第32話 どうしてボウケサーはそんな大量の樽を運ぼうとしたんだろう?

 アイザワ達が城壁の補修工事をしていた頃。あるボウケサーなる傭兵の一群が街中で内緒話をしていた。


「なに!俺たちだけで鉄の悪魔の居城に乗り込むだとっ?!」


「しっ!声がでかいぞ!他の連中に聞かれたらどうする?」


「しかし。三日後に全員で総攻撃する予定じゃないのか?」


「ばーか。そんな事をしていたら他の連中に手柄を横取りされちまうだろうが。王様になって、あの神様だとかいう女をモノにできるのは敵の親玉を仕留めた奴だけなんだ。なら先に行って他の連中を出し抜いた方がいいに決まってるだろう」


「まぁそう言われてみればそうだな」


「だが、貰ったのは支度金だけだ。おそらく食料や水は当日渡されるんじゃないか?」


「どうしてそう思う?」


「お前この街の商店で冷蔵庫見たのか?」


「なるほど。確かに」


「じゃあこの金で食料と水を調達して鉄の悪魔の本拠地に」


「いや。買うのは食料だけでいいだろ。水はそこの噴水でいくらでも手に入る」


 ボウケサーなる傭兵は噴水で水を汲もうとした。するとそこに猫仮面兵士がやって来た。


「お前達。ここで水を汲むのは禁止だ。というよりここで汲む場合は料金を支払う決まりになっている」


「なんだとっ!!?誰がそんなフザケタ決まりをっ!!!」


「いや。以前は無料だったんだ。しかしお前達ボウケサーの仲間が何十個も樽を用意して運びきれもしないのに水を汲んで他の利用者の迷惑になるんでな。だから汲む時点で使用料金を取る事にしたんだよ。樽ならミスカール。壺ならディルハム。皮袋ならファルスでいいぞ。で、汲んでいくのか?」


 ボウケサーなる傭兵たちは再び相談を始めた。


「おいどうする?」


「しかたない。皮袋に最低限の水だけ買って出発しよう」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る