第10話 ドラゴン会議の開催だぞ!①
そして五日が経ち、いよいよ大本命となるドラゴン会議が開催されることとなった。
ちなみに前回のドラゴン会議はルカスの再生の時に立ち合いのために開催されたのだとか。なので現ルカスでは初めての開催となる。これはビッツに教えてもらった。
ピュールとの会議に使用した大会議室で開催されることとなった。ドラゴンが集まっているがみんな人間に変身していて、さらに似たようなローブを着ていることもあり誰がどの属性のドラゴンかはわからない状態である。
そんな状態の中ではあるが、ルカスからドラゴン会議の開催が宣言される。
「やあやあみんな! 今日は集まって貰ってありがとうぞ!
ということで、我ルカスの名に於いてドラゴン会議を開催するぞ! 今日の議題はそこにいる人族のロキから話を聞くことで、世間ではドラゴンスレイヤーと呼ばれていて我も注目する人族ぞ!
さて、ロキよ。今こそ思いを、目いっぱいぶつける時ぞ!」
ルカスはそう言って一瞬の間が出来てしまう。
「って、結局のところ全部オレに丸投げかい! 無茶ブリにもほどがあるわ!」
比呂貴は思わずツッコミを叫んだ。しかしその後は挨拶と説明に入る。
「えっと、ルカスよりご紹介を預かりました。みんなからはロキと呼ばれています。本日はお忙しい中、集まって頂きありがとうございます。
それで要件は、まあ、ホワイトドラゴンとの会議では散々言わせて貰ったんですが、要約すると、そこにいるオレの大切な仲間であるアイリスなんですが、完全属性のせいで幼生のドラゴンに狙われやすいんです。ぶっちゃけやめて頂きたいというのが要件です。」
一瞬、間が出来たがドラゴンのひとりがしゃべり始める。
「というか、人族ひとりに後れを取るとはどういうことなんだ? 滑稽すぎてドラゴン族の恥さらしもいいところではないか。」
この言葉に反応するドラゴン。恐らくレッドドラゴンであろう。
「ふん。好きにほざくが良い。
我々としても子どもがやられたのだ。本当であればこちらが報復をしたいと考えているくらいである。」
その二人の会話に品格のある初老のドラゴンが割って入った。
「そもそも他種族を襲うなんて真似をしているのはそこの赤いのと青いのだけじゃないのか?
少なくとも我々はそのような下品な真似はしておらん。ドラゴンとしての品格を重んじているからな。恐らく地竜も空竜もそうじゃろうて?」
「うん。そんなめんどくさいことはしないぞ? よほどこちらにちょっかいを出してこない限りね。
っていうか、なんでこんなことで呼び出されないといけないんだよう!」
とてもめんどくさそうに答えるドラゴンである。無理やり連れてこられたのであろうかとても機嫌が悪そうだ。
そしてもう一人のドラゴンも頷いていた。このふたりが地竜と空竜であろう。
そして初老のドラゴンがまたしゃべり始める。
「まさに地竜のいうとおりじゃわい。ルカス殿の呼びかけなのでしょうがなく来てみたものの内容がこれなのか?
察するに赤いのが何やらそこのロキとやらに後れを取ったことは見て取れるが、しかし、それでもなぜ我々がたかだか人族の言うことを聞いてやらねばいかんのじゃ?
