第9話 れ、レイムのお母さんって!?

 部屋に戻り一休みを取っていた比呂貴たち。比呂貴はアイリスに興奮気味で言う。

「アイリスアイリスぅぅ!

 さっきのアイリスってばめっちゃスゴイやん。あの雰囲気の中でドラゴンに対してグイグイ攻め込んで行くんだもん。オレびっくりしちゃったじゃん!

 それに内容もオレが考えていたことをそのまんま言うんだもん。ドラゴン達もアタフタしてたじゃん!」


「もう、めちゃくちゃ緊張したんだからね。まったくもう。ってか、ロキっていつもあんな緊張することをずっとしてたんだね。ううう、今になって足がガクガクしてきちゃったかも。

 それにまあ、もともとは私とお姉ちゃんの話だしね。

 昨日、話してたやつで話題を逸らしているのかなって感じちゃったんだよね。だから聞いちゃった。それよりてっきりロキが質問するんだと思ってたんだけど、ぜんぜんその気配が無かったじゃん!」


「ああ、それはごめん!

 確かにアイリスの言う通りで、ピュールは仕事をしてくれるって言うけど、具体的な方法論はぜんぜん説明してくれなかったよね。その間に攻められたらどうするっていうのは当然の疑問だよね。

 向こうが気付いてないのかワザとやってるのかはわからなかったんだけど、だったらここはあえてボカシて隙を作っておいて、今後、問題が起きた時にこちらが上手く解釈をして責め立てる材料にしようかと考えてたんだ。」


「ん!? ってことはもしかしたら余計な事しちゃった?」

「いやいや、ぜんぜんそんなこと無いよ。わからないことがあれば聞く。これは会議じゃなくても大前提じゃん。むしろ、この場合はアイリスの方が正攻法だね。それにドラゴン達に対しても誠意ある対応だよ。


 逆にオレは性根が腐ってるからちょっとでも隙があるとそこを徹底的に叩く癖があるからね。まあ、職業的にしょうがなかったところがあるんだけどね。しょせんは言い訳かもしれないけど。

 でも、アイリスだったらもうちょっと会議や会談の経験を積んで慣れてきたら、交渉事を任せられるかもしれないね。その時になったらよろしくね!」


「もちろん、私もロキみたいに活躍したいよ!

 でもでも、ロキってばほんとにスゴイ魔法を使えたり、さっきみたいに知略に関して会談もできちゃうし、ひとりでいろいろとなんでも出来ちゃうんだもん。ホントのホントにズルいよ! まあ、純粋にスゴイと思ってるけど!」


「いやいや、なんでもひとりでは出来ないよ!

 以前のドラゴンの戦闘の時だって、アイリスが一体のドラゴンを引き付けて囮になってくれたし、オレは空飛べなくて、そこはファテマにお願いしているし、レイムだって基本はポンコツだけどそれでもかなり役に立ってくれているからね。ひとりでなんでもやろうとは思ってないよ。」


「うーん。そう言われたらそうなのかもしれないけど、でもでも、ロキはいろんなことをやれる能力があるじゃん!

 私だって魔力は強いからいろんな強い魔法を使いたいし、もっと勉強して知略的な会議や会談をしたいんだよ! ロキみたいに!」


「うんうん。それ昨日からだけでも何回も聞いてるよ。今、アイリスは成長したい欲求が強いんだよね。その気持ちがあればすぐになれるよ。焦らないで!

 さっきも言ったけど、その時がきたらアイリスにもお仕事してもらうからその時はよろしくね!」

 そう言って比呂貴はアイリスの頭をポンポンと撫でた。アイリスはというと尊敬と嫉妬のまなざしで比呂貴を見ているのであった。


「ところでレイムにも聞きたいんだけど。」

 比呂貴はおもむろにレイムに話を振った。

「え? なに急に? それより、ロキがアイリスちゃんとイチャイチャしてんのが癪に障るんだけど。イライラMAXだよ!」

「あー、ハイハイ。それはまあ置いといて。」

 レイムのイライラには適当にスルーして比呂貴は話を続ける。


「ルカスなんだけど、レイムのお母さん。えっとアメジストさんだっけ?

