うちのとこでは(※読み切り)

破死竜

うちのとこでは

 「うちのバカ亭主ったら、何度注意しても、脱ぎ散らかすのが治らないのよ」

 「あら、うちは解決したわよ」

 「ええっ(いつもなら、「うちも、そうよ」って返してくれるのに)、そうなの?」

 「うちの家では、ルールを決めたの。『夫が脱いだものはもう着ないから、妻は捨てても良い』ってことにしたのよ」

 「あら、それってどういうこと?」

 「だからね、脱ぎ散らかした靴下も、洗濯機に入れないシャツも、ぜ~んぶ捨てて良いの。表裏を直さなくて良いの、洗濯ネットに入れなくて良いの、洗わなくて良いのよ」

 「えっと・・・・・・」

 「これまでは、なんで直さないの、なんで洗う手間を考えないの、なんでまだあるのに新しい服を買ってくるのって、そんな恨み言ばかりだったけれど、これからはもう、そんなこと何一つ悩む必要ないの。私は彼が脱いだ物を自由に捨てられるんだから、そのことを覚えておくだけで良いのよ」

 「すっきり・・・・・・、したのね」

 「ええ、と~っても、気持ちよかったわ」


 「ねえ、あなた」

 「ん、なんだ、また、お説教か?」

 「ううん、まさか。ただ、あの子のことはどうするの、って思って」

 「いつも、お前に任せると言っているだろう。同じことを何度も聞くのか?」

 「いいえ」

 (もう二度と聞くことは無いわ)

  だって、我が家にも、新しいルールが一つ、決められたのだから。

 『夫が任せたものはもう看ないから、妻は自由にして良い』

 そんな、ルールが。

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