◆お義姉様たち意外な成り行きに驚く◆
あたし達は、舞踏会会場にいた。
控えめに、ゆっくりとした音楽が流れている。
まだ、ダンスは始まって無くて、王子様待ちみたい。
みんなは時間が押してきているからザワザワしだしている。
(あの二人、かなり気が合ってた様子だったし、まだ話し込んじゃってるのかなぁ)
向こうでは
(あらあら、ドリゼラったら、ちゃっかり腕なんて組んじゃって)
今回の件で二人はまた一段と親しくなったみたい。
そんなことを考えながら傍らを横目で見る。
お食事のお誘いを受けたからか、ユーリイさんを意識し過ぎて反対に声がかけづらい。
(あたしったら、考えすぎよ。それにしてもユーリイさんったら、こんな少年みたいな顔しててサラッとお食事のお誘いしてくるんだもの)
(初めは……童顔だし、あんまり異性として意識していなかったけど、さっきのシンデレラと王子様への気遣い……やっぱり年上の男の人なんだなぁ)
あたしがそんな事を考えていると、ユーリイさんが話しかけてきた。
「きっとね、大丈夫ですよ」
「え?」
「
「チャーミング王子のお気持ちが通じるのかも、シンデレラさんがどう思われるのかも、恋に進展するのかも、こればかりはわからないですけどね。でも、二人は話す機会を得て多分、気の合う友達同士にはなりそうだ」
「まずは、そこからで。僕らの計画は、この出会いを作っただけでも意味があったんじゃないかなって思うんですよ」
穏やかなユーリイさんの言葉に頷いて、あたしも微笑む。
「ええ」
あたし達はニッコリして顔を見合わせた。
──その時
シンデレラが、仮面をつけたチャーミング王子に手を引かれて舞踏会会場にやってきた。
王子様はかなり緊張している様子で、シンデレラは何だかポカンとして戸惑っているみたい。
(え?これどういうことなのかな?王子様は凄く真面目な顔してて、シンデレラは、よく分かってないみたい。何があったんたろう。大丈夫?)
あたしは色々考えて気を揉んでしまう。
振り向くと、みんなも心配そうな顔をしている。
何かあったら出ていかなくっちゃ。
そう思っていると、流れていた曲を手をあげてチャーミング王子が止めさせた。
静かになった会場に声が響く。
「皆さん、今宵は私、チャーミング王子の開いた舞踏会にようこそ、おいでくださいました」
そして仮面を優雅に外した。
「おお!王子様だ」
「チャーミング王子よ!」
「横にいる美しい女性は、どこの令嬢だろう」
ヒソヒソと囁く声が聞こえる。
王子様は緊張しつつも、みんなに聞こえるようにしっかりと声を張りながら話し出した。
「実は皆さんに、お詫びしなければならない事があります」
「この舞踏会、私の花嫁探しの為に開かれたと、そう思って来られた方も多いと思う」
「だが、実は初めから、心に決めた女性はおりました」
会場から、若い女性達の悲鳴やら、嘆きの声が聞こえてくる。
シンデレラは、と見てみると、あっけに取られて王子様と会場を交互に見ている。
(あちゃー! ここで急に爆弾発言しちゃうなんて王子様も大胆というか、怖いものしらずというか……)
思わず、あたしがそう思った時、
王子様はシンデレラを真っ直ぐ見つめながら言った。
「シンデレラ、それは貴女です。城下で貴女を見かけた私は、貴女に一目惚れしてしまった。そして貴女に逢いたい一心で、舞踏会を開いたのです」
全ての時が止まったように会場はシーンと静まり返った。
「私と結婚……と言いたいが、もっと貴女のことが知りたい。貴女とお話したい。だからお友達からでかまいませんから、これからも逢ってくださいませんか?」
シンデレラは大きな青い目を見開いて、その言葉を聞いていた。
そして次の瞬間、ニッコリと笑って
「ええ!勿論、喜んで!」
と、答えたのだった。
一斉にどっと歓声があがった。
あたし達もホッとして顔を見合わせた。
ユーリイさんが側に来て
「ほらね!」
とウインクした。
そうして、シンデレラったら、次に何を思ったのか、履いていたガラスの靴を片方脱いで、それを王子様に差し出した。
(えー!あの子ったら中途半端に覚えちゃってたのね。あれほど、帰りがけに残して来なさいって言ってたのに。まったく)
でも、まぁ、終わりよければ……よね。
王子様も、訳が分からないなりに、嬉しそうに受け取ってるし。
そして、あら、あそこにいらっしゃるのは王様とお后様じゃないかしら。
手を取り合って嬉しそうに泣いてらっしゃるみたい。
こっちにはウチのお義父さまとお母様。
お義父さまも泣いてらっしゃるわ。
そして、お母様はあたし達を見つけて……ここでガッツポーズ!?さすが、わが母上様ね。
王子様がシンデレラから受けとったガラスの靴を高く掲げて……ああ、光が反射して綺麗。
ワルツが流れ出した。
皆が踊り出す。シンデレラと王子様も。
王子様がシンデレラにガラスの靴を履かせ直してから、中央に出て踊り出す。
あたしは、ひと仕事終えたような充実感と、みんなの嬉しそうな顔をみながら、ちょっと感動で涙ぐみそうになってた。
こうして、この夜の舞踏会は無事に幕を閉じたのだった。
(続)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます