第110話 修学旅行には付いて来るな

朝が始まる少し前ベッドでモゾリと身体を動かす。クソだるい。

というのも目の前のイケメンのせいだ!!

くっ!!こいつのせいよ!で、でも逆らえない!

愛されてメロメロにさせられるし、これが今日から行く修学旅行の条件というわけで前の晩からもはやめちゃめちゃ愛されまくる私雪見時奈です。E様ファンが聞いたら暗殺される案件。


のそのそと起きて支度しようとすると吉城くんが起きて…なんと目に涙を溜めて抱きしめ


「うっ!酷いよ、時奈さん…僕を置いて行っちゃうなんて!!に、2泊3日も!!僕を1人にするなんて!!ううっ!」


「いやだから、修学旅行なんだよ!絶対着いて来ない代わりに昨日からいっぱい…。とにかく!約束したんだから行かせて!集合時間あるんだから!」


「うう!やだあ!時奈さん成分が3日も足りなくなるなんて!着いて行っていいでしょ?バレないように護衛するだけでも…」


「む!吉城くん!聞き分けがないとも、もうこういうこともしないからっ!!」

と言うとむくりと起き上がりのそりとシャツを着て


「それはやだ…」

と訴え妙な色気を放ちキスしてくるから


「らめえええ!」

と言いながらとにかく抜け出して洗面所に逃げ込み顔を洗ったりシャワーしたりした。全くあのイケメン野郎!私を修学旅行に行かせない気か!!


まぁ…行かせない気だよね?ていうかほんと2泊3日だからね!!子供じゃないんだからと思うけど彼の両親が旅行中に彼を置いてというか殺害されたことに彼は少なからずともショックを受けているし私もそんな事にはならないと思っている。


着いていかない代わりに昨夜からいっぱい愛されてしまいもはや宿泊先の風呂なんか入れねえよ!!部屋で1人で入るシャワーしかもはや無理だと思った。


くっ…時奈…ウブなお前はどこへいっちまったんだ!?イケメンを惑わすこの魅惑的なボディが悪いのかしら?とか

言って鏡を見るが、全くボインボインではないしむしろスカーとした方だし、男が満足する身体じゃねえけど!


クソ!アニメのふじよちゃんボディならね?色気ムンムンだしセクシーだからいいんだけど、制服を着た私はただのモブになるのに、それすら愛しいと抱きしめる彼の目はやはりどこかおかしいと思う。いや、もう考え始めるとキリがないのでやめる。


バッグに昨日から用意した持ち物を再度軽く点検し、忘れ物がない!完璧と思っているとまた抱きつかれて泣かれた!


「よ、吉城くん!そろそろ行かないとだから!」

離せ!このイケメン!!

玄関に進む私にズルズルと体重をかけ邪魔するイケメン!


お、おのれ!私は行くんだ!修学旅行にいいい!!イケメンはハラハラと綺麗な涙を流して寂しいを連呼している。


仕方ないので帰ったらまたいっぱい愛してと言い、渋々彼は空港まで直接送ってくれた。鳴島さんと枝利香さんも呆れるくらいだ。


「時奈お前も大変だよな…執着愛!?」

すると吉城くんが反論して


「それじゃ、ストーカーみたいじゃないか!!失礼だな!溺愛と言って欲しい!」


「あんまり変わんないよ!」


「つうか…お前ら車内でイチャつき過ぎだろ!今日は私もいるんだから遠慮しやがれ栗生院!」

空港に着くまで枝利香さんも同行する車内で私はもはや定位置かと言うくらい彼のお膝に乗って後ろから抱きつかれスリスリされる始末だ。


「時奈依存症患者みてえ…」


違いない!!


「お土産買ってくるからね?」

と吉城くんに言い、車を降りる際も熱いキスをされ、ようやく解放されドッと疲れた。もはや…これから旅行とかつらくて堪らないよ!!腰痛酷いし。


「時奈…これ…」

と枝利香さんが気遣ってビタミンサプリと湿布をくれた。


「あ、ありがとう!枝利香さん!あんた…神だよ!!」


「おお、時奈可哀想に!こっからは飛行機だから安心しな!眠って少しでも回復しな!!」


おおお!やった!!