これは如何にルカス殿の言うことであっても納得のいく説明を要求したいところじゃな。」
「それは私から説明致しましょう。」
その問いにはピュールが説明をしてくれた。
「そこのロキ様はドラゴンスレイヤーのふたつ名で呼ばれており、その異名に嘘偽りはなく、もはや我々ドラゴン族では一対一の戦闘で歯が立たないでしょう。それに次期魔王と名高いあのミダマ様とも戦闘を行い退けた実績もあります。」
「ミダマ? ああ、確かにその魔族の名前は最近よく聞くな。」
初老のドラゴンが答える。
その後、恐らく会話の流れからレッドドラゴンと思われる者から話がされる
「それでは実力を測れば良いのではないですかね? 我々ドラゴンがその人族の言うことを聞くに値するかどうかを。
まあ、我々はすでに後れを取ってしまっているからね。ここはせっかく武闘派でいらっしゃるブルードラゴン殿がいるので絶好の機会ではないですかね? まさか、ブルードラゴン殿が人族に後れを取ることは無いでしょうから。」
物凄く含みのある言い方で煽るレッドドラゴンである。
「ふむ。まあ、赤いのに言われてというのは癪だが、実力を測るということに関しては全くもって異論無しだ。我々を従わせたいのであれば力で、我々よりも強く優れているということを示せば良いだけのこと。とても簡単な話であるな。
ちなみに我々はアリ一匹に対しても全力で仕留める。まあ、間違っても後れを取ることは無いであろうね。」
レッドドラゴンからの挑発に乗りながらも冷静に対処する、これに答えるのはもはやブルードラゴンであろう。
「確かに私も未だにその白殿の言うことを真に受けるわけにはいかないところ。実際にこの目で見てみたいものであるしな。」
初老のドラゴンは恐らくウィングドラゴンであろう。彼も実力を見せることで納得しようとしている。
そんな状況をずっと見ていた比呂貴たち一行。ここでようやく比呂貴が声を出す。
「えっと、ずっと放置プレイでしたが、まあ、それは良いとしてなんだか戦闘する雰囲気ですか? 結局こんな落ちということですか………。
でもまあ良いですよ。せっかく全属性のドラゴンの皆さんがいらっしゃるので私の実力をお見せしますよ。それはもう惜しみなくね。それで私と仲間に手を出すとどうなるのかその身をもって感じて下さい。」
そして比呂貴たちはビッツに乗り国の外へ出て見晴らしの良い河原のところへやってきた。当然の如く他のドラゴン達も竜の姿になりいっしょに飛んで来ている。その後もブルードラゴンは元のドラゴンの姿でいて、いつでも準備OKと言ったところであった。
そしてブルードラゴンは比呂貴に言う。
「さて、ハンデとして私は空を飛ぶことを禁じよう。さあ、どこからでも掛かってくるが良い!」
そしてブルードラゴンは大きく翼を広げた。
このブルードラゴンの言葉にて戦闘が開始された。
「それはありがたい。空に飛ばれたら多少厄介でしたからね。じゃあ、遠慮なく行きますよ。」
比呂貴はそう言ってブルードラゴンが大きく広げた翼の片翼を狙って、今では得意となったかまいたちを発生させた。
ウォーーーン!
最初のかまいたちに比べると威力も精度も段違いである。鈍い空気を切り裂く音とともにドラゴンの片翼の薄いところに三本の筋が入り切り裂かれたのである。そして激しく血しぶきが吹き上がる。
「なっ? アースドラゴンほどでは無いにせよ、このドラゴンの翼をこうも簡単に切り裂くとは!?」
ブルードラゴンは自分の翼を見ながらびっくりしていた。
「いやー、本当はもっと深く傷を入れるつもりだったんだけど、やっぱりドラゴンは硬いねぇ。」
比呂貴は苦笑いで言う。
「ふっ。流石にでかい口を叩くだけあってなかなかやるではないか。それではこちらからも攻撃をさせて貰うぞ。せいぜい死なないようにはしてくれよ!」
ブルードラゴンはかなりの小物感溢れるセリフを吐いていた。これはフラグを連想させる。そして野球のボールほどの氷の球を多数発生させ、それを一気に比呂貴に向かって発射する。そのスピードは速く、頭に当たれば間違いなく吹き飛ばされるであろう。発射後はさらに大きな氷の球をもうひとつ発生させそれも比呂貴に向かって飛ばしてきた。
しかし、その攻撃に対して比呂貴はまったく避ける気配もなく仁王立ちで突っ立っている。
「ガハハハ! 流石に観念したか?」
ブルードラゴンの言葉だったが、比呂貴がニヤリとする。
ドコドコドコ!
氷の球は比呂貴に届くことは無く、直前で何かにぶつかって砕けてしまう。
ボコッッ!!!
壮大な破壊音を立て数個に砕けて比呂貴の周りに散乱していた。大きなアイスボールでさえも比呂貴に届くことは無かった。
「なっ!? バリアか何かか?」
ブルードラゴンが目を丸くする。
「えっと、こんな仕掛けです。」
そう言って比呂貴は空中でトントンとする。すると比呂貴の前に壁が現れた。
「鋼鉄の壁を錬成していました。それで光の加減で見えないように工夫をしていたんだけどね。さっきの攻撃だけど、元がただの氷なら相当工夫しないと鋼鉄の壁は破壊できないよね。
ってか、よく見たらベコベコになってんじゃん!?
