◆シンデレラと王子様(出会ったけれど)◆
チャーミング王子と合流したあたし達は、とにかくシンデレラが向かったと思われる『夢見るお伽噺集』展覧会場を目指して歩き出した。
チャーミング王子は何故かベネチアンマスクという目の部分だけ隠れる仮面を取り出して付けている。
「あのーー なんでそんなものを?」
あたしは不思議に思って尋ねた。
だって、仮面舞踏会って話は聞いてないし、皆だってそんなの付けてないのに。
すると王子様は少し得意そうに言った。
「ふふふ、これなかなかミステリアスで良いでしょう? これをつけていたら私が王子だとはわからないし」
「……はぁ」
「それにシンデレラは
「……はぁ、確かに」
王子様とシンデレラって結構、いやかなり相性良さそうな気がする。
王子様も純粋というか、世間ズレしてないし、そもそも舞踏会にシンデレラが好きだからって『夢見るお伽噺集』展覧会場を併設しちゃうなんて、いじらしいじゃないの。
それに素晴らしく美しいけど、クセのある
うん!初めは頼まれたからって思ってたけど(いや、それでも頑張るつもりだったけどね)これは何としても二人を出会わせてあげたくなってきちゃったなぁ。
ドリゼラを見ると彼女も、うんうん!と頷いている。
仮面の王子様はすれ違う人達から、ちょっと微妙な顔をされていたけど、そんな事には構わずに、あたし達は『夢見るお伽噺集』展覧会場へとひたすら急いだ。
§
「着いたーー!此処だわ!」
思わず歓声があがったほど苦労はしたけど、とにかく『夢見るお伽噺集』展覧会場に到着よ。
さすがに、なかなかの賑わい。
そーっと中を覗いてみると、いたいた!
今まさに買い込んだ本を預かり所に預けているシンデレラを発見!
皆も注目している。
美しさもだけど、そりゃこんなに大量の本、あの子ったら帰りのこと考えてるのかしら。夢中になると周りの見えなくなるあの子らしいといえばそうなんだけどねぇ。
ふと、横にいる王子様を見ると、かなり緊張している様子。
「シンデレラ……やっと会えた」
感激してるのはいいけど、早く行って声をかけないからシンデレラは荷物を預け終わって登場人物の衣装展示室へと行っちゃったわよ。
「コホン、チャーミング王子、早く行かれた方が」
ハッとした王子様、やっとギクシャクしながらもシンデレラに向かって歩き出した。
「あたくし達は、ここにおりますけど、何かありましたら、お助けに参りますから!」
声をかけたけど、ちゃんと聞こえたのかしらねぇ。
何気なく見物しているフリをしながら(というか、この催物はあたしも注目してたのよね。後でじっくりと見て回らなきゃ)王子様とシンデレラの方を見てみると……。
暫くして……
意を決した王子様が
「そこの美しいお嬢さん」
とシンデレラに話しかけている声が聞こえてきた。
「随分と熱心に見ておられたようですね。この『夢見るお伽噺集』展覧会はいかがですか?」
シンデレラは衣装を見た後で、試着について係の人に何着まで良いのか質問していたところだったようで、話しかける王子様になかなか気が付かない様子。
(ああ、もう、焦れったいなぁ。こんな人混みの中なんだから、そのくらいの声じゃ聞こえないですってば!)
展示衣装の陰に隠れて移動しつつ、あたしとドリゼラは、気づいて貰えていない王子様に目配せしてからシンデレラに近づく。
「ドリゼラ、行くわよ」
小声であたしが言うと
「わかってるわ。お姉様」
ああ、頼もしき我が妹よ。
あたしはシンデレラに話しかけた
「あーら、シンデレラじゃない。行かないなんて言いながら、結局来たんじゃないの。それもいつの間に?豪華な衣装だこと!あたし達を出し抜いちゃって、ねぇ」
「ほんとにねぇ、お姉様。あらあら、試着までするつもりなの?」
ドリゼラもノリノリで話しかける。
急に現れた
(今、今よ、チャーミング王子!)
あたしは王子様にもう一度、目配せする。
やっと気づいた王子様、
「おやおや、いったいどうされたのですか?そんな風に大きな声を出されて」
と、割って入ってくれた。
「いいえ、何でもありませんわ。これはあたくし達の
あたしはそう答えると
「まぁ、いいわ。特別に許してあげる。」
シンデレラに言ってから
「失礼いたしますわ。ドリゼラ、行きましょ!」
と、その場をゆっくりと離れた。
王子様がシンデレラに話しかけていて、今度はシンデレラも、はしゃいだ声で答えているみたい。
ふぅ……古典的な方法だけど、きっかけ作りには上手くいったみたいね。
後は頑張って!王子様!
あたし達は今度は、そろそろお城へと着いているはずの
(続)
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