第17話 ただそれが在るべき所
「チェックです。楠木英治」
若い少年の声がした。僕達の正面、突き当たりの曲がり角から人影が覗く。声の主は何気ないように姿を見せた。
「久しぶりですね。もう7年近く経つなんて、時の流れは速いものです」
現れた少年には見覚えがあった。いや、面影を覚えているに過ぎないが。
端正な顔立ちに真っすぐな瞳。黒縁のメガネを掛けた好青年がそこにいた。身長は僕とほぼ変わらず、僕より⒉5倍くらい活動的なオーラを放っている。黒髪は綺麗に切り揃えられており、清潔感のある風貌だ。誰からも好まれそうな雰囲気を身に纏うこの少年の名は……
「…………三善光輝」
僕の声はとても小さかったが、静まり返った通路ではよく響く。彼の名前に思い当たる節でもあったのか浩介と美優は驚いていた。
「嘘だろ……何処かで見た顔だと思ったらあの三善かよ」
「確か一時期ニュースになった人よね。最年少で私立探偵社を設立したとかって……でも久しぶりってどういうこと?」
そう、目の前にいる三善光輝はその実力から10歳で探偵社を設立することを特例として認められた稀代の天才だ。数々の難事件を解決してみせ、圧倒的なカリスマ性で大衆を味方につけることで偶像と化した少年。活動拠点は東京だったはずだが、確かに2人が知っていてもおかしくない。
「そのままの意味だよ。僕は君達と出会う前、有名になる前の三善光輝を知っているんだ」
「ってことは彼は味方なの?」
「そういう風には全く見えないけどな!」
美優は三善を肯定的に、浩介は否定的に見ているらしい。というかこの状況で三善が味方に見えるなんてポジティブ過ぎないかな?
「ああ、そうだね。見た通り三善が僕の味方になる筈はないよ。彼はいつだって“正義の味方”なんだから」
苦々しげに僕は呟く。その様子に美優も浩介も驚いていた。ユキさんは何処か心ここにあらずといった様子で、特に反応を示さない。
ああ、何でこんな男を正義の味方などと呼ばなければならないのだろうか。
僕は自分で自分の言葉に嫌気がさしていた。しかし、彼を指すのに適切な言葉はそれしか無かった。例えそれが矛盾を多く孕んだ理想上の産物でも、彼はそう呼ばれるべき人間である。だからといって、字面から感じるような正しさなんて小指の爪ほどにも感じないが。
「嬉しいですね。僕のことをちゃんと覚えていてくれたなんて。けれど、面と向かって“正義の味方”と呼称されるのは些か恥ずかしいものです」
三善は言葉通り恥ずかしげに頬をかく。その仕草一つ一つも様になっていて、僕は酷く醜悪なものを見た気分になった。
「な……何だあの完璧な外面は。まるで自分の体の動きやそれが与える印象を全て計算し尽くしてあるかのような」
「まさしくその通りだよ。彼は自分の価値と動かし方を良く知っている。その上で最も効果的な行動を取るんだ」
浩介の感嘆に似た声に、僕は食い気味な肯定を返す。しかし、三善が作り上げられた笑みを崩す様子はない。むしろ、ますます楽しげに笑うばかりだ。
「酷いですね。それじゃあ僕が全てを把握した上で打算的に行動しているみたいじゃないですか。それは英治君、君の得意分野の筈ですよ。かつて“悪魔”と呼ばれた君のね」
「うっ……」
これには僕も心から苦い顔をするしかなかった。昔の、それも黒歴史に近い呼び名を蒸し返されては僕だってたじろぐ。
「何だよ、悪魔って」
浩介が期待と興味をふんだんに孕んだ声で三善に問う。これ絶対興味本位だよ。
「ラプラスという天文学者を知っていますか? 彼はこの世界のある時点において作用する全ての力学的・物理的状態を完全に把握・解析する能力があれば宇宙の全運動を確定的に知り得る、と提唱したんですよ。そして、明らかに人の手に余るそれを為すことができる超越的存在として、1匹の悪魔を考えたのです」
