◆シンデレラと王子様(追いかけて)◆
着替えを急いで済ませたあたしとドリゼラが、お城に着いたのは、シンデレラを送り出してから、そう遅くはなってなかったと思う。
「フゥフゥ、お、お姉様、シンデレラはどこかしら」
「ハァハァ、ド、ドリゼラ、まず、ひと息つきましょう」
いくらなんでも、レディがフゥフゥハァハァと息を切らしてるなんてハシタナイし、すれ違う人達が変な顔して見てる。恥ずかしい。
馬車(これは普通のね)から降りてから、早速、シンデレラは?と舞踏会の会場受付に行ってみたら横に
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【同時開催!『夢見るお伽噺集』展覧会】
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ってあるじゃない。
ピーン!ときたわよ。
シンデレラってば、絶対にこっちに向かったに違いないわ。
それにしても、お城ってこんなに広かったのね。
ドリゼラもあたしも方向音痴じゃないと思ってたけど撤回する必要ありかも。
舞踏会の方は、もう少し時間がありそうだったし、何だか王子様も、まだいらしてないとかでザワザワしてるから、そのうちにシンデレラを探さなきゃと此処まで来たんだけど。
この展覧会への案内、わかりにくすぎ!
っていうか、お城の中は似たような所ばかりなんだから、もう少し外部の人間にも親切に……って訳にも防犯上いかないのかなぁ。
ハァハァフゥフゥと二人していると、向こうからもゼイゼイと息を切らしながらやってくる男性が。
あれ?あの王冠とマント、それにあの顔は肖像画で見たことがあるような……。
ドリゼラとあたしは思わず顔を見合わせる。
「「もしかして、王子様?」」
近づいて、立ち止まって息切れしている男性に、お辞儀をして話しかけてみる。
「失礼致します。あたくしはアナスタシア、こちらは妹のドリゼラと申します。(少し小声で)あの、シンデレラの
「あの、チャーミング王子でいらっしゃいますか?」
「おお!貴女方がシンデレラの?(少し声を潜めつつ)それでその……例のことは聞いておられるのかな?」
王子様から少し顔を赤くして尋ねられたので、あたしは力強くお答えした。
「はい、その為に参りました」
「それで無事に送り出したまでは良かったのですけど、後を追いかけてきたのに、肝心のシンデレラを見失いまして……」
「それでチャーミング王子は何故こんな所に?」
王子様は赤くなった顔をもっと赤くした。
「いや、その、シンデレラと偶然すれ違ったのだが」
「えっ?そうなのですね。お会いになれたのなら良かった。で、
「その……あまりの美しさに見蕩れている間に……その、見失って……」
「「はぁ?」」
あたしとドリゼラは失礼ながら、思わず声を合わせて言っちゃった。
いやいやいや、確か王子様はシンデレラと同じ歳だから19歳のはずだけど、なんていうか、純情というか、その……少々頼りない。
「コホン、それでチャーミング王子、多分、
「そちらに行けば会えるはずですから、会場への行き方を教えていただければ、そこまでご一緒して陰から見守っておりますから」
「…………」
「チャーミング王子?」
「その、私も…… 会場へ行こうとしているのだが……」
「どうも、迷ったようなのだよ。 ハハハ……」
王子様の力無い笑い声が虚しく響く。
「……ご自分のお城ですよね?」
「それはそうなんだが……恥ずかしながら私は少々方向音痴な上に、例の『夢見るお伽噺集』展覧会の会場の為に色々と改装したりもしたので」
「……余計にわからなくなった、と」
「…………すまない」
あー!もう!シンデレラといい、王子様といい、なんて世話が焼けるの?!
いや、このお城の入り組み方と案内の不親切さも問題だけど。
それにしても
うーん、あの子はこういう勘は鋭いから、しっかり行き着いてる気がするけどね。
子犬のような目をして、こっちを見ている王子様に頷いてみせながら、密かに溜息が出てくるあたしだった。
§
◆閑話4◆シンデレラ、狂喜乱舞する◆◇
──その頃、シンデレラ展覧会場にて──
「やったぁ!これで欠けてたバックナンバーは完璧よ!」
「ふふふ、観賞用に保存用と全巻揃えられたのはラッキーだったわね」
「さーて!荷物の方は預かり所に預けて、っと後はいよいよ、念願の……」
シンデレラは足取りも軽く、登場人物の衣装展示室へと。
じっくりと衣装を見た後は衣装の試着について、係の人に何着まで良いのか質問している。
これは長くかかりそう。
それにしても、チャーミング王子とお義姉様たちは果たしてシンデレラに追いつけるのだろうか?
午前0時に魔法を解くのは大丈夫?
ユーリイやブルーノたちと合流はちゃんとできるの?
ちょっと頼りない王子様とシンデレラの恋?(まだシンデレラは認識すらしてない)の行方は?
前途多難のお義姉様たち、頑張って〜!!
(続)
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