第57話

「おねえさま。

 このこ、だっこ、する?」


「ええ、ええ、抱っこしますよ。

 さぁ、此方にください」


「はい」


 ミモザがとても可愛らしい赤ちゃんを渡してくれます。

 手も足も顔もプクプクに肥っていて、思わず指でツンツンしたくなります。

 私が指でつつくと、ケラケラと笑ってくれます。

 その笑顔を見ると、心から幸せな気分になれます。

 こんな幸福な時間が来るとは、壊れていた時には思えませんでした。


 まあ、でも、本当は、ルークの子供が抱きたかったのです。

 ルークに、

「ルークの子供が抱きたいわ」

 と言ったのですが、本当の意味を分かってくれなかったようです。

 半人間の赤ちゃんを人間の変化させて、私に預けてくれました。


 私だけではなく、ミモザをはじめとする、半人間から人間に変化させられた娘達も、赤ちゃんに夢中になっています。

 本能的に子供が欲しいのかもしれません。

 そう考えると、彼女達が可哀想になります。

 その気持ちは、私にも痛いほどわかるからです。


 私も自分の子供が欲しい。

 でも、私が人間の男性と仲良くすると、またルークが激怒するかもしれません。

 前回の事があるから、我慢してくれるかもしれませんが、私にはそれを試す勇気などありません。


「ねえ、ルーク」


「なに?

 お姉ちゃん?」


「元半人間の子達も、自分の子供を生みたいと思うの。

 男の子達と仲良くさせてあげれないかな?」


「いいよ。

 仲良くしたい子のために、城下を大きくして、そこで暮らせるようにする。

 子供が産まれたら、こっちに戻ってもらってたいいの?

 お姉ちゃんは赤ちゃんが沢山いた方がいいの?」


「ええ、そうね。

 赤ちゃんが沢山いた方がいいけれど、うるさすぎるのも辛いわね。

 赤ちゃんだけを寝かせられる部屋や、赤ちゃんとお母さんが一緒に寝られる部屋、何時でも食事ができる部屋、色々用意できるかしら?」


「うん、用意出来るよ。

 あの子達も料理したモノも好きになったから、城下の人間に美味しいモノを作ってもらうよ。

 果物は生の方が好きみたいだから、果物だけはそのまま置いておくよ」


「ええ、そうしてあげてちょうだい。

 そうしてくれれば、お姉ちゃんもうれしいわ」


 ルークが満面の笑みを浮かべてくれています。

 元半人間の子達が子供を作る様子を見れば、ルークも女の子が欲しくなるかもしれません。

 子供が欲しくなるかもしれません。

 それに期待しましょう。

 でも、私達の事ばかり考えていては駄目ですね。

 私達に巻き込まれ、不幸になった人達の事も考えなければいけませんね。


「ルーク。

 内乱になった国の人達はどうしていますか?

 飢えていませんか?

 食糧は送れているのですか?」

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