第30話 そんな餌に釣られる連中

「というわけでボウケサーなる傭兵団の皆さま。鉄の悪魔の居城たるアーマーンに対し総攻撃を行いますので奮ってご参加のほどをよろしくお願い申し上げまぁ~~~す」


 神の子が神殿にて演説するも傭兵の反応はあまり芳しくない物だった。


「なめてんじゃねぇーぞこの糞がきがー!!」


「そうだーそうだーー!!」


「あの化け物の巣穴に入ったら二度と戻ってこれねぇーそーじゃねぇーかよー!!」


「なら砂漠でゴールドウォーカー狩ってた方がマシってもんだぜっ!!」


「俺達は楽して儲かる仕事にしか興味がねぇんだっ!!」


 その割にはゴールドスモーの囮にひっかかり、包囲殲滅陣を受けて全滅する傭兵が多い気がしないでもない。


「必要経費はこちらで負担致しますのでご安心ください」


「必要経費?どういうことだ?」


「アーマーンまでだいたい一日かかると思いますがその間の食費飲み水などはこちらで負担致します。また、全滅をしないという事で内部で三日ほど探索を行う事を想定しております。こちらの分の保存食を負担します。さらに武器防具もご用意致します」


「どうする?食料をくれるらしいぞ?」


「だが、死んでしまってはどうにも・・・」


「前金として参加希望者全員に6ミスカール進呈致します。内部突入成功として一体以上の鉄の悪魔の破片を持ち帰る事のできたものにはさらに1ミスカール。中枢部到達成功者全員には60ミスカール進呈致します」


「お、おい。ミスカールってなんだ?!」


「わ、わからん!金の単位なのか!!?」


「さらに鉄の悪魔の総大将を見事撃ち果たした者にはこのシャルティエの国王になる権利を進呈致します」


「し、しかし。死んでしまってどうにも」


 あと一押し。そう判断して神の子は右手をあげた。だいたい隣にいる銀の魔槍の胸の高さくらいまで。


「なお副賞として、こちらの麗しき神を妻とする権利を差し上げたいと思いますっ!!!!」


「よさああああああああ!!!やるでえええええええ!!!!!!」


「まかせろおおおおおおおお!!!!!」


「この世界の平和は俺たちが、いや。俺が守る!!!!!!!!」


 男性陣に比べ、女性陣の反応は大変微妙なものであった。


「ほほほ!!麗しき神を妻とする権利を差し上げますわよっ!!!ところで神の子。妻ってなにかしら?」


「あ、あとで説明しますので今は気にしなくていいです」


「おーい、神の子。そんな約束しちまって大丈夫なのか。あいつらを王様にするだのこいつを嫁にくれてやるだの」


「そうですよ。王様はともかく銀の魔槍さんを嫁にしちゃうだなんて人権侵害もはなはなしいっすよ」


「心配いりません。条件は鉄の悪魔の総大将を倒した者に進呈ですから。私達で総大将を倒しちゃえばいいんですよ」


「あー。そういうことですか」


 神の子は改めて傭兵たちに語りける。


「攻撃開始は三日後の夕刻です。各自支度金を受け取ったらそれで準備を整えるなり遊び惚けるなり前金だけ受け取って逃げるなりご自由にお過ごしください。では皆さん。三日後に東門でお会いしましょう!!」


 神殿に集められた傭兵たちは支度金の6ミスカールを受け取って街に出ていく。


「おーい。遊ぶのはともかく前金だけ貰って逃げていいってのはないんじゃないのか?」


 アイザワはそう言ったが。神の子はこう言い返した。


「いえ。そもそもそういうタイプの人はアーマーンの内部に突っ込んでもたいして役に立たないと思いますので」


「なるほど。それもそうだな」


「ところでアイザワさん。三日間の間遊ぶ予定ですか?」


「いや。とくに予定はないが」


「ではお時間を頂いてもよろしいでしょうか」

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