三善はここまで話してようやく聞き手の様子を窺ったらしい。ユキさんは相変わらず俯いたままだし、美優は既に集中力が切れている。まともに話を聞いているのは浩介くらいだった。僕は勿論聞き流している。
「ええと、つまりは世界を数式で捉えているんですよ。それ故にまるで過去を振り返るように未来を完全に予知できるということです」
「それがラプラスの悪魔だと」
「はい。そして、限定的ながらも未来視に近い予測ができる英治君を、一部の人間がこう呼んだのです。“悪魔”と」
三善は懐かしそうにそう言った。その様子は捉え方によれば楽しそうにも見える。
甚だ不本意だが、この話を過ぎ去った事として一笑に付すという訳にもいかない。平和に暮らしている間はともかくとしても、今はもう平和と程遠いのだから。
「俺はラプラスって呼ぶ方がカッコいいと思うけどなぁ」
「それじゃあただの天文学者だよ」
浩介の物言いに僕はげんなりしつつも返答する。美優は後ろで先程買ったパンを食べていた。
この2人は現状の危うさをちゃんと分かっているんだろうか。
「で? そんな事を話に来たわけじゃないだろう。君の背後に隠れている団体客に自己紹介でもさせて帰ってくれないかな。僕達にはまだすることがあるんだ」
「———ッ! そういうわけにもいかないですよ、英治君。君達はここで何をしていたのですか? シェルターへの避難指示を無視し、商業施設の施錠を無許可で解き、不法侵入したわけですが」
「ただのショッピングだよ。日用品諸々のな。丁度醤油を切らしちまったんだ」
僕と三善の問答に浩介が参戦する。相手を揶揄うようなジョークに美優は吹き出していた。
が、突如として三善の纏う気配が変わる。元々取ってつけたような笑みが、今完全に消えた。
結構、プライド高いんだよね。三善って。
「……そうですね。かつて哲学者ウィトゲンシュタインも言っていました。語り合えぬものについては沈黙せねばならない、と」
正しくは語り得ぬ、なのだが、三善がそれを気にする様子はない。わざとなんだろうね。それにしたって、冗談の対価が鉄拳制裁とはまた物騒な。
彼が指を鳴らすと、後ろから完全武装した集団が続々と姿を見せた。人数は8名。三善の側まで来ると、出し抜けに装備した銃を撃ち始める。それも恐らく89式5.56mm小銃。迷彩柄の服装からして自衛隊員なのだろう。
「積荷の陰に隠れるんだ!」
僕はそう叫びながらユキさんを抱えて死角に飛び込む。先手を打って物陰に跳んだが、すぐ後には激しい銃撃音が響く。銃弾は非殺傷用にしてあるのかもしれないが、それでも命中すればただでは済まなさそうだ。学生相手に実戦装備とは恐れ入る。
「絶対にウィトゲンシュタインはそんなこと言ってねえよ! 」
ユキさんに大丈夫かと声を掛けてからもう2人に目をやると、2人は危なげなく荷物の陰に移動していた。美優と浩介も上手く隠れられたようだ。焦ったように浩介が叫ぶが、まだまだ余裕がありそうだ。弾幕のように撃ち出された銃撃の音が止むと、三善は嬉しそうに叫ぶ。
「流石ですね! いち早く状況の変化に気づいて回避行動を取るなんて! 何かがいることまでは気づいていたようですが、相手が銃を撃ったのは完全に不意を突いたと思っていましたよ」
それにしても、と三善は声の雰囲気を変えて言葉を続ける。
「その白髪の少女も君の駒だったんですか? 目立ちますし、鈍そうなのでてっきり囮役だと思っていたのですが。いえ、むしろ駒ですらないと思っていました」
三善の厳しい言葉にユキさんが震える。部外者だった彼女を僕達が受け入れたことに彼女自身も疑問を持っていたのだろう。確かに現状で彼女は、戦力にならないというよりむしろ足手まといだ。三善からすれば弱点を増やしただけに見えるのだろう。
