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東埜 昊
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「よく集合写真を撮る時に,『1+1はー?』って聞いて『2ー!』って答えさせるやつあるじゃん」
「あるね」
「ちょっとそれじゃひねりがないから,僕なりに新しいの考えたんだけど聞いてもらえる?」
「いいよ」
「v - e + f はー?」
「……何それ?」
「知らないの? オイラーの多面体定理だよ」
「おいらの多面体定理?」
「そういう使い古されたボケはいいから」
「いや,ボケたわけじゃないけど」
「オイラーという大数学者の名前を冠した多面体についての定理だよ.頂点,辺,面は英語でそれぞれ vertex,edge,face というので,その数を頭文字で v,e,f で表すんだ」
「つまり,頂点の数 - 辺の数 + 面の数 が常に 2 だってことを言いたい?」
「言いたい」
「また回りくどいことを……ていうか,それってどんな多面体でも成り立つの?」
「うん.穴のない多面体ならば.試しに直方体で考えてみたら」
「頂点は 8個,辺は……12本,面は6個.8 - 12 + 6 は……確かに 2 だね」
「だろ! これ受けると思わないか?」
「……どうだろうね.確かに興味深い性質ではあるけど,普通の人は『何こいつキモい』で終わるんじゃないの?」
「だったらさあ,こういうのどうだい?」
「よく考えるね」
「
「分かりにくい!」
「高次導関数だよ.高次導関数.つまり,x^2 を 2 回微分したらどうなるかを聞いている」
「だったら最初からそう言えよ!」
「ちょっと分かりにくかったかー」
「ちょっとどころじゃねーよ.わざと分かりにくい例出して,俺のツッコミを待っていない?」
「そんな構ってちゃんじゃないよ,僕は」
「十分構ってちゃんだよ,あんた」
「じゃあ,分かった.これだったら多分だけど受け入れてもらえる」
「受け入れません」
「まあまあ,聞けよ.正直僕も高次導関数の記号は分かりにくいから微妙だと思っていた.次は分かりやすい」
「どうぞ」
「
「分かんねーよ!」
「またまたー.サインカーブ描いて 0 から π までの部分の面積出して 2 だった時の感動は普通忘れてないでしょ?」
「……俺は感動しなかったけど」
「嘘だろ!? 弧度法マンセーとかしなかった?」
「しなかったね」
「今分かったが,君とはあまり波長が合わなそうだ」
「単に位相がずれているだけかもしれないだろ?」
「……なるほどな.その表現,頂いた!」
2 東埜 昊 @nitten
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