一、二年生
何故絵を描こうと思ったのか、チカにもわからなかった。
わからないまま、入学式終わりに文房具屋で自由帳と鉛筆をいくつか買い、一心不乱に白紙を線で埋め尽くし始めた。
絵が上手いわけではない。授業以外で描くのは初めてのことだった。
何日も鉛筆を走らせ、消しゴムを滑らせ、紙を破いて次のページへ。勉強は赤点を取らない程度にして、ほぼ全ての時間を絵に費やした。
高校一年と二年は繰り返しの日々だったが、間違いなく画力は上がっていた。毎日毎日、暇を見つけては絵を描き、授業もほとんど聞かずに線を重ねた。
彼女を見つけては隠れて写真を撮り、彼女の輪郭や表情、仕種を模写していく日々。フォルダは彼女で埋め尽くされる。
だが、写真に翼は映らない。翼だけは毎度毎度目に焼き付け、何度も何度も描き直しながら進めるしかなかった。
試行錯誤を続け、三年になる頃には、誰かが見たら唸るほどの出来栄えのものを描けるようになっていたが、チカは満足できなかった。
悔しくて泣きながらも、自分があの日得た衝撃を、どうにか絵にしようと躍起になって、そして、二年の三学期ももうすぐ終わるというある時、ふと、考えてしまった。
どうして私は、彼女の絵を描いているのだろう、と。
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