顔を伏せ、長い髪で表情を窺わせない彼女を見てその原因たる三善に僕は言い知れぬ怒りを覚えた。
別段、彼女に同情したわけじゃない。三善が言ったことは一部を除いて正しく、彼女の弱さは事実だ。状況に流されるタイプであるのに状況を飲み込むのが遅いし、適応する努力はあるものの何処か諦観を持っている。生きようとする意思もあるのだろうが貧弱だ。
けれど、彼女は駒などと言われるべき存在じゃない。僕は一般大衆を駒として扱うような打算的な人間だが、彼女をその他大勢と同様に考える気は無い。
だから、三善の言い方には少し腹が立つ。
「三善光輝。君には理解できないだろうけど、僕は彼女を駒だなんて一度も思ったことは無いよ。だから命を懸けて守ったし、これからも守る。何て言えば良いのかな。心から惹かれたんだ。多分それが彼女に仲間になって欲しいと思った理由だよ」
三善に言うように装ったユキさんに向けた言葉。それはどうやら正しく届いたらしく、彼女の震えが治まった。僕は2度彼女の頭を撫でて、抱えていた腕を解く。
そして首から下げたペンダントを握ると、僕は三善の前に出る。銃を構えた男達の表情には驚愕の色が浮かび、僕の方に銃口を向けた。
まあ、常識的に考えて8挺の銃が構えられる場所に躊躇いなく立てる少年なんていない。
警戒されていることを承知の僕は心から小馬鹿にしたように、用意していたセリフを語る。
「ああ、そういえばこの建物には猛獣が捕らえられているんだ。知っているかい? 誰かに雇われた笛吹きの人攫いらしい。今は檻の中にいるようなんだけど、10分後には解き放たれてしまうらしいんだよね。武装もしていることだし、一般人なら簡単に殺されてしまうだろう。殺気立っていたことだし、すぐにシェルター内で被害が出るんじゃないかな。もし君が捕まえに行けば話は別だけど」
今度は三善が渋い顔をする番だ。権藤達、『笛吹き男』は長らく警察や探偵である三善を苦しめていた。何せ依頼主が大物政治家等の有力者なのだ。大抵のことは揉み消されてしまう。そんな厄介な相手を捕らえられる絶好の機会、逃したくはないだろう。正義の味方としても凶悪犯罪者をみすみす取り逃すことは許されない。個人的には僕を追いたいのかもしれないが、残念ながら彼には立場というものがある。
それに、様子からして『笛吹き男』が仕事の依頼を受けていたのも知っていそうだ。僕を知る三善なら、彼らが既に撃退されている事も想像がつく。このままいけば素直に引いてくれる事だろう。
だが、それだけだと物足りない。僕は若干不機嫌なのだ。
「三善光輝、悪いけど僕は正義なんてものに興味は無い。僕の行動理念はただ一つだ。僕の仲間の全てを守る。それを邪魔するのなら、敵対する全てを壊す。その為なら何度でも悪になるさ。君が言った通り、僕は“悪魔”なのだから」
表情を消して僕は言った。口調も揶揄うようなものではない。声は低く、適度な硬さを持つ。僕の口から発せられたのは大きな声を出した訳ではなく、むしろ小さな声だった。しかし、凪の水面のように静かなこの場に置いては十分な声量だ。
僕の醸し出す異様な気配に当てられて、三善と自衛隊員が一歩後ずさる。
本来、高校生になったばかりの少年がいくら凄んだところで、戦闘訓練を積んだ兵士にとってはお遊びに等しい。憤り、反発を見せたとしても所詮それは若者の抱く悪感情に過ぎないのだ。そんな物は殺意にも至らない。
引き金一つで命の灯火を吹き飛ばす武器を知り、それを扱う訓練を経験した自衛隊員にカッターナイフ程度の敵意が通用する訳もないのだ。万が一にも起こるかどうかという確率の不幸など、精神に然程影響を与えないだろう。銃弾の飛び交う中で使用することを想定した戦闘服を身に纏っているのも関係があるかもしれない。
