第38話 我儘な英雄気取り共

 翌日。魔塞アーマーンへの総攻撃を前にして東門に集結した大勢の傭兵たちに対し武器と食料の配布が始まった。


「いやだ。そんなものいらない」


 だが、ボウケサーとかいう傭兵団の一部が事前に準備されていた武器の受け取りを拒否したのである。


「なんだと?どういうことだ?無料で武器が貰えるんだぞ?!」


 アイザワは驚いて理由を問いただした。


「そんなダサい武器を使えるか!」


「そうだ!俺たちは誇り高き冒険者なんだっ!!」


「冒険者の使う武器は剣と相場が決まっているんだっ!!そんなみっともない武器使えるかよっ!!!」


 彼らが。ボウケサーという傭兵団がダサイと主張し、受け取りを拒否する武器は。

 メイス。チェーンフレイル。モーニングスター。ウォーハンマーといった。いわゆる鈍器の類であった。


「なぁ。お前ら。冷静に考えろ。俺たちはこれから鉄の悪魔と戦うんだぞ?」


「そうだ」


「なら。その折れやすそうな剣じゃなくてこういうカナヅチみたいなので殴った方が有効にダメージを与えられるんじゃないか?」


「ふざけるな!!どこの世界に金槌で世界を救う勇者がいるんだっ!!」


「ハンマーを宝具にする英雄なんて聞いた事がないぞっ!!!!」


「あ。えっと。ポールバニヤンとか?」


「あれはノコギリじゃないか!!!」


「ほれみろっ!!俺たちはそんなダサい武器は使わないからなっ!!」


 結局傭兵団の半分近くは用意された鈍器を受け取らず、水と食料だけ持って出立した。

 受け取ったのは修道女のような元々ハンマー系の武器をこよなく愛するようなごく少数の者だけである。


「結局このハンマー無駄になったなあ」


「仕方ありません。材料は鉄の悪魔を溶かして造った良質な金属ですからね。また鋳つぶして鍋釜や農具に造り直してもらうよう、街の鍛冶屋さんにお願いしましょう」


 神の子は諦めきった口調でそう告げた。

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