第2話

 人が次々と行き交う渋谷のスクランブル交差点。信号待ちする人は数知れず。青になると一斉に歩き出すその様子に初めて訪れる人は「この人達は、ぶつからないのだろうか?」と、不思議に思うだろう。

 そんな人混みの中を四人の男子学生が歩きながら会話をしていた。


「なぁ、お前らさ、この話し知ってるか?」

「は、何?」

「唐突だな」



 突然話題を振る短髪に片耳ピアスをした男子学生。その男子学生は「何かさ、幽霊関連だったけかな? そんな仕事を受ける店がこの渋谷のどこかにあるんだと」と、言った。



「なんだそりゃ」

「胡散くせぇ」



 四人の内の二人が話を間に受けていない中、その話を振った男性学生もまたそれを信じていなかった。



「だよなぁ~。俺も、ネトサしてた時にたまたま見つけたんだよ。そもそもさ、幽霊なんて誰が信じるかよ。なぁ、美琴」


 話を振った男子学生は、先程から一番端で黙って歩いている『美琴』という友達に話しかけた。美琴はハッとした様子で慌てて返事を返す。


「あ、あぁ! そうだな!」

「お前、さっきからボーッとしてるけど大丈夫か?」

「ん? あぁ、ちょっと考え事してただけだよ」



 美琴がそう言うと、建物側を歩いていた別の男子学生が「なぁなぁ、あそこのゲーセン行こうぜ!」と指をさしながら言った。

 ゲーセンの入り口にはガチャガチャが設置されており、数名の女の子達が懸命に何度もガチャを回している。


「あぁ~、タブったぁ」

「推しが当たりますよう……当たりますよう……」


 どうやら設置されているガチャは乙女関係の物らしい。念を込めながらガチャを回す人やその場でトレードする人達が居た。

 そんな彼女達の様子を見て男子学生達もガチャの前で「お。今、ラビュライブフェアやってるじゃん! やるしかないな」「お前、本当にオタクだな」とからかいながら話していた。

 そして、一人を除く三人は笑いながらゲーセンの中へと入って行ったのだった。

 美琴もその後に続くが、どうも浮かない顔だ。顔色も少し悪く見えた。

 美琴はゲーセンの入り口前で立ち止まると、ボンヤリとした表情で澄み切った青空を見上げ「幽霊関連の仕事を受ける店……」と、ポツリと呟いたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る