第4話 デートの続きが恐ろしい
店内に戻ってきた栗生院くんはにこやかに席に着いた。
何も無かったかのように。
しかし何かあったことは判る。
金で解決したか、この男の計り知れない何かで撃退したか。
彼はイケメンだが笑って酷いことを淡々とこなすことは私は早くも気付いているから。
「お肉美味しい?」
肉をリスみたいに頬張る可愛くない私に
栗生院くんは嬉しそうに頰に手を付きうっとり見つめてくる。
ぎゃっ!見るな!
食べてるクソダサメガネ女を眺めて楽しむんじゃないよ!
「あ…ご飯粒が…」
と言い、
彼は私の頰についた粒を顔を近づけてペロリと舐めとった。
瞬間私は石化した。
店の客もガン見していた。
時折おおっ!と歓声が上がる。
出たい!店を!一刻も!
こんな萌え死ぬ行動する奴がいたのか!
それすらも計算していたのか嬉しそうに笑うこの男が私は怖い。
だが、顔はイケメンなので恥ずかしい。
心とは裏腹に真っ赤になる。
惨めだ。
美少女であったら良かったが
ただのクソダサメガネ女が赤くなり牛丼にがっついてる姿は
どう見てもテレビで見る素人ドッキリ
【もしも目の前に王子様が現れたらどうなる?】
の検証番組みたいだ。
私はとりあえず一粒残らず平らげた。
そして水をごくごく飲んで一息つく。
栗生院くんも鰻重を平らげてお金を二人分払い店を出る。
「次はどこへ行く?」
「えっ!まだ行くの?」
学校帰りで牛丼を食べ終わった頃は
もうすっかり日も暮れている。
しかし彼はキョトンとして
「?まだご飯を食べただけだよ?ボーリングとかカラオケとかゲーセンとか行くんでしょ一般人は」
確かにそう言う夜遊びする高校生は多い。
「栗生院くんはいつも友達とそんな所へ行ってるの?」
「うーん、合コンに誘われることはあるよ?」
合コン!ぎゃあっ!リア充だ!
そりゃこんなドル顔のイケメンを誘い来ない女子はいないだろう!!
バカか私はっ!
「でももう、雪見さんが彼女だからそんなとこには誘われても行かないけどね、僕は誠実なので。
合コンに誘われても女の子には今まで手を出してないよ?」
とウルウルした目で
僕やってませんみたいな犬のように見つめてくる。
し、知らんがな!あなたの過去なんて!
「ああ、傷つくよ、その顔はきっと信じていないんだね?」
「信じてないというか私をからかうのが面白くてたまらないんでしょうね…」
「何で判ったの?」
と栗生院くんはびっくりしている。
私はバカだが人の気持ちに敏感な部分があるんだよね。
大体人の顔色見てるといくらポーカフェイス気取っててもなんとなくわかってしまうのだ。
「雪見さん…ねぇ…僕のこと名前で呼んでみない?
僕も下の名前を呼んでいい?考えてみれば付き合っているのに変じゃないか。苗字で呼び合うのは」
「いや…それはもっと打ち解けてからがいいのでは?
何しろ昨日の今日会ったばかりなんですが私達」
すると栗生院くんは
「…それもそうだね…ちょっと早すぎるかあ…残念…」
とそこで指を私の手に絡ませて
「では行きましょうお姫様!
きっと雪見さんは静かな所が好きだろうから
ここからは王子が連れてってあげますよ?」
と凄いクサイ台詞を言われる。
生まれてこの方私をお姫様などと言う人はいない。
まじか!こいつ!
しかしやはり恥ずかしくなり何も言えなくなる。
さっき牛丼屋の裏でたぶん悪いことしてただろうなって思うから騙されちゃいけないのにイケメンだから騙されるバカな女なんだよ私は!
ブサイクだったら良かったのにこいつが。
遠慮なく無視出来るのに。
そして高級車に乗り連れて来られたのが
イルミネーション光る観覧車だった。
横には巨大なホテルがそびえ立つ。
映画のワンシーンで見たぞ!!
