第13話 現実だと死体は死んでも消えたりコインになりません

「お前達。なにやっておるんじゃ?」


 部下を伴わず、杖だけ持ってUSMイシヤマを訪れた老婆は。

 盛大に床にゲロを吐いている銀の魔槍を見てそう言うしかなかった。


「別にたいしたことじゃない。あんたたちのせいで仲間が大勢死んだんでね。彼らの死体を真空乾燥処理して遺灰をプラスチックの袋に詰めていたところなんだが」


 その手の作業を任されていたアスクレビオスが説明する。


「それで。せっかくなので彼女達に罰を与えるべきだ。でも処刑は不味いだろう。ならそれ以外ということで遺体の処理という形になったんだが」


「まぁ妥当なところじゃろうな」


 アスクレビオスの言う彼女達。とは、もちろんUSMイシヤマに対し損害賠償として引き渡された奴隷。即ち青の癒し手と銀の魔槍の事である。もちろんイシヤマは民間の資源調査船ではあるが当然星間条約を護る義務がある。当然奴隷など禁止だ。幾つかの惑星でそのようなものが扱われているとの噂もあるがそれらは公然の秘密とされている。USMイシヤマには生存者には女性がいる。というかそちらの方がむしろ多い。処刑、拷問ではなく賦役という結論になるのは当然の至りである。


「そちらの青の癒し手さんは手慣れたものだな。が、こっちの銀色の方は使い物にならん」


「しゅ、しゅみれーたーだと切ったらすぐに死体は消え、ぼえええええ」


「すまんのう。ところでお仲間の残虐無比な戦士を呼んでくれんか。話がある」


 アスクレビオスは老婆の言う残虐無比な戦士。というのは皮肉の意味でアイザワの事を刺すのであるのがすぐに見当がついた。実際、USMイシヤマの乗組員でナラーリクの女性達を最も殺傷しているのは修理工のアイザワであり、次点が医師であるアスクレビオスというとんでもない結果になってしまっているからだ。


「アイザワか?わかった」


 アスクレビオスは遺体の乾燥詰め作業を中断すると老婆を連れてブリッジに向かう事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る