第11話 ドラゴン会議の開催だぞ!②
我もロキが戦ってるのは初めて見たけど本当にスゴイんだぞ! 確かにドラゴン族じゃ歯が立たないし、これは魔王クラスの強さなのだぞ!
我としてはロキに要望には出来るだけ応えてあげても良いと思っているけど、みんなはどうなのかぞ?」
初老のウィングドラゴンが答える。
「いやはや、こんな戦い見たことがない。まさか人族にこのような者がおるとはな。ルカス殿が言う通り魔王クラスの強さ。我々ドラゴンで一対一の勝負では話にならないであろう。
そしてロキ殿の要望には応えてやりたいという気持ちはある。しかし、現実問題として無理であろう。というのも、すでに話に出ておるかもしれぬが、ここ数千年平和な時代が続いたおかげでドラゴンの総数が大幅に増えておる。それらをすべて統率するのは不可能じゃ。どうしても連絡が行き届かなかったり、もしかしたら造反者も出てくるであろう。
もちろん出来る限りロキ殿の要望は全ドラゴンに行き渡らせるようにしたいとは考えておる。我々も命は惜しいのでな。
それでもし、ロキ殿に危害を加えようとするドラゴンがいるのであればロキ殿において処分して頂いて結構。自分の命を守るために戦うのは当然であるのでな。この内容はドラゴン会議での決定事項としようではないか。」
「ロキ、おっかない。私たちもその決定に従う。」
アースドラゴンが答えた。ドラゴン会議が始まった時はとても不機嫌そうにめんどくさそうにしていたが、今はすっかり怯えていた。
そして他のドラゴン達もウィングドラゴンの提案に承諾した。
「うーん。ぶっちゃけ今となんら変わらんってことじゃん。こうならないように乗り込んできたんだけどねぇ。」
そう言ってロキはドラゴンの面々を見廻す。恐縮しているドラゴン達である。
「でもまあ、話を聞いていると確かにドラゴン達の言う通り、たくさんのドラゴンを制御できないっていうのも薄々感じてたのでしょうがないとも思ってる。
まあ、ドラゴンのみなさんにオレのことを理解してもらったのは大きいかな。ウィングドラゴンさんの言う通り、オレたちに危害を加えるドラゴンは遠慮なく処分させて貰うね。あとまあ、出来る限り自分たちのことは伝えておいてね。
ロキとその仲間に危害を加えようとするやつは容赦なく惨殺するってことを!」
ロキは念を押すようにドラゴン達に言い放った。
「ロキ様、よろしいでしょうか?」
ここにきてピュールが比呂貴にお伺いを立てる。
「ん?」
「えっと、先日の会談の話題に戻ってしまうのですが、このホワイトドラゴンの国と不可侵条約的なものを結んでいただけませんでしょうか?
少なくともホワイトドラゴンはきっちりと統制を取るつもりです。もちろん、我々にはロキ様に敵対の意思は微塵もありません。なんでしたら我々ホワイトドラゴンから人質を刺す出すことも厭いません。」
ピュールが比呂貴に対して懇願した。
そしてここにいるみんなはこれに承諾して円満に終わるものだと思っていた。
比呂貴を除いて。
「え? これを今言う? ダメダメダーメ! 絶対ダメ! タイミングも内容も最低最悪だよ。ってか、こんな要望出す前にまずオレに言うことあるでしょうが!?」
比呂貴は全力で拒否してピュールに不満を漏らす。
「なっ、何か不手際がありましたか?」
ピュールが半ば泣きそうな表情になっていた。周りもびっくりして比呂貴に注目した。
比呂貴はちょっとキレ気味で話を始めた
「マジもんで気付いてないの? ピュールさんよ? あなた最初なんて言ってたの?すべてのドラゴンに調整を掛けてオレたちに攻撃をさせないようにするって言ったんだよ?
で、結局それができないってことがこのドラゴン会議で証明されたわけだ。さらにこのドラゴン会議だってそうだよ。これはルカスのお手柄であってどっちかって言ったら最初拒んでたよね?
ぶっちゃけお宅ら何もやってないじゃん。やっていないどころかどちらかというと妨害気味でしょう。オレなんか戦闘までして実力を示したよ?