が、それは相手がただの高校生の場合だ。もしもその相手が命のやり取りに十分に慣れていたら、それでいて他者の命を奪うことに何の躊躇いもないとしたら、話は別となる。その手の人間の持つ殺意には命の重みが宿るのだ。
そういう意味で、僕をただの高校生に分類するのは難しい。今、僕が眼前の彼らに向けた物は正しく殺意である。死を知らない者が放つ紛い物ではないのだ。命を奪う恐ろしさを知って尚、目的の為なら幾らでもそれを行使出来る精神が僕にはある。
僕は自分の持つ狂気の一部を遠慮無く彼らに向けた。1人、また1人と銃を携えた隊員が倒れる。彼らは小隊の中でも比較的若い方だった。
僕は今更誰かを殺すのに殺意なんて抱かない。しかし、それは殺気を出せないという事ではなく、むしろ特定の誰かに向けた時の密度の濃さは死を錯覚させる。数百人とこの手で殺していたら、自然とそれくらいのことは出来るようになるだろう。
訓練は受けていても人を殺した事すら無い彼らに、命を脅かされる側に立った事の無かった彼らに、これを耐えろと言うのは酷というものか。三善ならあるいはと思ったが、彼もお仲間と大差無かったらしく動きを見せない。
結局、誰も動くことは出来ないでいる。張り詰めた空気が場を支配する中で、ただ時間だけが我関せずと進み始める。
「光輝、ここは引きましょう。最低限の目的は達成出来たはずよ」
唐突に声が響く。長く続くと思われた膠着状態は新たに現れた1人の女性によって壊された。
「ここで楠木英治を保護出来ないのは痛手だけれど、今の光輝は冷静さを欠いているわ。強引に攻めるような状況でもないわよ」
その女性もまた若かった。外見からは30歳にも達しているか怪しく思われるほどだ。その女性に対して銃を構えていた隊員の1人が敬礼をする。緊迫した状況でもその無駄とも言える所作をしなければならない相手なのか。
この場にそぐわないスーツを着てハイヒールを鳴らしながら登場した女性だが、とても美人だった。理知的な顔立ちにスレンダーな体つき、どれを取ってみても魅力的な容姿だ。その上で彼女もまた自らの容姿の使い方を熟知しているのだろう。長く綺麗な黒髪を耳にかける仕草はとても艶やかで、彼女の狙い通りにこの場の多くの者がそちらに注意を逸らしてしまった。
彼女の計算外だったのは、僕が微塵も興味を示さなかったことだ。浩介や美優の張っていた緊張は緩んだが、僕だけは変わりなく冷ややかな目で全てを俯瞰していた。あの女性を見るのも、実は初めてでも無いのだ。
「櫻井さん……そうですね撤退しましょう。英治君、次はきっと君を捕まえてみせます」
三善はそれだけ言って後ろに下がった。その間、櫻井と呼ばれた女性が僕から目を逸らす事はなかった。
「あぐっ」
最後に櫻井の姿が見えなくなり、浩介は呻き声を上げながら膝をついた。美優も同様に座り込んでいる。余程緊張したのだろう。ユキさんは変わらず蹲っている。
僕はまず最初に彼女のもとに歩み寄った。しかし、彼女は僕を拒絶する様に見上げて叫んだ。
「近寄らないでください!」
ウッ、流石に今のは傷ついた。今日出会ったばかりの相手とはいえ割と好意的に考えていた相手にこうも明らかな拒否を見せられると心にくるものがある。とはいえ、僕がそんな風に傷つくのも筋が違う気がした。
彼女は泣きそうな表情でこちらを見ていた。しかし、理屈でしか心情を理解することが出来ない僕にはユキさんの内心がうまく読めない。
「……何故、私を助けてくれるんですか? 何故、私を受け入れてくれるんですか?」
戸惑いと恐れ、不安や苛立ちを含んだ声だった。目を潤ませ、顔を微かに顰めたユキさんのその声で、僕はやっと彼女を理解する。