現実にこんな所に来る日が来ようとは!!
また足がガクガクしてきた。
それを見てあろうことか栗生院くんは
軽々と私をお姫様だっこして観覧車に乗り込みお膝に私を乗せる。
あっという間で混乱して
「へぎゃ!」
と言う変な乙女にあるまじき声がでる。
いや、乙女ではない。
クソダサメガネ女のただの変な声だ。笑うところだ。
観覧車はゆっくりと動き始めた。
というかこれどのくらいで一周すんの?
いつまでこの体勢なのか!やめてくれ!
導火線の火がジリジリと引火しようとしてる!
「これ一周回るのに15分かかるよ」
そんなにか!15分もこのまま?
「あの膝から下ろしては…」
「くれないよ?」
とにこにこ顔で言われる。
やはり!こいつは鬼畜サイコだ!
「雪見さんは肌が綺麗だね…近くで見て気付いたよ」
「えっ?いやそんなことは…」
おい、やめろ私をからかうのは!
絆されないぞ!
甘い言葉を吐いてもこいつの正体は悪の戦闘員Eだしサイコのクソ金持ちだ。
「僕ね今日はとても楽しいよ!また来ようね?」
「ま…また…?」
「うん!いろんなところに行こう!
雪見さんが知らないものや僕の知らないものを二人で埋めていこう!」
うへえええ!だからクサイよ!
やめてくれえええ!
導火線がヤバイ!迫ってくる!爆発する!
男に免疫ない女子校生に
なんてクソ甘な台詞の連打攻撃してくるんだ!
ライフゲージが瀕死だよ!
復活のアイテム落ちてないのかよぉ!
それに緊張し過ぎで変な汗がでてくる。
このままではクサイ台詞どころか私の身体から
汗臭い匂いがこの密閉空間に充満しロマンティックどころか地獄の観覧車と化してしまう!!
もう観覧車乗りたくない!!
早く一周回ってください神よ!!
そして世の中の男性よ!
女子を観覧車に乗せる時はそういう配慮も考慮してくれないか!
「だいぶ上まで登ったね?
ほら見て下の人がゴミみたいだよ?
ここが巨大ロボの操縦室ならプチリだよ」
一気に冷めた。こいつやっぱりサイコだ。
仕方なく下を覗き込むと頰に柔らかいものが当たる。
いきなり過ぎてビックリし過ぎで私は
「ぎゃひぃっ!」
と頰を抑えて膝から飛び降り反対側の椅子まで遠かった。
ちょっと待てやり過ぎの不意打ちだ!
ほっぺにキスとか。
お前!昨日会ったばかりだっつーの!
何乙女にキュン死にフラグ作って殺そうとしてくるんだ?
「おや?ビックリさせたね?油断は禁物ですよ?ほらほら、おいでよ?」
とポンポンと膝を叩いて笑顔でにこりとする。
「いや…も、もうここで私は…」
「爆破しても誰が犯人かはちゃんと揉み消すからね」
あ、これ膝に乗らないと実家爆破しますとの脅しのオーダー入りました。
私はとりあえず静かに栗生院くんのお膝に戻った。
栗生院くんは後ろから私の首を抱いて動いたら絞め殺されそうだ。
「よしよし、良い子ですね雪見さんは」
と頭を撫でられた。
「あの…一応言っとくけど私はあなたより一つ年上だからね?先輩なのよ?」
と言うと
「あっそうですね、でも彼女に先輩呼びはちょっとなぁ…まぁ気にしないでください、そのうちもっと仲良くなったら下で呼ぶから」
とまた綺麗な微笑みを向ける。
うっ!イケメン酔いでクラクラして気持ち悪い!
「雪見さん?」
私は口を抑える。
このままでは汗臭いよりゲロ臭いに変わってしまう!
私はなんとか耐えて栗生院くんは優しく背中をさする。
ようやく一周しなんとか耐えきった私は偉い!
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