第16話 カネダショウネン ハ タイホサレテシマイマシタ
八百年前の宇宙船だけあって船内は至る所損傷しており、まったく機能していなかった。事前に老婆から聞いていた通り宇宙船の動力は完全に切れている様で、内部に照明の類はまたっくない。
「こ、これではまったく何も見えないわっ!!」
「ほい銀の魔槍。これ持って」
アイザワは懐中電灯を渡した。
「な、この光の柱は?!!」
「あの女の子達懐中電灯知らないんすかねぇ?」
「食べ物を出せる魔法のカーペットがあって懐中電灯がないなんてそれはないだろう」
奥に進んでいくと床に死体が転がっていた。
「この船に乗っていた彼女達の仲間のものか?」
「どうやらそうらしい。完全に干からびてミイラ化しているな」
「死因はなんなんすか?やっぱ寄生生物すっか?」
「外傷の類は一切なし。戦闘、不時着時の負傷でもない。詳しくは検死解剖でもしないとわからないな」
アスクレビオスはそう言った。
「やはり八百年前の遺体は難しいか?」
「直腸温度を測ってみても、筋肉の硬直具合を調べてみても、『大昔に亡くなりました』ぐらいの事しかわからないさ」
厳密にはレントゲンなどで骨折の有無を調べたりエコーで内臓の損傷を把握して死因を特定する事も可能ではないのだが残念ながらアスクレビオスはそのような装備は持ち合わせていない。だが、外傷はなさそうである。
さらに奥に進むとやはり同じように床に倒れているもの。あるいは椅子に座った状態で。またはベッドに横たわったまま死んでいるナラーリクの女性のミイラ化した遺体があった。
「どれもこれも似たような感じの遺体だな。外傷はない」
「じゃあ。やっぱ寄生生物?」
「ならそいつと戦った銃撃戦の後とかがあるはずだし、この宇宙船内に寄生生物の卵がなければおかしい」
「じゃあなんで死んでるんだ?」
「さあな」
「あのう。ここには死体しかないのでしたら今度は生存信号の方を探すべきでは?」
「そうだな。アスクレビオス。生存信号はこの船の中か?」
「いや。東に大きな川があって、その近くに反応がある」
「水があるなら生きてても不思議じゃねぇすね」
「・・・おい。これなんだ?川の周囲に大規模な都市があるぞ?それに見てみろ」
アスクレビオスは地図をアイザワ達に見せた。
「ピラミッドに見えるな」
「ピラミッドすねぇ・・・」
かなり発達した文明が存在するように見える。いったいどうなっているのか。疑問を抱きつつ墜落船から出ると。
「そこまでだ。聖地を荒らすものよ!!」
アイザワ達は猫のお面をした、槍と盾を持った兵士の集団に囲まれた。
「えっ?なにこいつら??!」
「ど、どっから湧いて来たんすか??!」
猫の仮面をした兵士達はそれには答えない。代わりに一方的に命令するだけである。
「大人しく我が神の裁きを受けよ。さもなくば我ら神の代理人がこの場において汝らに死を以て制裁を与えん!!!」
「ちょっと!!貴方達!!ちゃんとあたくし達にわかる言葉で話しなさい!!」
「銀の魔槍さん。この人達ちゃんと僕たちにわかる言葉で喋ってるっすよ・・・」
「あのう。アイザワさん。この方々はたぶん貴方達地球人に近い種族ではないかと思われるのですか?」
青の癒し手はまぁ比較的に冷静に判断をする。
「まぁそうだろうな」
「アイザワ。何か情報が聞けるかもしれん。殺さないように無力化できるか?」
「もちろんだ!この猫仮面共の槍は鉄製だからな!!マグネシスを使って・・・」
アイザワはマグネシスを起動させた。すると。
「うぎゃあああああ!!!お、俺のうでがあああああああ!!!!」
普段銀の魔槍があげるような悲鳴をあげるアイザワ。なんとアイザワの腕に周囲の砂がからみついていく!!!
「な、これはいったい??!!!」
「みよ!!これこそ聖地に宿る神々の力!!!」
「その通りだ!!聖地には邪悪なる鉄の悪魔も寄り付かない!!この聖なる力によって!!!」
「そうか!砂鉄か!!あるいはこの周辺の砂漠のみ強い磁性があるのか?そのせいでマグネシスを使用すると腕に鉄を含んだ砂が絡みついてしまうんだっ!!!」
「くっ!!助けてくれ!!アスクレビオス!!!」
人型の鉄砂人形になりながらアイザワはうめく。
「今すぐにマグネシスを解除するんだ!!本当に鉄の塊になり、何物も受けつけなくなるぞっ!!!」
アイザワがマグネシスを解除すると、まとわりついていた砂はすべて砂漠に戻っていく。
「く、マグネシスが使えないとなると工具で応戦するしか・・・」
「ぶへぇ・・・」
直前までアイザワにまとわりついていた砂は砂漠に戻ったのだが、逆流する砂の津波に銀の魔槍は埋もれていた。
「何やっているんだアンターッ!!!!!」
「不届き者を捕えろよっ!!!」
アイザワ達はろくに抵抗もできぬまま猫仮面たちに捕縛されてしまった。
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