありがとう。コタンコロさんも。

そして、めがみさま。

ぼくに、みらいをえらばせてくれてありがとう。

どんなみらいがまっているのかな。

いまおもってることも、わすれちゃうんだろうけど、ちょっとこわいけど、へいきだよ。


風が吹き、雲の隙間からお月さまが顔を覗かせています。

扉からは光が溢れ、ドグマくんを優しく包んでいます。

「じゃあ、いこうかの。」

「うん、よろしくおねがいします。」

老人は微笑み、コタンコロにおじぎをし、ドグマくんと扉を跨ぎました。

そして、暖かい光に包まれて——


……

………

「ドグマくん、朝よ!起きなさい!」

眠たい目をこすりながら、ドグマくんは返事をしています。

「はぁ〜い。おはよう、おかあさん。」

「はい、おはよう。朝ご飯の前に顔を洗うのよ。」

「はーい……?」


あれ、なんかまえにもおなじことあったような……


きのせい、かな!


ここは、十六夜の村。

かつて、子どもたちのお友達だったモノ達が、十五の夜を超え、過去を乗り越えて、新しい命として生まれ育つ村。


本人にさえ気づかない、心の奥のその奥に、小さな未練を抱えるモノが暮らす村。


「ドグマくーん!あーそーぼー!」


ドグマくんのお友達がおむかえに来ました。


「あ、ニアちゃんとラニーちゃんだ!」

ドグマくんは急いでご飯を食べ終わり、歯磨きをして玄関に向かいます。

「気をつけるのよー!いってらっしゃい!」

お母さんに元気よく、

「はーい!行ってきます!」

と、返事ををしました。


「きょうはなにしてあそぼうかな!」


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いざよいフレンズ ドグマくん いざよい ふたばりー @izayoi_futabariy

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