第14話 貴様らには到底理解できるだろうな!我が真の目的を!!
「はぁ?行方不明になった宇宙船の捜索?ふざけんな!!」
アイザワは複数のイシヤマ生存者も混じえて、老婆の話を聞いた。
「そうっすよ。いきなりそっちから戦争をしかけておいて今度は命令を聞けだなんて虫がいいにもほどがあるっすよ」
カーマインの言うとおりである。
「あれは我々流のテストである。お前達を試しただけじゃ。そして合格した。だから頼もう」
「テストってな」
「そもそも儂らの真なる目的を話したところでお主らにそれが理解できるとは思えぬが。まぁよい。前金代わりに語ってやるとしよう」
杖を両手で携えて床を突き、尊大な態度で語る老婆。
「へぇ。聞こうじゃないか。何のために俺達を襲ってきたのか」
「よいか。儂らナラーリクは失われた故郷に代わり宇宙船の中に大地と同じ環境を造りその中で暮らしておる。が、可能であればすべての姉妹達たちが本物大地に根を降ろすことが暮らすことは理想なのじゃ。しかしそれには大変な困難が伴う」
「あれだろ。地球にすべての人間が住めないからコロニーの住人が怒っているてやつだろ」
「簡単な話っすね」
「亜空間航法と外惑星の発見で地球にこだわる必要はなくなったが。で?」
「う。うむ。そして生物が住むには酸素と水のある惑星で温度が高過ぎずまた低すぎない星が理想なのだ。太陽に近いと暑くて人は住めず、逆に遠いとあらゆるものは凍り付いてしまう」
「ハビタルゾーンのことだろ?」
「地球型の生命の豊富な惑星が理想だな。水分とそれを包む大気を押しとどめる為ある程度の重力が必要だ。ただあまり重力の重い惑星だと生物にとってきついかもしれない」
「大変ですアスクレビオス様!銀の魔槍様が息をしておりません!!」
「なんだと!?じゃあとりあえず医務室に連れていこう。青の癒し手。脚の方を持ってくれ」
老婆は医務室に向かう医師に抱えられる銀の魔槍を見送った。
「と、ともかく報酬は払おう。奴隷千人。いや一万人。それに人間が住める惑星一つ。これでは不服かな?」
「奴隷はもういい」
アイザワはその点はしっかりと首を振った。
「で、何をさせたいだよ婆さん」
「『見えざる弓を放つ者』。お主らに行ってもらえたいのはここじゃ」
老婆が手鏡のようなものを取り出す。小さなプラネタリウムのようなものが表示され、そこにある星の一つを老婆が触った。
「SDA4169A星系」
老婆が触ると、星が拡大し、太陽を中心とした八個の惑星が周回する画像が映った。
「この第四惑星じゃな」
さらに四番目の惑星を触ると、中央部が赤く、南北に行くと緑色。そして極点には白いものがある惑星が映った。赤道付近は砂漠化しているがそれ以外の部分は比較的降雨量があって南極及び北極には氷もある、いわゆる地球型惑星らしい。
「今から八百年くらい前かのう。その頃儂らの種族はおぬしらとはまったく違う連中と戦争をしておったのじゃが。もちろん勝利したぞ。で、資源惑星あるいは居住可能惑星を探索している際にその当時の宇宙船が墜落しているのを発見していたのじゃ」
「じゃあ助けに行けばいいっすか」
「何言ってるんだカーマイン。いくらこの婆さん達が地球人より長生きだと言っても流石にもう死んでるぞ」
「左様。船体にエネルギー反応もなく生命反応もなさそうであった。のじゃが。が。複数のナラーリク乗員の生体信号を確認した」
「なら。やっぱ生存者はいるんじゃないのか?」
「そう思って捜索隊は通信を送ってみた。が、反応はない。そこでお主らに頼みがある。実際にこのSDA4169A星系第四惑星におき、生存者を捜索してもらいたい。見事使命を果たした暁にはこの星系を丸ごと貴様らにくれてやってもよい」
「いや。行方不明の仲間がいるかもしれないから探したい。って考えるのは当然かもしれないがそれはアンタ達の仲間なんだろう。ならアンタ達で探しに行けばいいじゃないか」
アイザワが至極もっともな事を言うと。
「そうかそうか。断ると言うのか。では仕方ないのう」
老婆は映像を見せた。例の動画編集中の奴。炎のゾンビが台所で抱き着き、ナラーリクの女性兵士を焼き殺す場面である。
「こいつを儂らの仲間の船に送るとしよう。お主ら地球人をどう思うか。この老いぼれには皆目見当もつかんのう」
「げ、このババア・・・」
「一つ聞いいすか?」
カーマインが尋ねる。
「このUSMイシヤマは修理中すよ?そのSDA4169Aまでどうやって行くんですか?」
「なに。心配はいらん。そこまでは儂らの船で送っていくからな。降下艇は小さなのがあるからそいつを使え。二、三人と銀の魔槍。青の癒し手で第四惑星に降りればええじゃろう」
断ったら即座に撃沈。いや。地球に老婆たちの軍が攻め込むと脅されている状況である。素直に頷くしかなかった。
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