第15話 イケメンが助けに来た2
私は暗い部屋で何かテレビ画面が天井から降りて来て、
その様子を一通り見せられた。
ゴリラ女はライターを持ちながらニヤニヤしていた。
栗生院くんがあの美人の女と取引しているところだ。
完全に彼は嘘をついていると私には何となく判ったけど、
他の女の子に彼が「愛してる」とか言ってるのを見せつけられると流石に嘘でもショックで悲しくなる。
ヤバイ辛いわ。
私がガッカリしてるのを見てウホウホ喜んでるゴリラ女だが、
ついに反撃が始まったのかお嬢様は何かあっという間に捕らえられて栗生院くんは
「手間取らせやがって…!おい!ゴリラ女!見てるだろ!このお嬢様をぶっ殺されたくなかったらそのままそこでバナナでも食ってろ!」
と叫んだ!
うがっ!めっちゃカッコいい!!映画かよ!!
助けにくるヒロインが美人なら良かったのに!
絵面的にヒロインじゃない私は誰かにヒロインを譲りたくなる。
ゴリラ女はそれを見て
「畜生!あのガキ!お嬢様をよくもっ!足を撃って動けなくしてやる!」
となんと自動小銃を手に持っている!
ひいいい!私の日常が壊れてく!
「お前はここで待っていろクソダサメガネ!!」
と言い扉を閉められた。
ううっガソリン臭え…。頭痛くなってきた。
そう言えば身体に悪いんだっけ?嗅ぎすぎると…?
もっと勉強しておけばよかった。
*
ゴリラ女はエレベーターの前で自動小銃…アサルトライフルを構えて立っていた。
扉が開くと同時に足元を撃ってやると意気込む。
エレベーターのランプがどんどん降りてきてついに扉が開いた。
同時に引き金を引いて連射した。
しかし中は空っぽだ!
「何?どう言うことだ?まさか上の連中に負けて取り押さえられた?」
上がって来いと言うことか?とエレベーターの中に入ると天井が派手に割れてあのガキが現れる。咄嗟にライフルを上に構えるがガキは躊躇なくダーツの矢を小銃の口に入れる。
何という的中率だ!このまま撃てば暴発する!
捨てるしかない!体術でガキをのしてやる!
とゴリラ女は重い拳と蹴りをガキに放つがガキはくるりと手の中のアーミーナイフを回して
私の拳をするりと空中で交わしそのままエレベーターの壁を蹴ると勢いをつけて私の肩にナイフを突き刺した。
「ガッ!!」
血が溢れる。
ナイフは私に刺さったままだ。
下手に抜くと出血が酷くなるな。
「さてゴリラ!もうお前の銃も使えない、降参しろ!」
と銃を向けられる。舐めやがって!
「撃てるものなら撃ってみな!ガキめ!」
と私は構わずガキの腹に強い蹴りを入れた。
よしっ!入った!内臓は破損したか?
それにしても恐ろしい身体能力だ。ガキのくせに。
しかしガキは目を細めて笑った。
「残念だったね…」
と着ていた上着を脱いだ。
「ボディアーマーか!」
それも素材がいい!それ私もサイズが合えば欲しかったやつ!!
「終わりだ!これ以上僕を怒らせるな!」
とガキは銃を肩に撃ち太ももにも撃ってくるが私は焼ける痛みと共に渾身の力でガキに向かった。
「うがああああ!!!」
しかしやはり避けられ最後はガキの足が私の首に引っかかりグイっとネジ回されて巨体は回転しズシンと倒れた。
視界が揺れ頭がグラグラして起き上がれない。
ガキは私をワイヤーで縛りそのまま引きづり奥の倉庫に放り込んで扉にワイヤーを巻きつけて出られなくした。
「お嬢様…申し訳…ありません…」
そうして気を失った。
*
「ゴリラ始末完了。倉庫に閉じ込めた。降りてこい」
と部下に命じる。エレベーターで部下が何人か降りてきて
そいつらの一人にとりあえず武器やらボディアーマーを外して渡して後は血なんかの処理を頼んだ。
「うっ……」
ボディアーマーがあるとは言えあのゴリラ女…
怪人より強いんじゃないか?これはちょっと医者に行くか。
「吉城様大丈夫ですか?顔色が!」
「大丈夫だ!掃除してろ!」
と僕は彼女の待つ扉を開けた。
「時奈さん!」
彼女は両手足を縛られて転がっていた。
しかも周りにはガソリンが撒かれている。
有害物質を長く吸い続けると身体に影響が出る。
なんて酷いことを!
「栗生院く…ん…」
僕を見ると時奈さんの目から綺麗な水が流れる。
「大丈夫だよ、もう終わったよ…帰ろう…」
僕が彼女の手足を自由にすると彼女は何故か隠しているはずのゴリラに蹴られたところをそっと触った。
「ここ…怪我してるのね」
泣きながら言う。何故判るんだ。
「大丈夫だよ…早く出ようこんな臭いところ」
僕は彼女を抱えようとすると止められた。
「怪我してるのに無理してカッコつけないで!」
ぐう…。
そしてどこからともなく鳴島とさらにの増援が来て僕は医者に運ばれていく。側には彼女もいるから安心だ。
「助けてくれてありがとう…」
彼女は泣きながら手を握る。
「時奈さん…あれは嘘…だからね?円成寺さんに言ったこと…」
「判ってるよ!!喋んないで!!」
と言われる。やっぱり彼女は勘がいい。
そして麻酔が効いたのか僕は意識を失った。
*
鳴島さんが手術室のベンチに座る私に声をかけた。
「大丈夫ですよ?坊っちゃまは頑丈ですから!今回はちょっと凶暴なゴリラが相手だったのでね、軽く内臓が痛んだり肋骨に少々ヒビが入っただけですよ。まぁ軽くトラックに跳ねられたくらいだと思えば」
「全然大丈夫じゃないいいいい!!!」
「まぁしばらくバイトはお休みしなくてはならないですね」
「当たり前ですよ!!」
こんな怪我でヒーロー達にさらにボコられに行かせられるわけにはいかぬぞ!!
すると手術室のランプが消えた。
医者が出てきて
「とりあえず入院ですね、3ヶ月は絶対安静です!」
3ヶ月も!私なんかの入院よりよっぽど酷い状態じゃない!
私なんか助けに来たりするからっ!
このサイコ野郎!サイコならサイコらしく見捨てろよ!!
私はブワリとまた涙が溢れる。
病室に移った栗生院くんは青白い顔で死んだように眠っている。口には酸素マスク。
「今日はこちらでお休みになりますか?隣にベッドもありますので」
と鳴島さんが言い、ついうなづいてしまった。
このまま死なないよね?
私はそっと彼の手を握る。
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