うわぁ。流石はドラゴンの攻撃だよね。こんな鋼鉄でさえベコベコにしちゃうんだからね。流石だよ。こんなんまともに喰らったらただじゃいかないね。」
お互い一ターンずつ攻撃を交わし、ロキはノーダメージに対してブルードラゴンは片翼を切り裂かれていた。
他のドラゴン達はこのような結果になることなど全くの想定外でざわざわとしているようであった。
「おっと、お互いに攻撃を交わしたということで、じゃあ二ターン目に行きますかね?
こちらから失礼しますよ!」
そう言って比呂貴も野球のボールほどの球を作っていた。ブルードラゴンとは逆でファイアボールである。
それをブルードラゴン対して発射する。そのスピードは先ほどのアイスボールよりは格段に遅いようである。
「はっ? なんだそのへなちょこファイアボールは? 避けるまでも無い。跳ね除けてくれよう。」
そう言ってブルードラゴンは無傷の翼の方でファイアボールを跳ね除けようとした。
「ギャーーーーー!」
ブルードラゴンは悲鳴を挙げる。払い除けたファイアボールはドロドロの液体状であったため、ブルードラゴンの翼にまとわりつく形になった。そしてその液体はドラゴンの翼を溶かしていたのであった。
「なっ、何をした?」
「いえね、このファイアボールは普通のじゃないってだけですよ。厳密に言うと溶岩ボールです。あ、溶岩はちょっと正確じゃないね。純銅を液体状になるまで溶かしたものです。なので、三千度近くありますね。
しかし、これもまたドラゴン。なんて硬いんですか? 自分的にはもっと燃え盛るんじゃないかって思ってたんですけどね。翼が溶けただけでしたね。いやはや、これだからドラゴンってやつは………。」
比呂貴はドラゴンの硬さに呆れつつも淡々と説明をしてくれた。
ここでいったん間が出来てしまったが、引き続き比呂貴が話し出す。
「うーん、どうだろう。オレもドラゴンに近いと思う。レッドドラゴンの生き血を飲んでスキルに目覚めているのもあるしね。ドラゴンとの戦闘はこの上なく相性が良いんだろう。オレとしては。
そもそもドラゴンの攻撃って物理的なものばっかりでしょう? 魔法だって物理的なものばかりじゃん。まあ、その物理的攻撃の最高峰がドラゴンの攻撃なのかもしれないけど。
で、オレにはそんな物理的な攻撃は効きにくいよ。この世界もオレのいた世界と同じ物理法則をしている以上ね。まあ、手を放したリンゴが地面に落ちていく世界である以上、ドラゴンじゃあオレには勝てないね。そういう意味だとオレがドラゴンスレイヤーって呼ばれるのはピッタリだね。
そうだな。オレを倒そうとするんだったら精神的攻撃の方が良いのかもしれないね。オレの居た世界は逆にそういうのはなかったからね。今のところ対策とかも不十分だよ。実際に食らってみないとわからないからね。ホントはレイムがチャームを使えたら練習になったんだけどなあ。」
そして言ってドラゴン達を見回す比呂貴。ドラゴン達は比呂貴の空気感にすっかり飲み込まれていた。さらに比呂貴が話を続ける。
「えっと、一応言っておくね。
理論的にはこの世界を滅ぼせるほどの能力はあると思う。まあ、そんなことをしたらオレ自身も死んじゃうからやらないけどね。
あと、まだまだ魔法は研究中なんだけど、ドラゴンや魔族に対しても有効な魔法は考えている。時には瞬殺する方法だったり、或いは見せしめのためにあえて残虐に惨殺する方法とかね。タイマンだったり複数相手だったりとかもね。
で、どうするよ? このまま続きする?
流石にこのままやり合えば、オレも大怪我する可能性もあるけど、間違いなくあなたの命は貰うことになるけどね。見せしめに惨殺ショーでもやりましょうか?」
比呂貴はしれっと言い放った。
「なるほど。お主の実力は良くわかった。ここは負けを認め引くことにしよう。」
ブルードラゴンはバツが悪そうに言った。レッドドラゴンはざまぁないなという表情をブルードラゴンに向けながらも、比呂貴の戦いぶりに目を見張っていた。
すでに比呂貴とドラゴンでは圧倒的な実力差が付いていた。さらに加えて演説めいた語りかけもあり、比呂貴の完全勝利であった。
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