第11話 老婆の思惑と生き残りの者達
「儂らの攻撃で其方らの船は大きく破壊された。これでは通常航海もままならぬ。修繕をさせてくれ」
老婆はそのように丁寧な口調で申し出る。
「まともなドッグじゃないとできないと思うが」
と、修理工であるアイザワは意見したが。
「そのようなものなくとも儂らナラーリクの技術をもってすれば真空の宇宙においても船の修繕など容易いもの。ただ、ちと大きな傷故。少々時間がかかるが宜しいか?」
「まぁそれで地球まで安全に帰れるなら」
「ではその間自分達の船に戻り、休息を取るがよい。同胞を弔うのも良いし、お前達に暮れた奴隷を好きに扱うも良いであろう」
「まぁ。こっちで寝るよりかはイシヤマのベッドの方がいいか」
「そっか。仲間の死体を片づけないといけないんですねぇ」
一人。また一人と思い足取りで二十五人の生存者たちがUSMイシヤマに戻っていく中、『青の癒し手』は老婆に語り掛けた。
「あのう。私は武具の整備は専門外なのですか彼らの船の修繕にそんな時間がかかるものですか?」
「たわけ。あんなぼろ船一時間もかからんわ。純粋に儂が時間が欲しいのでな」
「はい?」
「青の癒し手。銀の魔槍。お主ら儂らと奴らどちらの科学技術が上だと思う?」
「もちろんわたくしたちです!!」
「ならば儂らの技術を黙ってくれてやるわけにはいかん。武具は勿論肌着の一枚に至るまでな。連中から宇宙服と衣類を手に入れてそのレベルに合わせた物を造り、お前達に着せる。手に入れてくるのじゃ」
「承知いたしました」
青の癒し手はできるだけ静かに。地球人達に聞こえないように頷き。
「貴方達。宇宙服と下着を寄越しなさい!!」
銀の魔槍はそれはもうデカい声で盛大に言いましたとさ。
そして老婆は闘技場の砂地に顔を突っ込んだ。それはもう派手に。原因は不明。
「なんだこの女?」
「別にいいっすよ。人員が減ってかなり物資が余っちゃってるだろうし」
老婆は何か指示を出す際は銀の魔槍には聞かせず青の癒し手のみに命令を出すことに固く誓った。
USM イシヤマに戻ったアイザワ達は仲間を殺された事に悲しんでる暇も怒っている暇もなかった。損傷したイシヤマの船体を可能な限り正常な状態に近づける必要があり、その為の仕事に全員が謀殺されていたからである。
「ハンガーデッキに空いた大穴はどうします?」
「それはどうにもならん。女ばっかの宇宙人が直してくれるそうだからそれに期待するしかない」
「本当に直してくれるんですかねぇ・・・」
「気が変わっちゃうかもしれないから一応全員武器配布してくれ」
「了解したっす」
カーマインは戦えそうな船員を何人か連れて弾薬庫に向かうことにした。
「メディカルルームの医療機器はすべて無事だ。ただクローン再生用のデータがごっそりぶっ壊れている。EMPパルスが絶縁体の隙間を縫ってデータ保管庫に流れたんだろう」
「バックアップは?」
「『本物』がバックアップだけど死んだら取れないからなぁ。クローン再生システム自体は無事なんで手の空いた奴から順番にデータの取り直しに来てくれ」
アスクレビオスは当然医務室である。
「それじゃあ一度メインエンジン切って船内の電源落として修理するか」
「電源を落とす?なんで」
「ラウンジの重力場発生装置とシャッターの一部が故障しているんだ。かなり危険だけど配線を繋ぎ変えれば応急措置はできるからな。それに船体がこの状況じゃジャンプで逃げる事も無理そうだし」
「ハンガーデッキの外壁が損傷し過ぎてるからな。今空間跳躍なんぞしたら衝撃で船体が分解するわけか。どのみちナラーリクの連中に直してもらわないと地球に帰るのは不可能なのか」
「そういう事だな」
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