第111話 ラブコール1

「おおー!!青い海と珊瑚とシーサー!!間違いないなく沖縄だな!めんそーれだな時奈!」

 と枝利香さんは見渡す。

 そう、沖縄にやっと着いた!!


 するとプルルと電話が鳴る。

 え?

 そこには栗生院吉城の文字だ!

 なんてタイミング!?

 思わず周りを見渡したが誰もいない。


「はい…吉城くん?」


『時奈さん?着いた?大丈夫?』

 とかけてきたイケメンよ…お前今…授業中じゃないの!??


「吉城くん…着いたけど…何?授業中でしょ?」


『トイレに行くと言ってかけたんだ!大丈夫だよ!』

 いやそういう問題ー!!?

 しかも到着時間ぴったりだよ!!


『そろそろ着くかなって計算していたんだよ。びっくりした?ああ、僕も行きたかったな』


「無理だからっ!集合しないとだからもう切るよ?ごめんね。また夜になったらかけるから!!」


『うん…ごめん…時奈さん…愛してるよ』

 となんやこいつ!!

 着いた側からっ!!私を惚れ殺す気なの?


 と電話を切り集合場所に行った。


 *

 電話を切りため息をつき教室に戻る。

 はあああ…とため息をつくとパシャパシャと隠し撮りされる音が。


 後、後ろや横からは生唾飲むゴクリと言う音。

 あーあ、時奈さんが恋しい。

 夜まで電話出来ないなんて何と言う苦行だ!

 やはり着いて行けば良かった!!


 はっ!これが…遠距離恋愛というやつか!!

 なんて切ないんだろう!!

 沖縄は暑いだろうな。

 どこでもドアとかないのかな。

 はあ。


 *

「あっついねー!」

 と私達は上着を腰に巻いて記念撮影を済ませ宿泊先にバスで向かっている。

 バスなんて運転手を除き女子しかいないので大胆にも下着になるバカギャル女子もいた。これぞ女子高生!男子がいなければ恥など捨てる!!

 私達は自由だー!!

 というノリ。


 昨年まで女子校だったし、共学校になっても3年は女子しかいないしね。


 しかし前のバスにはあのイケメン美術教師の暁雄さんが乗っているらしく、女子たちは大人しいだろうなと思う。こっちのバスで良かったわ。


「時奈自由行動時間ソーキそば食いに行こうぜ!」

 と枝利香さんは持ってきた雑誌を開いた。


「沖縄と言えばですね!」

 と田淵さんもジュルリとヨダレを垂らす。


「おいきたねーな!雑誌に落ちたよヨダレが!!」

 と枝利香さんが怒る。


「もう2人とも…自由行動は最終日だよ?まだ先だよ」

 と諫める。


「それじゃつまんねぇな、夕飯食べたら宿抜け出して食べに行こうぜ!」


「ええっ!?」


「ふ、不良ですよ枝利香さん!あ、この人不良だったわ」

 と田淵さんが言い、皆で笑った。

 女子の時間も楽しいなぁ。いつもベタベタにくっついてくるイケメンには悪いけど。


 宿泊先は沖縄独特の赤い煉瓦屋根のホテルで隣接するところには体験学習のモノ作り工房があった。

 これから荷物を置いて夕飯まで工房でシーサーを作るらしい。


「シーサーなんか土産で買えばいいのによ。めんどくせえな」

 と枝利香さんが言うと田淵さんは


「ふふふ、私のシーサーはカッコいいのを作ります!」

 とやたら自信満々だ。


「おい大丈夫か?お前料理でさえアレなのに」


「料理とモノづくりは違いますから!!」

 と言う。大丈夫かな?


 荷物を置き、工房に入ると既に人だかり!!

 中心にはやっぱり暁雄さんが完璧なシーサーを作り上げている。


「おおーっ!うめえな!」

 枝利香さんが割って入る。


「おや、大福ちゃん達。材料は揃っているから好きなように作り始めていいよ?焼きは明日行ってくれるらしいから。帰りにはできているさ」

 と言い、暁雄さんは材料の位置を教えて私達はそれぞれ固まり席について作り始めた。


 結果、できたシーサーは私のは完全に犬になり、枝利香さんのは何故かファンキーなサングラスシーサーで、田淵さんのは…す…スノーマン?


「おい、何だそれ?やっぱりおめーのだけおかしいって!」


「な!どっからどう見てもシーサーですよ!」

 と田淵さんが言う。どう見ても私にはスノーマンにしか見えぬ!!