それなのにこの話題をスルーして自分たちは要望なの? いやいやいや、それはムシが良すぎる話ってもんだわ。まずは自分たちの非を認めてオレたちに詫びるのが先じゃないの?」
「も、申し訳ありませんでした。」
ピュールは立ち上がって深々と頭を下げた。この謝罪でいったん言葉を遮られたが比呂貴は話を続ける。
「実際のところどうなの? これワザとやってない? だとしたら信用問題だぜ?
まあ、無意識だったとしても能力に疑問を持つけどね。ってか、これまでのやり取りから感じるのはおそらく無意識なんだろうけどね。
で、その無意識っていうのも普段人間を格下と認識していて交渉と言いつつも命令に近いような話し合いをしてたんじゃないの? ちなみにオレのいた世界ではこういうのはれっきとした犯罪行為なんだよねぇ。自分の優位性をカサにして交渉するってことは。
普段からそんな交渉をしているからこんな状況で要望を出せるんだろうね。こういう場面でもぜんぜん悪いとは思って無さそうだし………。」
「い、いえ決してそのようなことはありません。」
ピュールは即座に否定する。
「ここはすぐに否定して貰わないと困るけどね。
まっ、今の状況がまさにオレの言ったことを示してるわけだ。こんな状況で何を信じて約束事ができようか?」
比呂貴の言葉にピュールは言葉を詰まらせる。さらに空気感もとても重くなっている。そんな中、ピュールは精一杯の胆力を込めて震える声で話を入れる。
「た、確かにロキ様の言う通りで反論の余地もありません。それで我々はどのようにしたら信用して頂けるのでしょうか?」
「うーん。今は何もしなくてもいいよ。どちらにしてもすぐには無理だよね? こういうことは少しずつ信頼を積み上げていくものでしょう?
少なくともオレと話をするとき、まあ、オレだけじゃなくてもそうなんだけど、誠意をもって会話して欲しいね。誠意って言うのは裏表なく正直に話すことだよ。まあ、時には裏があっても良いと思うけどそれを正直に正確に伝えることだよね。
裏があってそれを示してくれるのは逆に信頼されている証拠にもなりやすい。その裏がこちらとして対応可能なら喜んで協力もできるからね。そうやって信頼関係を築いていくものだと思うよ。」
比呂貴は説明してくれた。
「はい。承知しました。
このタイミングで言うと火に油で誠意が足りないことになってしまうかもしれませんが、やはり我々ホワイトドラゴンからひとり差し出したいと考えます。意図として正直に言いますと、最初と同様で監視と人質となります。」
ピュールの言葉にビッツが席を立って比呂貴の近くに来た。
「なっ、ビッツかよ!」
比呂貴は当然のことくツッコミを入れる。
その後もピュールは話を続ける。
「ビッツは言葉足らずでよくドジを行ってしまいますが、しかし、我々の中でもとても優秀な諜報員なんです。なのでホワイトドラゴンを見て頂くにはとても良い人材です。ビッツの働きによってホワイトドラゴンの評価に繋げて頂きたいです。まあ、ドジな部分は目をつぶって頂きたいですが。」
「へえ。ホワイトドラゴンの代表だなんてビッツめっちゃ高評価で信頼されているんだね。まあ、オレはドラゴンが仲間になってくれたら色々と役に立ってくれそうだ。特に他のドラゴンからちょっかい出されたときもまずはビッツに話をしてもらうことができるしね。ちなみにみんなはどうかな?」
比呂貴は同意しつつもみんなに尋ねた。急に比呂貴に話を振られてお互いに目を合わす女子三人である。
「きゃ、キャラ被りが………。」
レイムはそれだけ言って眉間にしわを寄せている。自分に発言権が無いことは理解しているようである。
続いてファテマが答えた。
「儂はアイリスが良いなら良いと思うぞ。
根本的に、やはりドラゴンそのものは好きになれそうにも無いが、ビッツに関しては愛嬌があるのでな。あまりドラゴンを感じさせない。
あ、しかしあれじゃぞ! 空を飛んでの移動についてはビッツに乗らんからな!」
「私も良いと思う!
