31 幼女魔王、新たな仲間を加える
冒険者ギルド二階テーブル席、サキ達四人の話し合いは未だに続いている。
ラフィエールの質問の後、今度はセレナがサキに何かを話そうとしていた。
「あの今度は私も良いですの?」
「ああ、この際だ。何でも聞いてくれ」
「はい、
「お願いか?」
セレナから飛び出す予想外の発言にサキと何故かレイラも身構える。
「私のお願い、それは私をあなたのパーティーに入れて欲しいということですの!」
セレナは冗談で言っているつもりはまったくなかった。
真剣な表情を顔に張り付けてサキとレイラが座る方へと身を乗り出している。
「私、模擬戦からずっとサキさん達を観察してましたがサキさん達の強さの秘訣がよく分かりませんでしたの。なのでいっそのこと同じパーティーに入れば強さの秘訣が分かるかと思いまして」
彼女はサキとレイラの模擬戦を見てからずっと二人の観察をしていた。
依頼中、買い物をしている最中、食事中すらもだ。
簡単に言うと彼女こそが護衛依頼前にレイラの感じた視線の正体だった。
そのことにセレナの言葉で気づいたサキは慌ててレイラの脇腹を
「レイラ、もしかしてセレナが視線の正体なんじゃないか?」
「うん、私も今の話を聞いて思ったよ」
どうやらレイラも気づいていたようでサキと同じ考えを示す。
「それでどうするの? セレナさんもパーティーに入れるの?」
「うむ、それなんだが……」
「どうなんですの? パーティーに入れて下さりますの?」
「ちょっと待ってくれ、今パーティーに入れるかどうかの判断を……って何故ここに!?」
サキとレイラの小声会議に何故かセレナの声も乱入する。
見るとセレナは自分の座っていた席を立ち、いつの間にかサキとレイラの後ろへ回り込んでちゃっかりと話し合いに参加していた。
「何故ってやはり気になりますので、でどうなんですの? 入れますの!? 入れませんの!?」
セレナはサキに限界まで顔を近づける。
どうやら結果が早く知りたいみたいだ。
「まぁ俺としては問題ない」
「私も仲間が増えるのは嬉しいよ!」
「そうですのね、だったらすぐにパーティーの申請をしましょう!」
「別に大丈夫だが顔を離してくれ、近すぎる。それと他に話はもう良いのか?」
「話の件ですが私はもう大丈夫ですの。ラフィエールさんも大丈夫ですか?」
セレナはサキから顔を離した後テーブルの向かい席に静かに座るラフィエールへと声をかける。
その彼女の問いかけにラフィエールはただ頷きを返した。
ラフィエールも特に何もないようである。
「大丈夫ですよ。ぜひパーティー申請して来てください」
「というわけですので早く一階に行きますの!」
それからサキとレイラはセレナに連れられギルド一階受付カウンターへと向かった。
◆◆◆
「ようやく
現在ギルド受付カウンター前、セレナをパーティーに加えたサキ達パーティーはとある依頼の受注処理をしていた。
「それにしても良かったのか? ラフィリアでお父様がとか言っていただろう?」
「ああ、そのことならもちろん大丈夫ですの。私達の家は私ぐらいの歳で一度冒険者になって旅をします。ラフィリアのときは何故かお父様から町に残りなさいと申し付けがあって仕方なく町に残っていたのですが一度町を離れてしまえばこっちのものですの!」
セレナは自由を掴んだという風に胸の前でグッと手を握りしめる。
パーティーを組んだ直後、すぐに連れ戻されてしまってはパーティーを組んだ意味がないので一先ずサキも安心といったところだろう。
「それなら良かった」
サキがホッと息を吐いていると今まで依頼の受注処理をしていた女性ギルド職員が受付カウンターまで戻ってきた。
「お待たせしました。こちらサルトラ大森林の調査依頼を受理しました」
職員は続けてサキ達に注意をする。
「このサルトラ大森林は中級の魔物が多く出ますので気をつけて下さいね。いくらセレナ様のCランクだとしても他の二人はFランクなんですから。とにかくセレナ様こちらの二人を宜しくお願いしますね」
ギルド職員の的外れな発言にセレナは困った顔をする。
セレナはどちらかといえばサキに従う身、役割としては逆なのだ。
だが表面上セレナの方がランクは高く、見た目も三人の中では一番大人に見える。
ギルド職員がセレナこそパーティーの中心人物だと思っても仕方のないことだった。
「わ、わかりましたの!」
「では怪我がないことを祈っております」
ギルド職員が頭を下げるとセレナは一つ頷きを返してサキ、レイラと共に受付カウンターから離れる。
その後ギルド一階、階段の手前まで歩くと突然セレナがサキとレイラに振り返った。
「さっきは説明出来ず申し訳ありませんでした。新参者は私の方ですのに……」
セレナはつい先程サキとレイラが新参者の自分よりも下に見られていたのにも関わらず、事情を説明しなかったことを気にしていた。
いくら咄嗟のことで返事が出てしまったとしても先程の対応はこれからお世話になるサキ達に対して失礼ではないかと考えていたのだ。
「そのことか、別に俺達は気にしていない。いちいち訂正するのは面倒だからな」
「そうだよ、サキちゃんはともかく私はセレナさんよりも実力ないんだから」
「そんなことはありませんの! もし私が『レッド・ドラゴン』と戦っていたら手も足も出なかったに違いありません……」
「とにかくもう同じパーティーなんだ。細かいことは気にしなくても良い」
サキがそう言葉を発し、ギルドの階段前まで歩みを進めると彼女の前に階段を下りる影が一つ現れる。
「私も依頼ご一緒して宜しいですか?」
階段を下りる影──ラフィエールはゆっくりと階段を下りていく。
そして一階の床に足をつけるとサキの方を向き、立ち止まった。
「ラフィエールも俺達のパーティーに入るのか?」
「いいえ、違います。私はセレナさんの護衛ですので」
「そうか、なら依頼の受注人数を増やそう。その後は宿を探して今日ところは休むか」
サキは再び受付へ向かい依頼受注人数の変更を行うと他の三人と共に宿を探すためギルドの外へと出た。
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