第3話 ロキたちは人気アイドルグループのようです。
翌日、朝食を済ませて今度は四人で冒険者登録所に来た。
「そういや、クエストが成立するにはどうなるんだろう? その辺ちゃんと聞いてなかったなあ。」
比呂貴がボソッと言った。それにはレイムが答えてくれた。
「え? そんなことも知らないでクエスト出してたの?」
「そ、そうですが………。レイムに言われると、正論でも腹が立つなあ! ってか、正論だから余計に腹が立つんだな。」
「ムッフッフゥ! ってところね。じゃあ、このレイムさんが教えてあげよう!
掲載期間中にも関わらず、張り紙が無くなっていたときに誰かがクエストを受ける意思があるってことになるんだよね。
張り紙が無くなっていたら受付に言ってクエストを受ける人との会う算段とかを確認するわけですね。その辺は受付のお姉さんたちがやってくれるよ。」
この時のレイムさん。もちろんドヤ顔である。それはすがすがしいくらいのドヤ顔であった。
「くっ、その顔よ!
さらに説明が分かりやすいのも余計に腹が立つ。だけど了解。ありがとねレイム!」
なんだかんだで笑顔でお礼を言う比呂貴であった。
すると、亜人の兄妹と思われる男の子と女の子が比呂貴の前にやってきた。その子はなんとロキTシャツを来ていたのだ。
『おお、ダンの商売がもうこんなところまで届いているとは!』とロキは思っていた。
そして亜人の男の子が比呂貴に言った。
「あ、ありがとうございました!」
そう言って男の子は深々と頭を下げた。
「え? なになに?」
比呂貴は状況が飲み込めず呆然とする。すると、今度は女の子の方が答えてくれた。
「実は私たち、モンルード公爵に奴隷として売られたんです。でもロキ様がモンルード公爵を倒してくれたので自由になれたんです。もうすぐお父さんとお母さんが迎えに来てくれるんです。」
「へえ。そうだったんだ。まあ、オレはファテマとアイリスを助け出すためにしただけなんだけどね。あのブタ野郎、本当に酷い事ばっかりしてたんだなあ。」
そう言いながら比呂貴が亜人の女の子の頭をポンポンと撫でた。
「あのう。良かったら握手してください!」
そう言って亜人の男の子が手を差し出した。
「もちろん良いよ!」
比呂貴は笑顔で握手に応えた。そして亜人の男の子と女の子を交互に抱き上げたのである。
「ロキ様、ありがとう!」
二人はそう言いながら笑顔で手を振りそして去っていった。
「ああ、ロキ様。今度は私にも握手をお願いしてもよろしいですか?」
比較的近くに居た老人からも握手を求められた。
「ええ、もちろん。喜んで!」
比呂貴は笑顔で快諾する。
「あ、私も!」
「オレも良いですか?」
老若男女、多種族にわたり比呂貴の周りに人だかりができてしまった。ドラゴンスレイヤーのプラチナプレートでかつ、先日は悪名高いモンルード公爵を失脚させたのである。みんな比呂貴には興味しかなかったのである。
今まで比呂貴に対しては遠慮と警戒もあったと思われるが、亜人の兄妹をきっかけにそれはダムが決壊したかのような勢いで崩壊し、そして人が集まってきたのである。
すると今度は、
「あのう、オレ、実は昔、ここで冒険者やってたときからファンだったんだよね!」
中年のおっさんがレイムの前にやってきた。
「わ、わたしぃ?」
意外な展開にレイムもタジタジになってしまった。
「あのう、私、ファテマちゃんのユニコーンの姿に惚れ惚れしています!」
今度は女性がファテマの近くに来た。
「わ、儂もか!?」
ファテマも驚いていた。
この流れを察知したアイリスはというと、すでにどこかに行っており姿は無かった。極度の人間嫌いと人見知りである。当然の行動かもしれない。しかし、周りのみんなはそんなアイリスも探し始めるのである。
周りは長蛇の列が三つできており、握手会が始まってしまった。この光景はまさにどこぞのアイドルグループの握手会の光景そのものであった。
そして結局この長蛇の握手会は夕方まで続いたのであった。
握手会が終わってみんなはレストランに来ていた。
「ふぁー、これは疲れたのう。まさかこんなことになるなんて夢にも思わなんだわ!」
ファテマがドリンクを飲みながら答えた。
「まあね。まさか私にまで握手を求めてくるもの好きがいるとは思わなかったわ。」
レイムもドリンクを飲みながら答える。
「え? レイムって見た目はスゴイ美人じゃん。黙ってればポンコツは分からないし、それなりに人気があっても不思議は無いと思うけどな?」
そしてアイリスがいつの間にかシレッとテーブルにいて話に混ざっていた。
「ちょっ! アイリス!
どこ行ってたんだよ。こっちはめっちゃ大変だったんだからな!」
比呂貴がめっちゃツッコミを入れる。
「え? あんなのに巻き込まれるわけにはいかないじゃん。私人族は嫌いだしね。」
相変わらずシレッとさも当然のように答えるアイリスである。
「アハハハ。本当にアイリは筋金入りじゃなあ!」
ファテマが笑いながら言う。
「まあ、それはいいや。
ってか、昼飯も食べないで頑張ったんだから、今日は飲むし食べるぞ!」
比呂貴が気合いを入れないしてドリンクに口を付ける。
「異議ナーシ!」
ファテマとレイムが一緒にハモりながら答えた。その後は比呂貴と同じようにジョッキを口へ運ぶのである。
そんな二人をアイリスは笑顔で見ていた。
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