私はお別れを言う!②
「ほら、マルガは旅に行くといい...生きていたらこんな別れもあるから」
「でもぉ...ママがぁ...」
「ソフィアはマルガに旅に出る時に私の事が知られたら絶対にマルガは旅に出なくなるから知られたくないと言っていたんだ...結果的に知られてしまったがソフィアはずっとマルガから旅の話を聞きたいと言っていたよ」
「...でももう話せないよ...」
「そんな事は無いぞ?お墓はちゃんと作るし...それにマルガが今さっきまでやりたかった事はなんだ?ソフィアはマルガのやりたい事をやってほしいと言っていたぞ...?」
私がやりたかったことは自由な旅だ、立場にも何にも縛られない自由な旅がしたかった...その話はママにもパパにもした、何ならドロシーにもメリーにもした、それくらい私がやりたかった事だ
「...ほらマルガ...行くよ...」
「...うん...」
「マルガ!俺は絶対に生きる!だからちゃんと無事に帰ってきて旅の話を俺に聞かせてくれ!ソフィアもそれは望んでる...!」
「...泣きながらそんな事言われても...うん...分かった...」
「うるさいぞ...俺は泣いてないぞ...もう覚悟は決まっていたからな...だからこれは...ただの...汗だ!」
「...ぐすっ...皆...行ってきます」
正直こんな涙の見送りになるなんて思いもしなかった 幸せはずっと続くと思っていた 死を身近に感じたのはこれで二度目だ 一度目は自分なんだけど...私の時は何も幸せなんて感じなかった でも今日のママを見ているとちょっと分からなかった 自分が死ぬって言うのにどうしてあんなに安らかに笑えるんだろう 私はまだ何も分かっていない
ただ言えるのは...娘を想う母はとっても強いって事だけは分かった これは多分親側に回らないと分からない事だろう...
私はお城を出る...お城を出て歩いているとミツキが私の手を握ってきた どうしたんだろう...?
「...大丈夫?...」
「...大丈夫...とは言えないかも...うん...」
「...残念だったね...でもよかったね...ちゃんとお別れを言えて...」
「...うん...うん...」
「...それに死に目にも会えた...切り替えて...とは言わないけど...」
「...」
「...でもマルガはこの旅をずっと楽しみにしていたんでしょ?...だったら楽しまなくちゃ...今日は無理でも...明日から...明後日から...ね?...」
「...うん」
どうしてだろうなぁ...歩いているだけなのにどんどんぼやけてくるなぁ... 目から涙がどんどん溢れてくるなぁ... ミツキはなんでそんな目で私も見ているの? 私は大丈夫だよ?
「...ごめん酷な事言った...今日はルクロンの簡単な宿で泊まって休憩していこう...」
「...ぐすっ...ごめんね」
「...謝らなくてもいいよ?...」
やっぱりだめだなぁ、どんなに切り替えようと思ってももうママに会えないって思っただけで胸がズキズキして涙が止まらない...今日旅に出ようと思っていたのに...私は全然だめだなぁ...
◆◇◆◇
「...すいません...今から一泊お願いします」
「はいよ、銀貨3枚だ」
「...」
「部屋は一番手前だ...大丈夫か?」
「...大丈夫です..。ちょっと連れを休憩させたくて...食事は夜だけください...」
「あ、あぁ...」
部屋に入るとミツキは私の事を膝にのせて頭を撫でてくる...私そんな子供じゃないのに...
「...マルガが今どんな気持ちか分からないから...楽になるには...吐き出すのが一番だよ...?」
「...」
「...私には無理でもリーアも居るし...それに...誰も居ない所で吐いてもいいし...」
「...私ね...魔法でなんでも出来るって思ってたの...」
「...うん...」
「好きな場所にも行けるし...空も飛べるし...色んな物も作れるし...いつでも物を出せるし...人の事も治せるし」
「...そうだね?...」
「でも...ママが病気になっているって聞いて魔法をかけようとしても...全然回復してくれなくて...」
「...」
「...私の魔法って...無能なんだな...って」
私の魔法はどんな怪我は治せるかもしれないけど病気一個も治せないくらい無能なんだ 明らかに私は自惚れていた 仮に何かあっても魔法でなんでも出来るから大丈夫だって それなのに...
「...マルガは人より出来る事は多いかもしれないけど...神様じゃないんだよ?...なんでもは出来ないよ...」
「うん...」
私は本当にダメかもしれない でもミツキとリーアが私を支えてくれるから今日は気兼ねなく甘えさせて貰おう 明日から楽しく旅が出来るように
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