第7話 論戦! ホワイトドラゴンとの会談!

 翌朝。みんなは朝食など準備を済ませてビッツを待っていた。そしてビッツが呼びに来る。

「おはようございます。みなさん準備はよろしいですか? それではリーダーのところへ案内しますね!」


 いよいよホワイトドラゴンのリーダーとの会談である。


 ビッツは別の建物へ案内した。三階建てのかなり立派な建物だ。この辺りはほとんど一階、たまに二階建ての建物で構成された村なので、ここがリーダーの居城ずる施設なんだと推測できた。

 そして比呂貴たちは建物の奥にある部屋に案内された。かなり広いスペースで長机と椅子が長方形に並べられている。まさに大会議室という雰囲気だった。

 そこの奥には人影が三人いた。ビッツと同じような格好をしている。すでに会議室にいて迎え入れてくれた形になる。この会議の時間の件や、先に会議室に居て迎え入れてくれるところを見ると歓迎されているようである。少なくとも敵対の意思は無いようである。


 そしてドラゴンの三人は立ち上がった。初老の男性ふたりと人間だと三十歳ほどの女性がひとりである。そのうちの女性のドラゴンが比呂貴たちに挨拶を始めた。

「遠路はるばるドラゴンの国までようこそ。我々ホワイトドラゴンはロキ様たちを歓迎致します。私はこの国のリーダーを務めさせて頂いているピュールと申します。本日はどうぞよろしくお願いします。」

 そして三人は一礼をした。その後、ビッツはホワイトドラゴン側のほうへ立った。


 とても気品に満ちた光景であった。正直なところ比呂貴はもう少し横暴な態度を予想をしていたので、この気品ある丁寧な挨拶に拍子抜けしてしまっていた。

 しかし、気を取り直して返礼をする。

「ご丁寧な挨拶、恐れ入ります。この度はドラゴンの国へご招待頂きましてありがとうございます。

 私の本名ですが樹神比呂貴と言います。みんなからは愛称が定着していて『ロキ』と呼ばれています。どうぞ、皆様も気軽にロキとお呼びください。」

 そして比呂貴は三人に対して一礼をする。


「とりあえず、皆さま椅子にお座りください。」

 リーダーは着席を促してくれた。

 みんな各々着席し、そして比呂貴が早速話題に切り出した。

「ドラゴンの国への招待、大変感謝致しております。しかしながら、我々への要件は何でしょうか?

 我々が特に招待されるような理由がわからないので困惑しているのが正直なところです。」


「あら? ドルクマン王国で我々の国へ行きたいとクエストを出していたのはロキ様でしたよね?

 ドラゴンスレイヤーのロキ様が要望されているのです。我々としてはそんな方を招待しないわけにはいかないでしょう。むしろ、ロキ様が我々に御用があるのではないですか?

 まあ、我々にもロキ様にお話があったのは事実ですけどね。」


『ぬぬ。中々にマウントを取ってくるしゃべり方ではないですか!?』

 比呂貴の心中では苦笑いであった。


 そんな間があったが引き続きピュールは話を進めた。

「とりあえず、我々としてはロキ様の要件を最大限に伺い、出来るだけ応えて差し上げたいと思っております。その上で我々からの要望も受け入れて欲しいと思っています。」


「なるほど。そういうことでしたか。それはこちらとしても大変ありがたいご提案ですね。では、早速こちらの要件からお話して良いですか?

 というか、これだけ準備をしているのであれば大体の要件はすでに調査済みとも感じますけどね。」

 比呂貴の言葉にピュールは笑顔でいた。


「私の大切な仲間、もうすでに家族も同然のアイリスなんですがその体質のせいでドラゴンに狙われるんです。皆さんも記憶に新しいと思いますが、先日レッドドラゴンの幼体が襲って来て私が撃破しました。

 いい加減、襲われるのはたまったものではないので何とかならないかというのが要件です。元々はレッドドラゴンの住処を探していたのですが、ドラゴンの国へ行きたいというのはそれを直談判するためです。」

 比呂貴は要点を絞って話した。それに対しピュールが答える。


「確かに特異体質を持つ生物は属性を問わず、すべてのドラゴンにとってご馳走となります。当面の魔力補給は不要になりますしスキルに目覚める可能性もあります。幼体のドラゴンであれば特に標的にしやすいでしょう。」

「うん。だからですよ。特に幼体のドラゴンが襲ってくるということなのでなんとかならないのかと。

 というかですね、何とかならないのであればあなた方も含め、すべての属性のドラゴン族を完全に根絶やしにする覚悟もあるくらいです。今の私ならそれも可能なので。」


 比呂貴の言葉に一瞬ビクッとするピュール。そして話を切り出した。

「ドラゴン族を滅ぼすというロキ様の言葉、今は虚勢でないことはわかります。幼体のドラゴンであれば瞬殺、上級魔族のミダマ様をも退ける実力の持ち主。

 我々や、属性が違えどドラゴン族が危険な目にあうのは忍びません。まあ、元はといえばレッドドラゴンのせいなので自業自得という見方もできますが………。」

「おお、ミダマとの戦闘もご存知でしたか? 情報収集能力は高いようですね。

 なので、危険になるかどうかはあなた方次第ということでしょうかね? まあ、今回の旅の目的もそこにありますから。」


「情報は利益ばかりではなく命にも置き換えられるもの。これは人族との交流で学びました。元々ホワイトドラゴンは戦闘向きでもありません。なので、我々は世界中にネットワークを張り巡らすことに注力してきました。人族の五大国。あの入国が厳しいアマレイでさえ我らの諜報員がいます。さらに各大森林に生息しているモンスターとも交流がありますし、魔族とも各地で交流があります。


