第2話 どうやってクエストをだそうかな?
カフェの前で各々別れる。そして比呂貴とアイリスは宿屋に向かった。宿屋では筆記用具を借りて部屋に戻ったのだ。
「ところでロキ! 報酬はどうするつもりなの?」
「あ、そうか。報酬か。考えてなかったな。ってか、相場観も良く分からんし、依頼の出し方もいくつか方法あるよな。」
「依頼の出し方って、馬車はこっちで用意するとかそんなんでしょ? めんどくさかったらコミコミの値段で出すのが早いよね。
ロキはドラゴンスレイヤーでプラチナプレートなんだから、逆にそういうまとめたほうがどっしり感があって良いと思うけどね?」
「うん。アイリスの言う通りだよ。なかなか状況をよく観察してるね。」
「ふふふん♪」
アイリスは比呂貴に褒められて上機嫌になる。そんなアイリスも可愛い。
「あとは値段だけどどうすっかな。」
「コミコミ値段なら銀貨3枚くらいかな?」
「いや、コミコミって言っても結局はこっちで計れないよな? 北の国に行くとなるとそれなりに馬車も食料も必要でかなりの日数を拘束するからね。経費的なものも発生するだろうし、それもどちらかというとこっちもちだろうね。」
「うん。言われてみればそうよね。だったら逆に向こうから提案して貰ってそれで決めるってことになるのかしら?」
「うん。そうしたほうが良さそうだよね! じゃあ、銀貨三枚以上で必要経費は応相談ってことにするかな? アイリスもそんな感じでイラスト描いておいて!」
「うん。わかったよ!」
そして夕方。アイリスが声をあげる。
「出来たよ!」
「あ、オレもちょうど今書き上げたところ。いや、辞書が無いから難しかったよ。あとで間違いがないか確認して貰えるかな?」
「うん。それは良いけど、とりあえず私のはこんな感じでどうかな?」
「なっ!? めっちゃ可愛いやん!」
アイリスのイラストはデフォルメされた馬車が下に描かれていて、上にはこれまたデフォルメされたドラゴンが掛かれていた。萌え絵である。比呂貴としてはオタク心がくすぶられるようであった。
「ロキの申込用紙も特段変なところは無いわよ。ってか、こんな短期間で良く文字が書けるようになったわね。」
「ふふん♪ オレは出来る子なんだよね!」
その後は二人で冒険者登録所の三階に戻った。
「じゃあ、これでお願いします!」
比呂貴は元気よく受付のお姉さんに書類を渡した。
「承知しました。掲載料ですが、登録所へは掲載に銀貨一枚とクエストが成立したら銅貨二枚を頂きます。あと、掲載期間はひと月です。更新はできます。その後、二週間ごとに銅貨二枚頂きます。」
「わかりました。じゃあ、とりあえず銀貨一枚置いておきます。よろしくお願いします!」
とりあえずクエストを出した二人、その後は晩御飯を食べるために冒険者登録所の近くにあるパブに来ていた。おっさんと幼女の二人。ここが日本だったら間違いなくおまわりさんの職質であろう。
しかしここは異世界。しかもアイリスは比呂貴にとても懐いているのでどこも怪しいところが無いのが不思議なところである。異世界クオリティに万歳であろう。
翌日、宿は無理やりチェックアウトさせられてしまった。流石に二日連続で部屋を掃除しないわけにはいかないということであった。
しかし、もう一泊するということで荷物は宿に置いて貰って、そして比呂貴とアイリスはまたまた冒険者登録所に来た。
人だかりが出来ていた。
それはそうである。ドラゴンスレイヤーのロキからのクエストである。みんな興味なしというわけにはいかないであろう。
代わる代わるクエストの用紙を見ていく人たち。しかしみんな難しい表情ですぐに去ってしまう。どうやらあまり感触は良くないようであった。
特に何かするわけでもなく登録所の二階の椅子に並んで座っているふたり。クエストの状況をただただ眺めていた。
一時間ほど状況を眺めていたが不意に比呂貴が声をあげる。
「なんか埒があかないね。とりあえずカフェにでも行こうか?」
「うーん。そうだね。」
昼食を取り午後もクエストの状況を眺めていた。宿屋のチェックインが午後三時からなので少なくともそれまでは時間をつぶす必要がある。
そして、チェックインの時間過ぎたので比呂貴とアイリスは登録所を後にした。
宿では新しい部屋に案内された二人。登録所でのクエストの話や魔法の話などで雑談をしていたが、そこへファテマとレイムが帰ってきた。
