物語

今日はこの高校からたくさんの生徒が旅立ち、それぞれの道に向かって歩き出す日だ。


僕はここに三年間通った。


本ばかり読んで、友達もあまり出来なかった。


周りを見ると、校長と固く握手をしている生徒がいた。あのいつも険しい顔の校長も笑顔だ。その生徒は生徒会長などの役職についていたわけでもなく、特別に頭の良かったという生徒というわけでもなく、運動神経が良かったというわけでもない。


彼と校長の間にどんな物語があったのだろうか。


僕は知らない。


人が少ない廊下に行くと、同じクラスのあまり目立たない男子と、この学年で一番人気があった二人が一緒に写真をとっていた。


そして手を繋いで奥の誰もいない教室に向かっていった。


あの二人にはどんな物語があったのだろうか。


僕が一人で勉強していたテスト週間、夕日の綺麗な放課後。


何も知らない。


一つだけ言えるのは僕の物語はとてもつまらない。

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