第33話 診療所にて


 街の診療所に大やけどをした怪我人が運ばれてきた。


「何事だ!」


 医療ボランティアとして働くことにしていたアスクレビオスが声をあげる。


「火トンボに襲われた人です!」


 青の癒し手が患者の容態を報告した。


「まだ生き残りが街中に潜んでいたんですっ!!」


「そうか。じゃあ治療するから戸板からこっちに移すぞ。一。二。三!!」


 アスクレビオスの合図で診療所の職員は患者を寝台に動かす。


「全身に大やけどを負っています!これではもう助からない!!」


「そうか。ではパピルスの茎で造った呼吸器を気道に挿入する」


「アスクレビオスさん!?一体何を?!!」


「火傷の炎症で気管が塞がってしまう可能性があるんでな。ごういう気道を確保させてもらった。まぁ他にもやり方はあるんだが」


「水を飲ませた方が良いのでは?」


「水なんか飲ませたら気が抜けて死んでしまうだろう。まぁどうしてもというのなら」


 腕に針を通す。


「血管に生理食塩水。そして上昇した体温だが」


 アスクレビオスは患者を風呂桶に満たした水の中にゆっくりとつけた。


「衣服を着用したまま水につけて冷ます。強引に引きはがすと布地ごとハサミで切り取る。容態が安定したら家族に皮膚移植を養成しよう」


「これは!ミイラ造りの作業と同じやり方!」


「という事はこの口に入れられた管と腕の針はバーとカーの出入り口!即ち死者蘇生ために必要な儀式!!!」


「厳密にはまだこの患者は死んでいなくてその手前なんだがまぁいい。輸血を、えっと。死者蘇生のために他者の生命を借りる必要があるから元気そうな人を連れてきてくれ」


「わかりました!イムホテプの使い!!」


 現地スタッフと共にアスクレビオスは救急救命活動を行っていた。

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