第二話 人類を滅亡させるウィルスなんてSFの中だけの話だと思ってた

 老婆が修理をしろと言われた船舶の中にはブービートラップどころかスクラップにもならないような大破艦が混じってた。軌道上で待機していた旗艦のブリッジで超高速通信で抗議する。相手はナラーリク評議会のとても偉い皆さんだ。なおその平均年齢は老婆の半分以下のまぁ若い連中で占められている。若者が活躍する事は良いことだと思う。

 立体映像で宇宙のリモートワークが開始される。数百光年と離れた場所にある評議会の面々と車座になって楽しい楽しいお喋りの始まりである。老婆の抗議に対して一同は揃いも揃って何をいっているのだ我がナラーリクの造船技術者は優秀なのだ宇宙一なのだというありがたいお返事。お前ら破損した船の修理にはそれの修理状況に応じた資材とコストと時間がいるんだよしらねぇーのかよ。


「無論知っている。資源ならば小惑星を採掘するなりなんなりして調達すればいくらでも手に入るだろう。何も問題はない」


 いや作業用ロボット動かすのにエネルギーいるの知らないのお前?


「無論知っている。エネルギーならばガス惑星(地球人が木星と呼んでいるタイプの惑星)から水素とヘリウムを調達すればいいだろう。核融合でいくらでも調達できるだろう。何も問題はない」


 老婆はガス惑星には常に艦砲ビーム並みの雷が渦巻いてるだとか百Gの引力で引っ張れて落ちたら最後戻ってこれないとかそもそも途中で圧力で潰されるとかそのような木製型ガス惑星特有の事情を考慮しない連中に説明する事を放棄し、事態の解決に当たる事にした。



「そう言えばアスクレビオス。このイシヤマの動力炉って」


「普通に水素とヘリウムの核融合発電だ。木星資源採取船から送られてくる」


「給料いいらしいな」


「転職するか?」


「まさか。毎年二桁死んでるよ。死体は絶対回収不可能だしな」


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