◆なんのかんのと大団円……かな?◆
── あの舞踏会から一夜明けて。
お義父様とお母様は、あたしとドリゼラとシンデレラを呼んでお話をされた。
あれから、王様やお后様と改めて話し合われたこと。
あちらはあちらでチャーミング王子が内気でなかなか気持ちを話さないので心配していたらしい。
だから、今回の舞踏会開催と皆の前での意思表示(それも意中の
そして、お義父様はシンデレラに向かってこう言われた。
「これは、お前の知らないことだがね。シンデレラ。実は
「お前は決して悪い子ではないけれど、思い込みが激しく、自分の世界に入り込むと周りが見えなくなりがちだ。ワシからしてみれば、少々危なっかしく見えてな」
「今回の王子様からのお申し出は、少しでもお前の視野を広げることになるのではないかと思えた。ワシは、お前が外に目を向ける良いきっかけのように思えたのだよ」
シンデレラは目を丸くして聞いている。
「じゃあ、じゃあ、舞踏会の前や、あの時にお義姉様達が私に意地悪されていたのは……」
「そうだよ。お前は舞踏会だって乗り気ではなかっただろう?」
「義姉さん達はな、普通に誘っても興味を示さないお前の為に自分達が悪者になって……」
「お義父さま!」
あたしは慌てて口を挟んだ。
感謝して貰えるのは嬉しいけど、あの魔法使いの事やガラスの靴、馬車のこととかは言わないで、シンデレラの夢を壊さないで欲しい。
お義父さまも察してくれたようで、そこは誤魔化してくれた。
「お義姉様達、ごめんなさい……」
シンデレラが、あたしとドリゼラに走り寄って抱きついてきた。
大きな瞳は涙で潤んでいる。
ああ、こういうところが可愛いのよね。
思い込みが激しいってことは感受性が強いってことでもある。感情をそのまま表せるのは悪いことばかりじゃないと思う。
シンデレラの場合はスレてない分、素直だから尚更。
ドリゼラも目を潤ませてるし、お母様もハンカチで目を押さえている。
あたしはシンデレラとドリゼラを抱きしめながら、三姉妹というのもなかなか楽しそうね!と思っていた。
§
そういえば、あのシンデレラが履いていたガラスの靴。
間違って片方脱いで王子様に渡したら、王子様が高く掲げちゃったアレね。
婚約の儀式として流行っちゃったみたいで。
婚約式では、みんながガラスの靴を履くようになった。
だから、あのガラスの靴を手がけた
ドリゼラは今では、ガラス工房の方に行ってる方が多いくらいになっちゃってる。
工房専任デザイナーとして、新しいデザインのものも売りだすらしく張り切っている。
ふふふ、意外にしっかり者の
シンデレラと王子様は、あれから何度かデートを重ねて、相変わらず『夢見るお伽噺集』で盛り上がってるみたい。
お忍びの王子様を連れて
あたし?あたしはあれから無事に魔法使いの本試験に合格したユーリイさんに弟子入りさせて貰えるように頼んでるところ。
ユーリイさんが、自分はまだまだ弟子をとれるには実力不足だっていうから、まだ正式にじゃないけど、いつか弟子入りを果たして、魔法を学んでみたい。
今回のことで、魔法に興味を持ったのもあるし、魔法の可能性をもっと探してみたくなった。
後継者不足で途絶えてしまうなんて、勿体なさすぎる。
イベントなどと合わせて、もっと魔法に興味を持つ人が増えてくれたら嬉しいし。
だから(それだけじゃないけど)あたしはユーリイさんにくっついて勉強中なの。
§
運命って不思議ね。
お母様の再婚が決まった時は戸惑ったし、シンデレラに初めて会った時は、ビックリした。
あたしも、その方面は嫌いじゃなかったけど(寧ろ、コレクションもあるし、オタク魂なら負けてないしね(笑))
なんていうか極端過ぎて、ねぇ。
でも、ひとつ屋根の下で暮らしていくうちに、あたしもドリゼラも、シンデレラの愛すべき
情が湧いてくるというかね(笑)
だから、王子様との話を聞いて、お義父様やお母様から協力して欲しいって頼まれた時に何とかしてあげたい、って思ったの。
そうして……色々なアクシデントはあったけど、あたし達はそれぞれ思いがけずに、素敵な出逢いのきっかけを得ることが出来た。
何かを始めてみること。
一歩踏み出してみること。
そういえば──
昔の何処かの名もない魔法使いの言葉で
『0と1は違うんだよ。いい顔して笑って、一歩踏み出してごらん。きっと世界は変わるから』
っていうのがあるって、ユーリイさんが教えてくれた。
ユーリイさんの好きな言葉なんだって。
あたしもこの言葉、好きだなって思う。
§
さてさて、お話はもう少しだけ続きます。
次回
◆そして、みんな幸せに???◆
お楽しみに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます