第3話 ユニコーン王国へ、国王との感動の対面

 そして三日後。

 比呂貴たち一行とミカツ、ミソノがユニコーン王国に向かって旅経つ。しかし、いくら楽しいイベントとはいえ、こうもイベントが続くとか、これはどこぞのブラック企業も真っ青なスケジュール感であろう。

 ノンリミットを通行中はスピードを落として飛行し、安全を優先したこともあり、特に問題も無く四日程度でユニコーン王国に到着した。


「へえ。ここがユニコーン王国か。」

 比呂貴がボソッと答える。ファテマは状況を観察していた。

 どちらかというとドラゴンの国に近いような感じで、小規模な村を形成しているようであった。


 建物も一階建ての建物中心で、村の中ではみんな人の姿で生活しているようである。確かにこれではユニコーンが生活しているとは思えない。ビッツ達ホワイトドラゴンも勘違いするのも無理は無かった。

 そしておそらく村の外の森林地帯ではユニコーンも本来の姿で生活しているものもいるのだろう。その辺りもドラゴンの国と一緒だ。


 みんなは人の姿になり、そして村へ入っていく。

「ミカツ様、ミソノ様よ!」

「もしかしてあればファテマ様かしら? なんと愛らしい!」

「お二人はちゃんとファテマ様をお連れしたのね。凄いわ!」

 村人たちはひそひそと話をしていた。ふたりの人気の高さが伺えた。


「それでは皆さん、滞在中はこちらの宿へお泊り下さい。八人部屋ですがロキ様たちだけで使ってください。宿の店主にはすでに話は通っておりますので、食事などの要件などについては宿のスタッフに聞いてください。国王への謁見については確認が取れ次第、私かミソノがご連絡に来ます。」

 ミカツはそう言って、ミソノと一緒に出て行った。



 翌日、ミカツが宿に現れた。

「皆さま。おくつろぎ頂いていますか?

 国王への謁見が決まりました。明日の午前中になります。そして大変申し訳ないのですが、国王は病に臥せっております。なので、謁見にはファテマ様とロキ様のふたりでお願いしたいのです。


 そして、午後にはアポリウス様と会見して頂きます。こちらは皆さんで昼食を取りながら行えればと思います。また明日、九時ごろに私が迎えに来ますので皆さま準備をお願いします。それでは引き続きこの宿でお過ごしいただければと思います。

 他に質問はありますか?」


 ミカツと比呂貴は周りを見渡す。そして比呂貴は答える。

「特にありません!」

「そうですか。良かったです。それでは私は仕事がありますので失礼します。」

 そう言ってミカツは去っていった。去った後で比呂貴はビッツに言う。

「段取りってああやるんだぞ!」

 かなり嫌味を含めて言った。

「た、確かに………。悔しいですが見事なお仕事ぶりです。」

 ビッツはぐうの音も出ないようで一言だけ答えた。


 さらに翌日。ミカツが迎えに来てくれた。

「それじゃ行ってくるかのう。」

 ファテマはそう言ってアイリスの肩をトントンと叩いた。

「いってらっしゃい。お姉ちゃん。」

 アイリスも見送りをする。


「ちょっとロキ。また失礼なこと言うんじゃないわよ。」

 レイムも悪態をつきながらも見送ってくれる。

「ああ、大丈夫。レイムじゃないからね。」

 笑顔で答える比呂貴である。

「くっ。その笑顔がまたムカつくわね!」


 そして三人は国王の居城へ向かったのだ。

 王宮のような施設があるわけではないが、かなり立派な洋風屋敷のような二階建ての建物がある。他とは明らかに違う建物なのでここに国王がいるのは想像が付いた。そして比呂貴とファテマは寝室へ案内された。



 そしていよいよユニコーンの国王に謁見となる。



「このような姿ですまぬな。」

 ユニコーンの国王はベットの上から一言詫びを入れる。

「あなたが伯父上ですか? 確かに父上そっくりじゃ。」

 ファテマが感慨を沸き上がらせながら呟いた。

「おお、そなたがファテマか。確かに弟の面影があるのう。しかし、明らかに母親似であるな。なんとも愛らしい。こちらへ来てはくれるか。」

「伯父上!」

 国王の言葉にファテマはゆっくりと歩み寄りそして二人は抱き合った。感動の再開シーンにミカツと比呂貴はうるっと来ていた。


 その後、国王は比呂貴に言った。

「そなたがロキ殿か?

