◆舞踏会へGOGO!あっちもこっちも大忙し!◆

 アクシデント続出で、タイムリミットがきた魔法使いのおばあさんあたし

 手から魔法がどんどん解けていって、いよいよ、顔も……ど、どうしよう!


 ガラスの馬車に乗ったシンデレラが、ご機嫌で、こっちを向いてあたしに話しかけようとしている。

 万事休す!


 その時、

 大量の煙幕が〜!!

(わーん!みんなー!!ありがとう(涙))


「あれれ、魔法使いさん、何処?」

 シンデレラの声がする。


「ほっほっほっ!大丈夫だよ。さぁ!それよりも急がないと舞踏会に遅れてしまうよ」

 あたしは地声に戻りそうなのを何とか誤魔化しつつ、シンデレラを何気なくかせる。


「御者に従者が、ちゃんと娘さんをお城まで運んでくれるからね。心配ないよ。さぁ!行っておいで!楽しんで!」


 動き出す馬車。

 煙幕が消えてしまう前に、あたしは慌てて、ユーリイさんやみんなの元へ……。


 ひぇえええっ!セーーフ!!


 「お姉様、大丈夫?もう、アタシ、心臓がバクバクして」

 心なしかドリゼラも緊張からか顔色が悪い。

 ブルーノさんが、そのドリゼラを支えている。

 ユーリイさんも、うんうんと頷いている。


 走り出した馬車を、隠れた場所からみんなと見送りながら、あたしは完全に変身魔法が解けた自分の姿に、今更ながら冷や汗を流していた。


 §


 とりあえずシンデレラを無事にお城の舞踏会へと送り出したあたし達。


 やっとひと息……と言いたいところだけど。

 でも、これでおしまいというわけには行かないものねぇ。

 だって、ほら、今度は舞踏会でのシンデレラをフォローするという役目がね。

 それにシンデレラにはコソッと耳打ちしておいたけど、ガラスの靴、あれを片方、帰る時に置いてこなきゃいけないんだけど、理由を話して念押しする余裕が無かったのよね。シンデレラは生返事だったけど、わかったのかなぁ。いつもの思い込みで勝手な解釈して変なことしなきゃいいけど。


 まったくお母様もドリゼラもだけど、あたしも結局、お人好しの苦労性なのよねぇ。はぁ……。


 あたしとドリゼラは後の始末をユーリイさん達にひとまず任せて、急いで着替えて、お城に向かうことにした。


 ユーリイさん達には後からお城に追いかけてきてもらうことに。

 0時の魔法の解ける演出もしなきゃいけないから、まだまだ気は緩められないのよね。

 ふぅ……。


 §


◆閑話3◆シンデレラ、大いに興奮する◆◇


──シンデレラ。お城にて──


 さて、無事にお城に到着したシンデレラ。

 早速、舞踏会の会場へ……なのだけど、ふと見た会場の受付の横に


 ☆☆☆━━━━━━━━━━━━━━━

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 ━━━━━━━━━━━━━━━☆☆☆


 と、いう案内板を見つけてしまった。


「きゃー!これよこれ!この為に来たようなものなんだもの」

「何なに?即売会もあるじゃない!ええーっ!衣装の試着まで!最高!」


 興奮して鼻息も荒く(でも美人はこういう時には得。目はキラキラ、上気した顔はどこまでも美しい)展覧会場へと足早に歩き出す。


「えーっと、バックナンバーで欠けてるのはどれだったっけ?まぁ、間違って買っても、そっちを保存版にしておけばいいわよね」

「問題は衣装の試着ね。何着までOKとかあるのかなぁ」

「着画イラストは1枚限りってあったし、うーん、迷うわぁー」

「第1候補は……白雪姫? でも少し年齢的に幼すぎるかしら。いやいや、関係ないわよ。好きなのを着ないと後悔しちゃうし。あと、眠れる森の美女のオーロラ姫の衣装も捨てがたいのよねぇ。そうそう!人魚姫は外せないわよね。何しろあの尾ヒレのファンタスティックなこと。ちょっと大胆な感じにはなるけど、これは清潔感ある色気っていうか……うーん、和風でかぐや姫とか乙姫も、なかなか着る機会が無いからなぁ」


 歩きながら、ブツブツと呟いているシンデレラには、今すれ違った王冠をかぶりマントを羽織ったスラリと背の高い端正な顔立ちの若い男性の事などは、まるで見えてなかった。


 その男性(明らかに王子様なんだけれども)の方はシンデレラに気がついた様だったが、急な事に反応出来ずにアワアワするばかり(こういうところはお坊ちゃま育ち?の押しの弱さかもしれない)


 我に返った時にはシンデレラの姿は無く、どこに行ったのかわからない始末。


 そして彼は実はかなりの方向音痴で自分の城の中でも時に迷ってしまう。

(彼の名誉の為に言っておくと、城はとてつもなく広いし、かなり入り組んだ作りになっているのだ)


 とりあえず、彼女を探すべく行動開始する王子様。

 彼の名前をここで明かしておこう。

 チャーミング王子プリンス・チャーミング


 彼こそが城下で見かけたシンデレラに一目惚れして、その恋を実らせるべく、今回の舞踏会を開催した王子様である。


 ちょっと頼りない気もするが、王子様なりにかなり頑張っているのだ。


 それにしても、まずはシンデレラを見つけなければ!


(続)

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