 を、知っているみたいなんだけどどんな関係なの?」

「え? そんなの私だって知らないわよ。私、ルカスとは初めて会ったんだし。あ、ルカスは私が生まれた時に会ったって言ってたっけ? でもそんなの私覚えて無いし。」

「そっか。まあ、そうだよな。でもブラックドラゴンのルカスだよ? スキル開放がどうのっていってたけど、いったいどんな用事があるっていうのかな………。」


「あ、もしかしたら不倫相手かもね。ママもサキュバスだしルカスもあれだけ可愛いからね。ああ、でもそれって犯罪だね。ってまあ、それは冗談として、冗談じゃないかもしれないけど………。

 あっ! もしかしたらもうひとつあるかもしれない!? うちのママって魔王だからそれでなにかと用事があるのかもね。さっきルカスも魔族がどうのって言ってたし。」

「確かに闇を司りとか、魔族の暴走を食い止めるとか言ってたよね。なるほど。そりゃあ魔王だったら用事はあるわな。


 ん!?」

 比呂貴がボソッとツッコミを入れるのだが、一息間が出来てしまう。そして、



「魔王!?」

「魔王なの!?」

「魔王じゃと!?」



 そして三人でハモりながら叫んだ。

「え? そうだよ? 言ってなかったっけ?」

 レイムは何を今さら的な感じでシレッと言い放つ。

「ぜんぜん聞いてないわ!」

 比呂貴が叫んだ。


「えっと、今、魔王は三人いるみたいだけど、その中では一番弱いんだけどね。でもでも魔王って呼ばれてるだけあってめちゃくちゃ強いわよ。そうね、あのミダマさんでも四、五人くらいでないと勝負にもならないわね。とにかく魔力数値が高くてチャームの威力が半端ないの!」


「うっ。そ、そうか。

 ってか、なんで魔王からこんなポンコツが生まれてきたんだか………。」

 レイムの説明に対して比呂貴がつぶやく。それに対して比呂貴を含め三人は残念そうにレイムを見つめる。

「ああ、それはパパの影響かもね。まあ、私はパパのこと知らないんだけど。

 ってか、なにどさくさに紛れてポンコツって言っているのよ! それにみんなしてそんな顔して!」


「でも、アメジストさんが魔王なんだったらぜひとも会ってみたいね。それにぜひともチャームを掛けて貰いたい。オレの魔法は物理攻撃的なものばっかりだしね。精神攻撃系はよくわからないんだよね。元の世界にはそういうのは無かったからな。」

「確かにロキとママの戦闘は気になるところだわ。でもでも、わたし的には特にママとは会いたくないから会いに行くならひとりで行ってよね。その間はみんなでお留守番してるから。もちろん、アイリスちゃんとラブラブするためにね!」


『まあ、最後の一言は絶対に叶うことは無いだろうね。ハハハ。

 あと、ルカスと話してる時もそうだったけど、このレイムの母親への嫌いよう。何があるんだろう。興味はあるが、地雷っぽいので今日のところはそっとしておこう。』

 比呂貴は心の中で思っていた。


 しかし、世の中にはどんな関係性があるか全くもってわからないものである。

 そんなこんなでこの日は宿屋でみんなワイワイ騒ぎながら過ごした。




 翌日はビッツにドラゴンの国を色々と案内してもらった。国の奥の方は空で行くことを前提となっている箇所もあり、ビッツに乗せて貰いながら行った。そこではもう人間サイズの住居はもちろん、そもそもとして人工物は無く、ドラゴンも本来の姿で悠々と空を飛んでいたり休んでいたりした。

 ビッツ曰く、ドラゴンの国ではホワイトドラゴンを中心にアースドラゴン、ウィングドラゴン、スカイドラゴンの一部が暮らしているということである。レッドドラゴンとブルードラゴンはいないということだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る