徒然なるままに

helvetica

文字

私の書いている文字は美しいですか。

それは、書写的な意味ではなく。

文学的な意味でも、また、違います。


あなたが今手にしているのが、一体何のデバイスかは私の知るところではありません。


携帯端末の可能性が高いでしょうが。


私はこの文字がプリントアウトされて、A4のコピー用紙の上にいる可能性を否定できません。


あるいは、私が近いうちに小さな洞窟を掘り、この文字を壁画として記す可能性さえ。


私はこの文字についてなんの関与もしていないからです。

それは、著作権であるとか、そういう事ではありません。


猿に時間を与えれば、偶然できうる文章に違いないのですから、法律を除いてどんな理屈で、わたしがこの文字に今後関与できるというのでしょう。


私の文字は明朝体なのか、ゴシック体なのか。


できれば、創英角ポップではないことを願うのですが。


もちろんフォントに限定した話をしているのではありませんが、一要素です。


そうですね、他は、たとえば。

私の文字が1文字ずつ解釈されるかどうか。


「字」をウと子という2字に解釈して、何か悪いことがありますか。


あとは。文字は文字としか認識されないとしたら。


私の文字はランダムに生成された文字列です。意味はありません。


と、わたしがはしがきに書いたとしたら。


この文字たちに意味があるとしたら、あなたの思い込みです。


私はこの文字列になんの意味もこめていない。


自己に言及する文字はしばしば崩れます。


そんなことは、大した問題ではありませんがね。


私はどうして大文字でなければならないの。


あなたはいつも小文字ですね。


まあ、別に私を小さく、あなたを大きく書いても、文句は言わないでしょうけど。


ちょっと、変、でしょう。


筆箱のチャックが布地をかんでしまいました。わたしは鉛筆を手に取れない。


私の字は丸文字です。


私の字は美しくないんじゃないかな。


私の字は右肩上がり。


私はHelvetica。あなたがなんと表示させようとも。


文字たちが私の手から離れたあとで。

美しいのかが、わからない。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

徒然なるままに helvetica @helvetica-b

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る