「いや怖えよ。妖怪かよ…あ、キジムナーとか言うやつ?」


「いや、シーサーですって!」

 と言い合っている。

 そこできゃあああと声が上がった。

 見ると暁雄さんが自分のミニチュアの像を作っていた。


「先生ー!それちょうだい!!」


「やだー!あたしが欲しい!!お金出しますからっ!!!」

 と評判だが、暁雄さんは


「ごめんよ、これは俺の大事な人用にあげるやつだから!」

 と四宮先生にウインクして、四宮先生は赤くなり


「い、いりませんよ!そんなの!」

 と断った。


 ともあれ、私達は完成したそれを焼いてもらう場所へと置きに行ったところで夕飯の時間が迫り、生徒たちは集まり、美味しい琉球料理を食べた。


 夕食を食べ、部屋に戻る途中でスマホが鳴った。


「はい…」


『時奈さあん!!ご飯はもう食べたの??』


「うん、食べたよ?吉城くんはちゃんと食べたの?冷蔵庫に一応入れておいたけど」


『うん!凄く美味しかったよ!!ありがとう!!…でも君がいないから寂しいよ!明日帰ってこれない?』


「流石に無理かな…。ごめんね。また一緒に行ける時に行こうね」


『うん、待ってるよ。怪我しないように気をつけてね。今日はお疲れ様。ゆっくりお風呂に入って睡眠とってね?愛してるよ』

 とイケボイスで心配され切れた。

 くっ!!廊下でぶっ倒れるとこや!!


「なんか凄いタイミングでかけてくるな?盗聴器でも着いてんのか?」

 と枝利香さんが言う。

 私は無言でうなづいた。

 そう、気づいてんの!!私の服には最初から吉城くんの着けた盗聴器が仕込まれている。

 気付いていたけど言わなかった。


「まじか?」

 と言うからしっと指で制した。

 まぁ仕方ないよ。と言う顔をして見せると田淵さんも苦笑いしつつ、部屋に戻った。


 それから私達は何故か就寝時間までUNOをしまくった。田淵さんが持ってきていたのだ。負けず嫌いの枝利香さんがジュースをかけて勝負をして負けた。


「くっそう!あんな変なスノーマン作るやつに何で勝てねえんだ!!」


「ふ…UNOだからって舐めてちゃだめですよ!」

 と威張る。まぁ修学旅行と行ったらていうやつかな?しかし枝利香さんはゴーヤジュースを買ってきて皆でその後にがっ!と叫んだのだった。


 その後、お風呂の時間になり、2人は大浴場へと入りに行くことになった。


「時奈…じゃあ、1人でゆっくり入ってな。部屋用の狭いバスだけど…」


「可哀想に時奈さん…私達は泳いできますね?」


「いや、泳ぐな!行くぞ!田淵!」

 と田淵さんは引きづられて行った。

 はあと私も部屋のシャワールームに行ってお湯を溜めるとスマホが鳴る。


「も、もしもし?」


『もしもし時奈さん?今お風呂?』


「そうだよ…」

 どうせ聞いてるんだろうなと思った。


『僕も入ってるよ家で…』

 と言って水音がしてうおおおお!!とドキドキが爆発しそうだ!!こんな同時に何の演出ですか!!?


「もう、私ゆっくり入りたいよ!」


『ごめんね。寂しくって…死にそうで…』

 ウサギなの?寂しくて死ぬウサギなの?


『時奈さんが今何も着てないと思うとドキドキする♡』


 ひいいいい!それはこっちもなんだけど!?色気あるイケメンの姿が想像できて風呂で上せたらどうしてくれるの?


「も、もう!本当にすぐに2人戻ってくるから切るからね!!」

 と言うと


『うん…帰ってきたら一緒に入ろうね、じゃあね』

 と電話が切れ私は既に上せそうで早めに上がるしかなかった。


 風呂から戻ってきた枝利香さんと田淵さんはまた喧嘩していた。どうしたのか聞いたら


「あたしのがある!」


「はあ?そんな断崖絶壁で何を?」


「うるせっ!じゃあ、時奈に判定してもらうか!」

 と2人はズンと前に出た。

 どうすりゃいいのよ…。


 そんなこんなもあり、無事に1日目は終了した。翌朝イケメンのラブコールにより起こされたのは言うまでもない。

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