 ちょっと話が逸れましたね。申し訳ありません。

 現在ドラゴン族ですが、すべての属性でおそらく三千体以上は生息していると思われます。その中でもレッドドラゴンとブルードラゴンは数十体単位で群れを成して移動しながら生息しています。群れの数も数十でしょうか。

 とても難しい仕事になりますが、ぜひともやりましょう! いえ、やらせてくださいな。」

 ピュールは何やらあえて自分たちにハードルを上げてその成果を誇張するかのように申し出た。


「ふむ。なるほど。先ほどピュールさんが言った通りということですね。自分たちは仕事をするからその対価として自分たちの要求も聞いてくれと。

 いいでしょう。とりあえずは伺いますよ。ホワイトドラゴンの要求を。」


「その通りです。ロキ様が話のわかる方で大変助かります。いえね、こちらからの要求は簡単です。このドラゴンの国と不可侵条約的なものを交わして頂ければと思います。

 ロキ様たちがドラゴンを疎ましく思うように、我々としてもすでにロキ様は脅威なのです。少なくともこの国に住んでいるドラゴンたちはロキ様に対して敵対的な感情は微塵もありません。

 その証明として我々ドラゴンからひとり差し出しましょう。ロキ様から見たら人質として、我々としては監視の役割もあります。どうぞ、こき使ってやってください。これはロキ様にもメリットがある話では無いでしょうか?」


 そう言ってピュールはすっかりと冷めてしまったお茶をすする。

 淹れたての時は湯気が立っていたが、これだけを話すだけですっかりと時間が経ってしまっていた。


 比呂貴としてはちょっと考え込んでいた。

『うーん。なるほど。相手さんの要望はとりあえずわかった。言ってることに嘘偽りがないのはわかる。わかるが………。

 ただ微妙なのが向こうのやってくれる仕事だな。ただやるって言っただけで具体的にどうすんのか言ってくれなかったな。確かにホワイトドラゴンの連携はなんとかなるような気はするけど、自分たちで凄い数のドラゴンがいるって言ってたのにマジでどうするんだろう。自分たちで相当ハードル上げているのに………。

 これってもしかしてワザとボカシてるんだろうか。そこらへんがわからないな。まあ、ここはあえてこの件は触れず、今後なんかあった時にこの点をうまく解釈して交渉を有利に進めていくことにするかな。』


 こんなことを考えている比呂貴だったが、ここでなんとアイリスが話に割ってきた。この雰囲気の中、話に入ってくるとは相当な肝の持ち主であろう。末恐ろしいとはこのことかもしれない。

「あ、あのう。私から質問があるんですが良いですか?」

「はい。何でしょうか?」

 ピュールは答える。


「えっと、ホワイトドラゴンたちが他のドラゴンに連絡を取ってくれるってことなんですが、それって具体的にどうするんですか?

 何となくホワイトドラゴン同士は連携が付くのかなって思うんですが、他の属性のドラゴンへの連絡がうまく行くのかなって。さっき、ピュールさんもたくさんの群れがあるって言ってたじゃないですか?

 もし、連携がうまく行かなくて、結局ドラゴンに襲われてしまったら私たちはどうしたら良いんですか?」

 まさに今、比呂貴が心の中で考えていたことをそのままアイリスが代弁してしまった。これには比呂貴もびっくりして目が点になる。


「そ、それは、なので、こちらからドラゴンを人質に差し出すことで………。」

 歯切れ悪く言うピュール。そんなピュールを差し置きアイリスはさらに質問をする。

「人質はぶっちゃけあまり関係無いですよね?

 ちょっとドラゴンのことは良くわからないんですが、ホワイトドラゴンと敵対するドラゴンはいないんですか? それだと確実に奇襲される形になり余計に危険ですよね?

 あと、さっきも言いましたが、連絡がうまくいっていない場合は人質がいてもいなくても関係無いですよね?」

 アイリスは無慈悲に正確に粛々と問題点たる懸案事項を指摘した。


「………。」

 ホワイトドラゴンたちは言葉を詰まらせている。さらにアイリスはトドメを刺す。

「もしかして私たちを騙そうとしてませんか?」

「いえいえ。決してそのようなことはありません!」

 このアイリスの言葉には、流石にピュールも即座に返答する。


「あああ。もう、ぜんぜんダメだね!」

 会議室の外から突然声が聞こえてきた。そして会議室の扉が開いて人が入ってきた。そのままドラゴン側の席へ向かう。


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