よし!寝るぞー!!が私の旅行の始まりだった。


すると田淵さんがやってきて


「彼氏持ちは大変なんですねぇ?私は今日の為に睡眠バッチリ体調バッチリでありますから!彼氏などいなくとも平気です」

と言う。どう応えればいいんだよそれ!


「ま、時奈ちゃんの荷物持ちくらいはしてあげれますよ!どんとこいです!ていうか貴方が旅行先で倒れたらイケメンすぐ来ますから」


「おお!神よ!私にいい友人を与えてくれてありがとうございます!」

と手を組んだ!!


「まぁその代わり夜は盛り上がりましょう!ふふふ、いろといろとエロい話を…」

と田淵さんはニヤリと笑った。


そして飛行機はついに飛び上がった!

沖縄へと!



「はあぁ…」

今日何度目かの溜息をつく僕を横目に隣の席のクソ白髪頭が


「時奈ちゃん、今頃沖縄かあ…いいなぁ…。小麦色に焼けて帰ってくる時奈ちゃんも想像したら健康的で可愛いだろうなぁ」

と白髪頭が赤くなったのでダーツ矢でブスリと額を刺した。


「あの…痛いんですけど?すぐ刺すの辞めてください…そういうのは暁雄さんだけにしてくれませんか?」


「誰であろうと僕の時奈さんを想像しないでくれる?殺すぞ?それに時奈さんの白い肌は絶対に焼かせない!紫外線は身体に悪いだろう?健康どころか綺麗な肌にシミの成分が生まれたらどうしてくれる!?太陽を破壊する装置でも作るか…」


それにクソ白髪の相馬は


「そ、そんなことしたら地球の何もかもが凍って絶滅するよ!地球を氷河時代にでもする気?」


「いちいちまともに取るな。冗談も判らないのかクソ白髪」

と言うと


「君って時奈ちゃんがいないと…おっと…桐谷が話したいって…」

と言うと相馬は一度目を瞑ると次の瞬間には目付きの悪い彼の中の第二人格の桐谷に変わった。


「おい栗生院!てめえ!いい加減にしろよ?失恋浅い相馬を苛めやがって!お前には優しさってもんはないのか?」


「…は?何言ってるの?僕が優しくなるのは時奈さんの前だけだよ…。相馬はまだしつこく時奈さんのこと好きって思ってんだろ?言っとくけど彼女は僕のものだからね!邪魔するなら本当に殺す」


「おい教室で殺す殺す言いやがって!このサイコ野郎が!そんなに言うならいい女の1人でも紹介しやがれ!…………おっと次は葉月が話したがってるから交代するぜ」


と桐谷は目を閉じて今度は葉月という女の第三人格に入れ替わった。


「………あのさ…栗生院くんてほんとキモ」


「なんだよオカマ」


「失礼ね!オカマじゃないわよ!」


「そうやって喋ってるとオネェそのもの。キモいのはこっち」


「ふーんだ、相変わらず容赦ないわね!何でこの本性知っても時奈ちゃんこんなクソサイコ野郎好きなんだろう?」


「さぁ?顔?ふふっ」


「顔なら相馬だっていいのに。ていうか、栗生院くんほんとキモ。こっそり彼女の持ち物に盗聴器遠距離タイプ仕掛けてるし逐一行動を把握してるわね?その耳につけたヘッドホンなんなのよ?授業中も外さないのに先生に叱られないし」


「さぁ?ヘッドホンの僕もカッコいいからじゃないの?」


「うわ…自分で言いよった!!?相馬ちゃんもヘッドホン着ければカッコいいに違いないし!」


「ナルシストなのか?オネェさん」


「ぴえーん!もう知らないっ!」

と、相馬に戻り


「はぁ…何でもいいけど…修学旅行はよく邪魔しなかったね。盗聴器云々は置いといて君なら本当に変装してでも着いて行くかと思ったのに」

と少し意外そうに聞くから僕は言ってやった。


「もちろん最低限に護衛は付けてるけど、僕が行かなかったのは彼女との約束だしね。それに…無事に戻ってきたら…僕も亡くなった両親のことを少しは許せるんじゃないかって。置いて行かれた悔しさみたいなの。だから待つことにした」


「あのさ…2泊3日にそこまでの意気込み感嘆する。1週間って訳じゃないんだから」

とクソ白髪は呆れた。

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