ファテマが女王に!?編
第1話 ドラゴンの国から帰ってくるとそこには?
ドラゴンの国を出て五日後。ようやく久々となるダンの宿屋に到着した。
「にしても疲れたぁ。あれだけ頑張って空を飛んでいるのに五日も掛かるんだもんな。どれだけ遠いってもんだよ。感覚的には八千キロくらいはあるんではないかと思うよ。
そして、久々のダンの宿屋。家に帰ってきた感がめっちゃあるよなぁ!」
比呂貴はボソッと呟く。それはみんなにも聞こえており各々頷いていた。
ファテマとビッツはそれぞれ人の姿となり、いざ宿のドアを開けようとしていたところである。
「ただいま! みんなめっちゃ久しぶり!」
比呂貴は笑顔で元気よく挨拶を言いながら扉を開けた。そしてみんなもぞろぞろと宿屋に入っていく。
「よう。おかえり! めっちゃ久しぶりじゃねえか!」
ダンも笑顔で答えてくれた。そのダンの挨拶の後ろから男性の声と女性の声がハモりながら聞こえてきた。
「ファテマ様!」
「ファテマ様!」
「ん? その声はもしや!?」
ファテマはそう言いながら前に出てくる。
「はい。ミカツでございます!」
「同じく、ミソノでございます!」
ふたりは自分を名乗りながらファテマに叫んだ。
「おおおお! カツ兄ちゃん、ソノ姉ちゃん! ふたりとも無事であったか!!!」
そして三人は肩を抱き合いながら涙を浮かべて再開を喜び合った。そしてミカツはアイリスに向かっても挨拶をする。
「アイリス様もご健在で何よりです。本当に良かった。」
「こちらこそ。あの襲撃の中、ご無事で良かったです。」
アイリスも笑顔で答えた。
「ところで、他にも生き残りはおるのか? お主たちの父上とかはどうなった?」
ファテマは当然如く質問をする。これにミカツは答える。
「我が父は、我々を逃すために………。」
「そ、そうか………。」
ファテマがしょんぼりとしているところへ今度はミソノが言う。
「ファテマ様。そのように肩を落とさないで下さい。我が父のお陰で我々ふたりと他にも合計十一人が生き延びることが出来ました。」
「そうか! そうか。それは本当に良かった………。」
ファテマは喜びと悲しみの間で顔がぐしゃぐしゃになっていた。この取り乱しようを見るだけでファテマの気持ちが推し量れるようである。
本当にダンの宿屋に到着するや否やとんだイベントが舞い降りたモノだった。
そして、いったん間が出来たようでこのタイミングを逃さずに比呂貴が話に入ってきた。
「えっと、ファテマさん。すいません!
あと、立ち話もなんなんでみなさん座りましょうよ。」
「おお、そうじゃったな。すまんすまん。」
ファテマは自分を落ち着かせながらロビーにみんなと座った。
ロビーに全員座り、ダンにコーヒーなども頼みながら落ち着いて話を聞くことにした。
そして比呂貴が質問をする。
「えっと、すいませんが紹介頂けると助かるのですが。感動の再開に水を差して申し訳ないのは重々なのですが。」
「そ、そうじゃな。もう気が動転しておってのう。」
ファテマが言ったところで、ミカツが代わりに答えた。
「ファテマ様はこのままで。自分たちのことは自分たちで紹介させて貰いますので。
私の名前はミカツと申します。横にいるのはミソノと言います。ふたりは双子の兄妹です。そしてファテマ様は以前にユニコーンの国というか村くらいですが、そこに居た時にお世話をさせて頂いていたのです。」
ミカツは簡単に紹介をしてくれた。そしてだいぶ落ち着きを取り戻したファテマが補足をする。
「そうなんじゃ。ロキにも以前にユニコーンの国とエルフの国の話はしたじゃろ? 儂の父親にカツ兄ちゃんの父親が仕えておってな。それでその子供であるふたりは儂のことも面倒を見てくれていたわけじゃ。
儂とは本当の兄弟ではないが、でも儂は実の兄や姉のように慕っておるんじゃよ。」
「ああ、なるほどね。なんとなくわかって来たぞ!
それでファテマが生きていて、ドルクマンでゴールドプレートになってかなり有名人になったもんだから確認に来たというわけですね?
あ、申し遅れました。私は比呂貴と言います。みんなからはロキと呼ばれています。」
比呂貴が確認と遅くなったが自己紹介をした。
比呂貴の紹介にミソノが答える。二人はなんとなくバランス良く受け答えをしてくれるようである。
「紹介ありがとうございます。あなたがロキ殿ですね。あなたの名前はユニコーンの本国にまで届いています。もう、名前だけであればあなたのことを知らない人はいないんではないかと思われますよ。
それと、我らの宿敵であるレッドドラゴンを討ち取ってくださり感謝します。散っていった者達も少しは報われると思います。また、ファテマ様とアイリス様を救ってくださり重ねて感謝致します。本当にありがとうございました。」
「いえいえ、そんなお礼なんていいんです。こちらとしてもファテマとアイリスにはお世話になっているんです。ふたりとも私にとって不可欠な存在なんですから。」
比呂貴は答えながらも、さらにもうひとつ答える。
「そういや、こちら側の紹介が全員終わってませんでしたね。まずは、この女の子ですがレイムと言います。一応魔族らしいですね。」
「なっ、一応ってなんなのよ! ちゃんと魔族よ!」
比呂貴の適当な紹介にレイムがツッコミを入れた。
「まあ、レイムはこれくらいにしておいて、この白いローブの人がビッツです。えっと、驚かないで聞いて頂きたいのですが、彼はホワイトドラゴンなんです。」
「ドラゴン!?」
一応前振りをした状態で紹介をした比呂貴だったが、ミカツは立ち上がって叫び、過剰に反応をする。まあ、当然の反応かもしれないのだが。
一方、ビッツはというとビクッとなっていた。
「カツ兄ちゃんよ。まあ、落ち着いてくれ。一応、我らはロキの活躍のお陰でドラゴン達とは和解をしているんじゃ。万が一、ドラゴンが襲って来たとしてもロキが瞬殺してくれようぞ。そしてそこにいるビッツは和解の証(あかし)としてロキに仕えておるのじゃ。」
ファテマが弁明をしてくれた。
「そうですか。ファテマ様がそうおっしゃるのであれば。」
ミカツは一言漏らし、そのまま席に座った。そして入れ替わりでミソノは言う。
「えっと、一応我々としてファテマ様にただ会いにきたわけではないんです。ぜひとも聞いて頂きたいことがあるんですが………。
しかし、皆様はドラゴンの国から戻ってこられたばかりなんですよね。宿の店主より伺いました。なので詳しいお話は明日にしましょう。よろしいでしょうか?」
「ご配慮ありがとうございます。
いや、実のところもうへとへとでして、今にも寝ちゃいそうなくらい疲れているんですよ。」
特に空路に慣れていない比呂貴とレイムは今にも寝てしまいそうな勢いであった。
そしてこの日、比呂貴一行はダンの宿屋で軽く出前のようなモノを取り、軽くお酒を飲んで寝てしまった。
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