お姉ちゃんと一緒で私もドラゴン自体は好きになれそうにないんだけど、でもドラゴンが仲間でしかも実質はロキの下働きだしね。凄く役に立ってくれそう。
それに私は今、苦手なものだからってそれを避けて通りたくないのもある。出来ないことは少しずつ出来るようになりたい。もちろん出来ることについてはもっと出来るようになりたいからね!」
アイリスは力強く答えてくれた。
「ふむ。じゃあ決まりだね。これからよろしく頼むよ。ビッツ!」
比呂貴が言った。
「はい。精一杯頑張ります! どうぞよろしくお願いします!」
ビッツはそう答え、そしてみんなに握手して回った。
そして今度こそ円満に会議が終わろうとしている。ルカスが会議を締める。
「うんうん。とりあえずロキの実力も測ることができ、ドラゴン族とも敵対することは無くて良かったぞ。
まあ、一部ロキには不満が残る結果かもしれないけど、そこは今後ビッツに頑張ってもらうことにして大成功に終わった会議だったかな?」
ルカスはそう言って周りを見回す。ドラゴン達は頷いている。
「じゃあ、本日のドラゴン会議は終了とするぞ!」
ルカスは高らかと宣言した。
会議は終了したが、ドラゴン達は雑談を始めてしまったようだ。何だかんだで久しぶりに会うドラゴン達でそれなりに仲も良さそうである。
比呂貴たちとビッツはそんなドラゴン達を置いて、そして会議室を後にした。
その後、比呂貴はビッツに言う。
「今日はもう中途半端な時間だしこの国を出るのは明日にしようか? 宿屋は今日も借りれる?」
「はい。それは問題ありません。手続きしておきますね。あと食事の準備もさせて貰います。」
「うん。それはよかった助かるよ。じゃあ、ビッツは明日からオレたちと合流ってことにしようか?」
「え? どういうことです?」
「え? って、ビッツはここに家族がいるんでしょ?
しばらくは帰ってこれないんだし、今日くらいは家族と過ごせばいいじゃんってことだよ。」
「わぁ。ロキ様! ありがとうございます! ありがとうございます!」
ビッツは二回お礼を言って五回くらい九十度の礼をした。
そして比呂貴たちは宿屋に戻って来た。
「ロキィィ!」
戻って来るや否や、アイリスが比呂貴のところへ行って、そしてポカポカと叩く。
「ちょっと、イタイイタイ! どうしたの?」
「やっぱりロキはスゴイしズルい! あとカッコよかった! くそう!」
「え? ああ、確かにドラゴンとの戦闘ではしてやったりだったね。溶岩ボールは今度教えてあげるよ!」
「うん。それはもちろん教えてもらうよ。
じゃなくて、私が言ってるのは会談の最後の方。戦闘が終わってピュールから不可侵条約の要望が出た時、てっきり引き受けるのかと思ってたよ。あの時の雰囲気はもう円満に解決したって雰囲気だったじゃん。それなのにロキったら真っ向から全否定なんだもん。拒否するからビックリしちゃったよ!」
「ああ、そっち?
まあ、会議の時も言ったけどそういうこと。あれをあのまま承諾はしちゃダメなやつだよ。こっちにも能力が無くて、ドラゴンの言い成りで良いということになっちゃうからね。」
「うん。私も最初はぜんぜんロキの意図することがわからなかったけど、でもロキが話を進めていくなかで本当にロキの言う通りだって思ったよ。またしてもぜんぜん気が付けなかった!
ううう、悔しい! くそう! 悔しい! でもスゴイぃ!」
そう言ってアイリスはまたポカポカとロキを叩くのであった。
そして叩かれながらもロキは答える。
「まあ、オレは仕事でほぼ毎日こういうことばっかりしてたんだよ。十年くらいはね。オレだって最初はぜんぜんわからなくて今のアイリスのような状況だったから。
あとさ、アイリスだって会議の中でドラゴンを凹ましたじゃん! もうコツは掴んでいるはずだら、あとは場数を踏んでいくだけだよ。だから焦んなくていいからちょっとずつやっていこうよ!」
比呂貴は言う。アイリスは比呂貴の胸に顔をうずめながらも抱き着き『くそう!』とずっと呟いていた。
そして翌日。宿屋の前にビッツも含めて集まった。ピュールとルカスも見送りに来ていた。みんなはお互いに挨拶を交わして別れを惜しんでいた。
そしていよいよ比呂貴がみんなに言う。
「じゃあ、ダンの宿屋に帰りますか?」
そして来たルートを使ってそのままドルクマンへ、そしてダンの宿屋に帰るのであった。
その帰った先には客人がいたのである。
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