◆アクシデント続出!お義姉様ピンチ!◆

 さてさて、お次はガラスの靴ね。

 それから馬車と御者、従者も。


 シンデレラが、なかなか気が付かなかったのもあって、少し時間が押してきてる。

 まぁ、後がスムーズにいけば大丈夫だけどね。


 とにかく、ガラスの靴。

 隠しポケットから、出して見せるとシンデレラは、すっかり気に入ったみたいで

「わあー! なんて綺麗なの!」

 と嬉しそう。

 そこまでは良かったんだけど……。


「ん、なんかちょっと歩きにくいかも」


 え? まぁ確かに、あんまり歩き回るには向かないわよねぇ。

「コホン! それは美しさを追求するとどうしても……でもそこは少しだけ辛抱じゃな」


 ちょっと難しい顔のシンデレラ。

「うーん、まぁいっか。 目的は『夢見るお伽噺集』シリーズのバックナンバーと登場人物の衣装展示だしね。ダンスの方はパスしてもいいわけだし」


 ふう……何とか納得してくれたみたい。

 しかし、履き心地に関しては、今後の課題?だわね。


 それから少し急ぎ足で、ガラスで作ったミニチュアを仕込んでおいた屋敷裏のカボチャ畑までシンデレラを連れていく。


「もう、待ってよーー 歩くの早すぎ!」

 うん、わかるけど、じ、時間がかなりね……。


「馬車はこれを使おうかね」

 あたしがカボチャを杖で指すと

「カボチャを馬車にしちゃうの?」

 シンデレラは好奇心で溢れんばかり。

 ふふふ、こういう無邪気なところが可愛いのよねぇ。


 さてさて、ユーリイさんへの合図を兼ねて、と•*¨*•.¸¸♬︎シャララン•*¨*•.¸¸♬︎ 杖を振る。

 あれ?

 •*¨*•.¸¸♬︎シャララン•*¨*•.¸¸♬︎ もう1回。

「…………」

 おかしいなぁ、ユーリイさんは? 周りを何気なく見てみるとアタフタしている気配が!

 何かあったのかな……。


 シンデレラが変な顔をして、こっちを見てる。

 マズイ!!!

「コホン、コホン、まぁ、ちょっとお待ち。カボチャにも馬車に向くのと、そうでないのがあるんじゃよ」


「ふーーん……」


「さぁーーて、あっちのはどうかな」

 シンデレラの肩越しに両手で丸が作られたのを確認して、あたしは再度、•*¨*•.¸¸♬︎シャララン•*¨*•.¸¸♬︎ と杖を振った。


 煙幕と次の瞬間、

 ボン!

 音がしてから煙幕がはれると


 魔法で実物大になったガラスの馬車が登場!


「わあ! すごい! すごいわ!」

 シンデレラの、はしゃぐ声にホッとする。

 いや、もう、どうしたものかと冷や汗だったわよ。


 後は御者と従者ね、ユーリイさんのペットのハツカネズミ「ビビ」と「トト」出番だよーー!

 もう片方の隠しポケットに入っていた二匹に出てきてもらう。


 その瞬間、

「きゃーーーーっ!」


 な、何? 何?


「ネ、ネズミーー!」

 シンデレラが震えながら飛び退いている。


 え?


「私はネズミが苦手なのよーー!」


 嘘ーー!?どうしよう、コレ。

 卵アレルギーの時に続いてリサーチミスだわ!

「ま、ちょっと、待ちなさい。 落ち着いて、落ち着いて!」


 逃げ回るシンデレラと追いかける魔法使いあたし

 さすがにガラスの靴のシンデレラ。早くは逃げられないから、何とか追いつく。


「はぁ、はぁ、ちょっとお待ち、とにかく止まって、止まって」

 涙目のシンデレラを落ち着かせる。


「ふーむ、ネズミが苦手とは悪かったが、今回はこの子らの力を借りねばならんのじゃよ」


「…………」


「よーし、こうしようじゃないか。 まずは目を瞑ってご覧。あたしを信じてね」


 怖々、目を瞑るシンデレラ。


 さて、と

 こちらもビックリしてポケットに逃げ込んでいた「ビビ」と「トト」に再度、登場してもらう。

 そしてユーリイさんや皆に聞こえる様な声で

「飛びっきりハンサムな御者と従者になーーあれ! 」•*¨*•.¸¸♬︎シャララン•*¨*•.¸¸♬︎


 よし!いい感じの煙幕!

 そして、ボン!

 煙が消えると「ビビ」と「トト」は背の高いなかなかハンサムな御者と従者になった。


「もういいよ」


「えっと、ネ、ネズミは?」


「ほっほっほっ! これ、この通り!」


 ハンサムな御者と従者に変身した二匹、いや、今は二人に、シンデレラはボーっとしてる。


 さて、後は馬。実は馬は最後まで迷ってたのよね。予行練習リハーサルでは本物だったし、そのまま本物を使うことも考えたけど、何しろ魔法を解いた後が大変だし。


 それでブルーノさんに頼んでこれもガラスで作って貰った。ギリギリに決まったからブルーノさんに徹夜させちゃったけど。


 ユーリイさん曰く、元々同じ形の物を大きくして動くようにする魔法は、わりと簡単らしい。

 そっか、ガラスの馬車と同じ理屈なのね。


 こちらにも最後に•*¨*•.¸¸♬︎シャララン•*¨*•.¸¸♬︎ と杖を振って、と。


 ガラスの馬車にガラスの美しい馬が四頭。


「さぁ、シンデレラ、この馬車に乗って行っておいで!」

(ふぅ……何とかここまできたよーー! 後は無事にシンデレラを舞踏会に送り出して……と)


 その時!何気なく自分の手元を見た、あたしは、もう少しで声をあげるところだった。


 マズイわ! そういえばタイムリミット60分だったっけ。

 手がおばあさんの手じゃなくて、あたしの手に戻っていってる。

 シンデレラは馬車に乗り込んでご機嫌で今は気がついてないけど。


 と、とにかくこのままじゃ、あたしアナスタシアが魔法使いのおばあさんだって、わかっちゃう!

 こんな時に限ってシンデレラはなかなか出発しないしーー!


 ユーリイさん、ドリゼラ、ブルーノさーん!


 変身魔法はどんどん解けていて、あたしは両手を後ろに隠してるけど、笑顔が引きつってるのがわかる。


 あたしはとにかく目でみんなの姿を探しつつ、頭をフル回転させていた。


 どうしよう!どうしよう!


(続) 

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