◆お義姉様たち、奮闘する②◆
そして、お城の舞踏会まで、あと一週間と迫ったある日。
あたしは最後の詰めで頭を悩ましていた。
「んー灰被りのドレス、これは少しほつれと破れがあった方がいいわね。これで良し、OK!問題はこれを豪華版のこっちのドレスに、どう劇的に着替えさせるか、よねぇ」
「髪型と髪飾りとのセットアップも考えなきゃだし、やっぱり魔法かなぁ」
この辺にあんまり時間をかけちゃうと、シンデレラが我に返って興ざめしかねないし。
ここは考えどころだわね。
色々考えていると、ドリゼラがニコニコしながらやってきた。
「お姉様、どう?このガラスの靴。試作品なんだけど。なかなか良い感じじゃない?」
見れば手に何とも優美で繊細な美しいガラスの靴を持ってる。
「へぇーすごく綺麗ねぇ!これなら目立つこと請け合いだわ!」
あたしが
「ふふふ、これは完成したら師匠
ガラス工房の師匠とは今回の相談が縁で、かなり良い感じになってるみたいで、ご機嫌の様子。
あたしは着替えの件についてドリゼラに意見を聞いてみることにした。
「実はねぇ、ドリゼラ……」
あたしの話を聞いていたドリゼラが、ふと思いついたように言った。
「あのね、実はウチのガラス工房の師匠の従兄弟にね、魔法使いがいるんだけど」
「おお!思わぬ所で魔法使い発見!」
あたしは思わずガッツポーズをとった。
この時代、魔法使いも後継者不足により貴重な存在になってきた。
考えないわけじゃなかったけど、探し出して依頼するには、かなりの金額が必要になる。
まぁ、シンデレラの為だといえば、お義父様は出してくれるだろうから、最終手段として考えてはいたけど……。
それにしても今どき、魔法使いになろうなんて、なかなかに得がたい貴重な人材じゃないかしら。
そんなことを考えていると、ドリゼラは心得ているとばかりに大きく頷きながら言った。
「それがねぇ、まだ仮免許中でね。本試験に向けて修行を兼ねたアルバイトを探してるって言ってるのよ」
「ふむふむ」
これが込み入った魔法が必要なら考えるけど、言ってみれば派手にスピーディに着替えさせたりとかそういうのだし、だったら仮免の魔法使いさんでも使えるかもしれないわね。
そうだ!セットで馬車と御者も何とかならないかを相談してみるのもいいかも。
あたしはドリゼラに言った。
「わかったわ。面接しましょう」
「面接?」
「そうよ、面接はガラス工房の一室をお借りできないか頼んでみてくれない?早い方がいいいわ。時間もないし」
ドリゼラが頷く。
「了解!ちょうど魔法使いさんは今、ガラス工房に滞在中なのよ。だから、都合がつけば明日にでも面接できると思うわよ」
これで良し!と。
師匠の従兄弟の魔法使いさんとバイト料の折り合いがつけば、計画もいよいよ大詰め。
ガラスの靴の方も細かい修正を入れたら、これで完成も間近だし。
これを舞踏会の帰りがけに置いてきたら、インパクトもバッチリになるわね。
あとはシンデレラを、いかに自然な形で、この計画に乗せていくか、だわね。
最後の結果ばかりはシンデレラと王子様のお互いの気持ち次第。
だけど(最初はビックリしたけど)思い込みが激しいとはいえ、それだけに純粋な
それがわかってるから、お義父様もお母様も、何とかしてやりたくて、あたしやドリゼラに協力を求めてきたんじゃないかしら。
ふふふ、何だかワクワクしてきちゃった。
それに、あたしって、こういう演出を考えるのに向いてるのかもしれない。
シンデレラの一件が上手くいったら、こっち方面の学校に行けないかを考えてみようかしらん。
§
◇◆閑話◆シンデレラは今日も夢見心地◆◇
──シンデレラの部屋にて──
(シンデレラ、ベットに寝転びながら独白)
うーん、新しいお義母様やお義姉様たちが意地悪じゃなかったのは予想外だったわ。
気の良い方々みたいで、それは、いいことなんだけどね。
でも、これじゃ全然、ドラマチックじゃないんだもの。
美少女シンデレラは継母や義姉達から、毎日のように意地悪されつつも健気に一生懸命生きている。
そこに運命の王子様が現れて……!
「僕が君を救ってみせるよ。愛しい人!」
(きゃーきゃー!!とクッションを抱きしめつつ、ベッドの上をゴロゴロ転がりながら身悶える)
ああ!これよ!これ!こうでなきゃ!
今度のお城の舞踏会、お見合いパーティーみたいなものなのかなぁ。
だったら、つまんないな。退屈そう。
ちょっと気が重くなっちゃいそうだわ。
あーあ!何かこう、運命的なことが起こるといいのになぁ。
(目を瞑ってウットリとした表情で空想に耽っているシンデレラ。そのままいつの間にか眠ってしまった様子。キラキラした美しい金髪に長い睫毛、あどけない笑顔を浮かべている姿は、まるで天使のよう)
こうしてシンデレラの夜は
(続)
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