195 バスの時間は飛ぶように過ぎ……別荘に到着!
「皆様。まもなく別荘に到着予定でございます」
「えっ!? もうですか!?」
シノさんの声に、俺は思わず驚きの声を上げた。
一年生VS二年生プラス姉貴でもう一戦、カードゲームをしたものの、俺が足を引っ張ってしまい、一年生チームが敗北。
「だから無謀だって言ったじゃん。ハルちゃんってば、意地を張らずにオレと一緒のチームになればよかったのに~♪」
とヴェリアスに笑われ、
「やっぱり、庶民だけあって、オルレーヌさんはわたくし達とは感覚がズレてますのね。味方なのか、邪魔する敵なのか……。判断に悩むほどでしたわ!」
とイゼリア嬢には呆れられ……。
イゼリア嬢にいいところを見せたいという俺の意気込みは、見事に空回りした。
むしろ、空回りしすぎて、すっ転んだ感じだ。
くうぅっ! この旅行で少しでもイゼリア嬢とお近づきになりたいのに……っ!
カードゲームの後は、ゲームマスターVS多人数のプレイヤーの対戦型のボードゲームで遊んだ。
ゲームマスターである姉貴が魔王役となったダンジョンに、勇者パーティーとなった俺達が挑むというゲームだったんだが……。
腐女子大魔王が魔王だなんて、そのまんますぎだろ、オイ!
と、ひとり心の中でツッコんだのは言うまでもない。
プレイヤーと違い、さまざまなスキルが使えるゲームマスターとはいえ、姉貴VS生徒会メンバー七人という不均衡極まりない人数構成だというのに、姉貴は追い詰められるどころか、逆に、俺達を容赦なく追い込むほどだった。
悪魔のように楽しげに微笑みながら、俺達をどんどんトラップにかけていく姉貴の手腕に、俺が背筋を凍らせて恐れおののいたのは言うまでもない。
それでも、なんとかみんなの力を合わせて姉貴を倒し、検討をたたえあっていたところでのシノさんの言葉だったので……。
まさかもう、二時間以上も経っているなんて、思いもよらなかった。
逆に言えば、それだけ夢中になって遊んでいたと言える。
シノさんの言葉を証明するように、ゆっくりとバスが停まる。
「ボードゲームはわたくしが片づけておきますので、どうぞ先にお降りください」
シノさんの言葉に甘え、姉貴を先頭に、ぞろぞろとバスを降りる。
街中よりも濃く感じる緑の木立ちの向こうに佇んでいたのは。
「わぁ……っ!」
レトロな雰囲気をたたえた白い
「以前はとある貴族の別荘だったそうでね。諸事情があって手放したのをホテル業者が買い取って改装したんだ。といっても、前の雰囲気は損なわないようにだけれどね。けれど、その業者も事業を広げ過ぎて立ち行かなくなって……。ちょうど売りに出ていたところを買ったんだよ。なかなか素敵な雰囲気の洋館だろう?」
何でもなさそうに言ってるけど……。
絶対これ、ぽんっと買えるもんじゃないよな!? おい姉貴! これを買うためにいったいいくらつぎ込んだんだよっ!?
いったいいくらしたのか、恐ろしくて聞く気にもなれない。
しかも、今回の合宿のためだけに買ったんだよな?
姉貴め……っ! 腐妄想のためなら、どんなことでもしやがる……っ! 我が姉貴ながら、恐ろしすぎるぜ……っ!
おののく俺をよそに、イケメンどもは平然とした様子で口々に洋館を褒めたたえている。
これだからセレブどもは……っ! お前らにとったら、別荘を買うなんざ、たいした買い物じゃないんだろ!?
庶民の俺からしたら、のんきに褒めてる精神構造が理解できね――、
「本当に素敵な洋館ですわ! こんな素晴らしいところに皆様と宿泊できるなんて……っ。嬉しいですわ」
「ですねっ! ほんと素敵な洋館ですよね!」
あっ、もちろん一番素敵なのは、輝くばかりのイゼリア嬢の笑顔に決まってますけど!
「さあ、ここで立ち止まっていても仕方がない。入ろうじゃないか。今年は女性ともいるからね、部屋の配置はわたしのほうで勝手に決めさせてもらったよ。ちゃんと、ひとり一部屋だからね」
そっか……。
イゼリア嬢と同室じゃなくて、残念なような、ほっとしたような……。
もし同じ部屋だったら、絶対に心臓がもたないもんな。
どきどきしすぎて、一時間も経たないうちに鼻血を噴いて昇天しちゃうぜ……。
「プライベートビーチは別荘の裏手だよ。せっかくの海だ。さっそく着替えて堪能しようじゃないか」
姉貴の言葉に、空気が揺れる。
つ、ついに……っ! ついに『キラ☆恋』本編では見ることの叶わなかったイゼリア嬢の水着姿をこの目で見られる日が……っ!
ふぉおおおおっ! もう想像するだけで、鼻血を噴きそう……っ!
さあ行きましょう! すぐ行きましょう! とっとと歩けイケメンども!
一分、一秒でも早く、イゼリア嬢の水着姿を見るために……っ!
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