彼女はただひたすらに分からなかったのだ。
分からないから、どう接するか戸惑った。分からないから、信頼する事ができなかった。自分がどうなるのか……怖かった。
疑問は不条理へと変わり、不条理は無理解を呼び、無理解は恐怖を意味する。彼女を取り巻く理不尽に、苛立ちを覚えるのも当然の摂理というものだろう。
特に理由も無く助けられ、恩着せがましく接される事もなく、見返りを求められるわけでもないのに保護される。全くもって理解不能だ。それならば打算まみれに救われた方がまだ希望がある。
これまでユキさんが何故右往左往していたのかが、ようやく分かった。
ああ、成る程。これは僕のせいか。なら、僕は彼女の問いかけに対して正直に答える義務がある。
「ユキさん。君を助ける理由は主に4つある。まず1つ目は、色んなものと戦うのに3人じゃ心許なかったから。2つ目は、僕達と君が似ているように感じたから。3つ目は、君に行き先が無さそうだったから。最後の4つ目は、僕が君に惹かれたから、かな」
ユキさんは返答が返ってくると思わなかったのか、目を瞬かせてこちらを見る。鈍い光を放つ青い瞳を、こちらから覗き返した。すると、何やら恥ずかしくなったのかユキさんは目を伏せてしまう。
青春真っ盛りの少年少女には少しばかり恥ずかしい台詞を言っていることに、僕は気づいていなかった。
「なあ、さっきまで殺伐とした雰囲気出してたのに何で若干甘ったるい空気になってんの?」
「シーッ! ここは我慢よ。後で幾らでもイジッてやれば良いんだから」
背中越しに浩介と美優の声が聞こえる。その声はあからさまに楽しんでいた。
……晩ご飯の時のお茶を醤油かポン酢にすり替えてやろう。“悪魔”の所業を見せてやる。
「僕達は、未来からの侵略を止める。理不尽に、不条理に、僕達の日常は壊させない」
もっとも、今の状況を日常の延長と呼ぶには些か物騒かもしれないけどね。
僕はそれだけ付け足してユキさんの反応を見る。彼女は俯きながらも思考を止めていないようだ。
ユキさんは答えを得た。それが彼女の求める物だったかはともかくとして、決断をするのに必要なピースは残り1つ。それを求めて彼女は口を開いた。その質問は一般人には大層な代物で、彼女が口にするにはおかしくないものだった。
「もし私が救いようのない人間でも、私を救ってくれますか?」
たかが学生に何ができる、世間は想像しているより大きいんだぞ、現実は厳しいんだ。
そんなありきたりな答えはつまらない。
僕は自分の生きたいように生きる。誰かに利用されるのも、誰かに縛られるのも御免だ。
正義に『良心』は救えない。正義は悪を倒す事しかできないのだから。
自分の生き方を貫き通すのが悪だと言うのなら、僕は
その
彼女は既に僕にとって大切な存在だ。彼女が僕をどう思っているのか、どう認識しているのかは分からない。けれど、少なくとも嫌われている訳ではないだろう。僕にとっては珍しく、けれど確かにそう確信出来るほど、理由も無く彼女を信用していた。
それならば、僕の答えは決まっている。
「ああ。僕は、僕達は君を救う。何時でも、何処でも。何が相手でも」
浩介と美優がニヤリと口角を上げる。自信ありげに頷いてみせる。2人は僕の後ろにいて、見えてなんていないけれど、そんな気がした。きっと僕も似たような顔をしていることだろう。
「その決意は、3年前に済ませてあるからね」
最後にユキさんは不思議そうに首を傾げた。3年前のことなんて彼女は知らないから。
こうして、ユキさんと僕達は本当の意味で打ち解けることができた。
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