「あれ? もうこんな時間?」
比呂貴はきょとんとして答えた。辺りはすっかり暗くなっていた。
「ただいまじゃ。にしても呑気にだらけておるのう。」
「えっ? だってクエスト出したら後は暇でさあ。それに最近オレ、頑張ってばっかじゃん? なんか急に力が抜けちゃったというか。」
ファテマの問いに答える比呂貴。ファテマはその後にアイリスに言う。
「ロキもロキじゃが、アイリスも酷いありさまじゃなあ。お行儀が悪いし、だらしないといったらこの上ない。」
「え? た、確かにそうだけど、でもでもこの雰囲気だとこうなっちゃうよ。」
アイリスも最初は椅子に座って激しく討論していたが、だんだんとぐうたらになっていき、比呂貴はベットに寝そべって、アイリスは比呂貴のお腹を枕にして同じようにグータラに寝そべっていた。出会った頃、警戒していたアイリスとはもはや別人である。
「まっ、とりあえず晩飯にするか? どこか食べに行こう!」
比呂貴はそう言ってアイリスと一緒に起き上がった。話を逸らそうとする魂胆が見え隠れする。
一同はレストランに来て、とりあえず一通りの注文を終えた。そこでファテマが口を開いた。
「そういやレイムよ。さっきから大人しいの?
さっき宿屋でもロキとアイリスがあんな状態じゃったが何も反応せんかったのう?」
「えっ? まあ、そうなんだけどね。ロキについては後で締めて置くにして、それよりもファテマちゃんだよ!」
「え? 儂か!? 儂なんかしたかのう?」
「もう、ファテマちゃん大好きだよ! もともと大好きだったけどね。
あの空の旅。空が高くて気持ち良くて。それに夕日が沈んでいくあの光景は感動しちゃったわ!」
「あ、そっちの話か?
まあ、確かに綺麗な夕焼けで雲やノンリミットに掛かっていくのも良かったな。ってか、レイムって本当に魔族なのかのう?
綺麗なものに感動するって魔族の感覚には無いと思うがな。」
「アハハハ。確かにそうかもしれないけどね。
でもでもね、ほんと、伝説の神獣ユニコーンとの空の旅ってこういうのを期待していたんだよ!
それが叶ってとっても嬉しいんだよ! ファテマちゃん最高! ファテマちゃん素敵!」
そう言ってレイムはファテマに抱き着いてほうずりしていた。
「まあ、これほど喜んでくれるのなら儂も嬉しいがな。ゆっくり飛ぶのは結構疲れるものなんじゃが、疲れた甲斐もあったってもんじゃ。」
そんな中、比呂貴がアイリスに言う。
「ってか、あんな状態になっておりますが、アイリスとしては何かありませんか?」
「え? 別になにも無いわよ?」
アイリスとしては特段興味が無い素振りをみせるが、しかしちょっと言葉をこぼす。
「ってか、レイム! お姉ちゃんは私のお姉ちゃんなんだからね!」
それなりに気にしているアイリスであった。
「そういやファテマさん。ダンの様子はどうだった?」
比呂貴は次にファテマに話題を振った。ファテマは抱き着かれているレイムも振り切りそして答えてくれた。
「とりあえず、レイムが詳細に説明をしてくれたよ。儂もそこまで細かいところまで聞いていなかったから良かったわい。それとドラゴン住処の捜索依頼は取り消してきた。」
「ありがとうファテマ! それと、宿屋のツケはどうなってた? かなり溜まってたでしょ?」
「いや、それがなあ、儂も細かいところはさっぱり理解できんかったんじゃが、まあ、ぶっちゃけ言うとツケは無いということじゃ。むしろダンから支払いがあると言っておったぞ。肖像権がどうのこうの言っておったが………。」
「おお、マジか? まさか、ダンが言ってた商売がうまくいったんだ?
ドラゴンスレイヤーロキグッズを売りたいと言ってたんだよね。オレとしては売り上げの三パーセントを肖像権として貰えればダンの好きにしていいよって言ってたんだよね。
ほうほう、商魂たくましいなあ!」
「ってことはあれか? ロキが活躍すればするほどいろんなグッズ? とやらが発売されてロキはその分お金が入るということか? いやいや、これはロキの方が商魂たくましいではないか!」
ファテマがツッコミを入れた。
「アハハハ、確かにそうかもな! じゃあ、ダンの商売のためにもオレはオレでがんばらんといかんなあ!」
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