 姪を、ファテマを守ってくれて本当に感謝する。そして同胞の仇であるレッドドラゴンを討ち取ってくれたことも重ねて礼を述べたい。」

 国王は感謝の意を述べてくれた。


「いえいえ。めっそうもございません。これはミカツさんにも言いましたが、ファテマは私の家族も同然です。当たり前のことをしたまでです。それにファテマがいなければドラゴンを討ち取ることもできなかったでしょう。」

 比呂貴はかしこまりながら答えた。


「いやいや、お謙遜を。人族でドラゴンを討ち取るなんてそうは聞かぬ。まさにおとぎ話に出てくるロキのようではないか。英雄じゃ!」

 国王はさらに比呂貴を持ち上げる。

「いえいえ、本当にめっそうもありません。ありがとうございます。」

 比呂貴はお礼をもって回答する。


 そして国王は再びファテマに話しかける。

「そしてファテマよ。そんなロキ殿とドラゴンを討ち取ったりで実績も十分。また雰囲気からも聡明で潔白さが滲み出すようであるな。これは民もひと目で納得するであろう。

 女王はファテマしかおらんな。王位を継承してはくれぬかのう。これは国王というだけでなく伯父としてのお願いもある。」


「伯父上。その話ですが、儂は………。」

 ファテマが続きを言いかけたところでミカツが話に入ってきた。

「国王、ファテマ様。ご歓談中誠に申し訳ないのですがそろそろ時間でございます。」

「なんと? もうそんな時間か? 楽しい時間はなんとやらというがファテマよ。またいつでも会いに来てくれて良いからな。」

「伯父上。また寄らせて頂きます!」

 国王の挨拶にファテマが答えた。そしてみんなは国王の寝室を後にする。



 国王との謁見後、一度みんながいる宿屋に戻って来た。

「国王もとても具合がよろしかったです。ファテマ様に会えたお陰ですね。

 さて、この後のアポリウス様との会談ですが、ミソノが迎えに来る予定です。それまでは休憩致しましょう。」

 ミカツが説明してくれた。その後、アイリスがファテマに駆け寄ってきた。

「お姉ちゃんおかえり! どうだった?」

「いやいや、結構緊張したわ。しかし、伯父上に会うことが出来て嬉しい気持ちがあるな。」

 ファテマは伯父に会えたことによる喜びによる笑顔があった。ほっとしているようである。


「やっぱり王位の話は出たの?」

 と、アイリスのこの言葉が出るのと同時にミカツが迎えにやってきた。

「皆さま。お待たせしました。準備が出来ましたのでよろしくお願いします。」

 アイリスからの質問はお預けになり、そのままみんなはアポリウスとの会談に向かったのであった。


 そして比呂貴たち一行は、先ほど国王が居城していた屋敷ほどでは無いがかなり立派な家に来た。中に入るわけでは無く庭の方へ案内された。庭で立食形式での食事会が準備されていたのである。大皿が何種類もありいろんな食事が盛り付けられていた。

 そしてアポリウスがみんなの到着に対して出迎えてくれた。

「よく来てくれた。本日は皆を歓迎しよう。ささやかではあるが、食事を用意したので歓談しよう。」


 そして各々食事を始めた。

 その後すぐにアポリウスがファテマのところへやってきた。

「君がファテマかね?」

「ふむ。儂がファテマじゃ。で、アポリウスで良かったかのう?」

 ファテマも答える。


「なるほど。噂通りでとても愛らしく聡明のようだ。これは市中でも噂になるのも納得できる。

 すでにいろんな者から聞いていると思うが、早速王位継承について話をしておこうと思う。ファテマもその辺りは気にしておろう。」

「ふむ。その件じゃがのう。」

 ファテマは食べかけていた食事をいったん置き、そして話そうとしたが、アポリウスのほうが先にしゃべりだした。


「私の世間での評価は充分に理解しているつもりだ。ギャンブルに女などの遊びに浸っておるからな。

 だから学は充分では無いが、しかし、愚か者で無いつもりでいる。自分が王にふさわしくないことは自分でも良く理解しているつもりだ。ファテマが王位を継承するということであれば、私は喜んで自身の継承権を放棄しようではないか。

 というか、私はもっと遊びたいのでな。国王なんぞにはなりたくないと思っておるのが本音だ。これで晴れて兼ねてからの希望であった帝国への移住ができるというものだ。いやはや、私としても急に王位がという話で困惑しておったからな。」

 アポリウスはファテマの返事を待つことも無く言いたいことを言って、そしてレイムのところへ向かった。


「なっ!?

 アポリウスのやつめ、言いたいことを言い放って勝手に行ってしまいよったわ。急に王ということであれば、儂の方がよっぽど急じゃわ!」

 ファテマが愚痴をこぼして、そしてやけ食いを始めた。その後もアポリウスはファテマと会話を交わすことは無かった。


『うーん、なんだかんだで外堀を埋められてきちゃってるなあ。ファテマさん大丈夫かなあ?』

 そんなファテマを比呂貴は心配しながら見ていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る