第24話 神(引退)との対話
「そういうわけですのではいこれ」
低き場所から皆を見守る者は背中に背負っていたピカピカ光る輪っかを外すと銀の魔槍に渡した。
「なんですのこれ?」
「それを背中に背負ってみてください」
「こうかしら?」
言われるがまま銀の魔槍は光る輪っかを背負う。
「で、その状態で手を前に出して。何か欲しいなーーー。て考えてみてください。まぁ最初ですし簡単なものがいいがですね。お水の入ったコップにしてください」
「えっと。水の入ったコップ」
するとほどなく水の入ったコップが銀の魔槍の手の中に出現した。
「わぁ!本当に出ましたわ!!!」
「それは神の証です。背負ってると大概の事はできるようになりますので。じゃあ暫く神様やってください」
最も低き場所から皆を見守る者は神様権を銀の魔槍に押し付けるとテケテケと階段を降りてアイザワ達の前まで来た。
「お前。昨日の神の子だな」
「はい。そのとおりです」
「まさか神様そのものが人間のふりをして直接会いに来るとはな」
「あーそれちょっと違いますかね。後ろの壁の絵を見てください」
屋外裁判所。という表現でいいのだろうか。その壁には壁画が描かれている。どうやらある種の物語のようだ。もちろん古代エジプト風の平坦な絵柄で描かれている。
最初に船に乗って移動する髪の長い女性達。次の場面は船が壊れ、そこから出てくる女性達と、彼女達に近づく杖を持った恐らくは男性。その次はその人物の後に続き、丸い巨大な玉を抱え、歩いていく女性達。さらに玉を台にのせ、祈る女性達の場面へと続く。
「なんすかね。これ?」
「まぁナラーリクの宇宙船が墜落してこのシャルティエとかいう街ができるまでの壁画だろうな」
「丸い玉は何だと思う?」
「あれは神殿の地下に安置されている万能の宝玉です。それは神の輪を背負った神の血を引く娘に神の力を与えるものなのです」
最も低き場所から皆を見守る者。もとい神の子さんの説明でピンときた。
「おい。アスクレビオス。その宝玉ってまさか」
「宇宙船の動力炉なんだろうな。間違いなく」
「え?でも宇宙船は壊れちゃったんじゃないすか?」
「壊れたのは食料生産システムと船の航行システムで動力炉自体は無事だったんだよ。で、それをぶっこ抜いて街を造ってこの神殿の地下に置いたんだ」
「神の証の輪。というのは宇宙船の動力炉から遠隔でエネルギーを受け止めるためのアンテナか。実質無尽蔵でエネルギーを供給されることができるわけか。最も低き場所から皆を見守る者」
「輪っかのない時は神の子でいいですよ」
「では失礼神の子。あれはどれくらいの事ができる?」
「神殿の食糧庫に食べ物がある限りいくらでも好きな飲み物食べ物が造れます。包丁や農具などの金物も倉庫にインゴットで納めてもらってあるんでいくらでも。あとさっきやってみせたように空も飛べます。それから以前鉄の悪魔の魔城より大きな雷が飛んできましたがそれも防げます。逆に撃ち返して城の壁に穴を空けてやりましたよ」
「鉄の悪魔の魔城?」
「もしもし。そこの光る輪っかを背負って喜んでいるお姉さん」
「なにかしら?この宇宙で最も美しく。そして偉大なわたくしに何か御用?」
「銀の魔槍さん。ちょっと私達を連れて空を高く飛んでもらえます?」
「この宇宙で最も麗しく。そして利発なわたくしに不可能はなくてよ」
神の輪を背負った銀の魔槍はアイザワ達を連れて空高く舞い上がる。
「街の東の方を見てください」
「なんとなく兵士が多いように見えるな」
「もう少し東ですね。砂の向こうです」
そこにはナラーリクの墜落船に似た物体があった。ただ、ナラーリクの墜落戦が船全体が赤茶けて錆びつき、天然の岩の様であったのに対し、街の東にあるのは灰色で比較的新しい。時折陽光を反射し銀色に光っているようにも見える。
「あれが鉄の悪魔の城です。ある日突然姿を現しました。中には全身が鉄でできた怪物が住んでいます」
「なぁあれって」
「あれも墜落宇宙船なんだろうな」
「街の人たちに被害は出てるんすっか?」
「街自体に目立った被害はありませんね。ただ、釣りをしている貴族が首を切られたり全身をバラバラにされて殺されたり、農作業中の農夫が襲われたりと実害は結構報告されてます。その影響もあって皆さんの逮捕になっちゃったんですけど」
「なるほど。だが言っとくが俺たちは昨日初めてこの惑星に来たんだ。あんな連中とは関係ないからな」
「畑や貴族を襲う目的はなんなんすかねぇ?」
「食料生産を妨害したり、政治中枢を攻撃して指揮系統の分断を狙っているのか?それなら戦力消費の割りに大きな戦果が見込める。つまり鉄の悪魔って言うのは物凄く頭のいい連中の可能性が出てくるけど」
「カーマイン。鉄の悪魔の魔城とやらの様子はわかるか?」
「あー無理っすね。これ戦闘用の重量級装甲服なんで。センサー系はそんなに立派なものは積んでないんですよ。レーダーも短距離用ですから。索敵専用タイプだとコンクリート壁越しに金属反応探知したりとか感知距離二万四千のパッシブセンサ内臓してたりするんですが。これは標準的な中近距離戦闘タイプなんでここまで距離が遠いとちょっとってなります」
そうやって東の方を眺めていた時だった。
「なあ。なんかその魔城とやらからなんか大群がこっちに押し寄せて来ないか?」
「あ。本当っすね。まるでこっちに攻め込んで来るみたいな感じっすね」
「感じじゃない!攻め込んできてるんだ!!」
「じゃあ私東壁の防衛してる猫戦士の皆さんに知らせに行くんで。牢屋前においた武器取って来てください」
神の子は言った。
「なんで?」
「街を護るの手伝ってくれるんでしょう?」
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