第41話

「まぁ、なんて野蛮なんでしょう! 

 見てくださいませ、手づかみで料理を食べておりましてよ!」


 ああ、またです。

 側近は何も伝えていなかったのでしょうか。

 もう何カ国もの王女が、同じようにルークを罵って、疣臭豚に変化させられているのに!


「ブヒ!

 ブヒ、ブヒ、ブブブ、ブヒィィィィィ!」


 もう手遅れです。

 どれほど泣きわめいても、元の姿には戻れません。

 最近のルークは私がむりに晩餐会に連れて行くせいか、怒りっぽくなっています。

 しかもしつこくなってしまっています。

 今までなら一週間で元の人間に戻していたのに、今は謀叛を起こした人間のように、ずっと化物の姿のままに放置するのです。


 変化させられた王族の母国から、何度も詫び状が送られてきたり、詫びの使者が送られてきたりするのですが、頑としてルークは許さないのです。

 今回だけは、私の言葉も聞いてくれません。

 反抗期なのでしょうか?

 いえ、分かっています。

 やっぱり私がむりに晩餐会に連れまわしているからです。


「ルーク殿下!

 どうか姫様をお許しください。

 つい口にしただけで、悪気はないのです。

 臣が厳しくい御諫めさせて頂きますので、どうかお怒りを鎮めてください」


 ああ、いけません。

 そんな事を言って火に油をそそぐだけです。

 ルークの悪口陰口を言うのは命懸けだと、もっと前に厳しく言っておかねばなりません。

 この晩餐感をお受けする時に、何度も厳しく伝えていたではありませんか。

 その時の事は、ルークも見聞きしているのです。

 それが全くできていないから、ルークは激怒したのです。


「やかましいわ!

 お姉ちゃんが何度も注意していたのに、お姉ちゃんの言う事を聞かない。

 お姉ちゃんを馬鹿にする奴は、みんな豚になればいいんだ!」


「ブヒ!

 ブヒ、ブブブ、ブヒ、ブブブ!

 ブヒ、ブヒ、ブブブ、ブヒィィィィィ!」


「おのれ成り上がり者が!

 思い上がりおって!

 俺が成敗してくれる!」


 ああ、もう収拾がつきません。

 ルークの事を内心見下していた騎士が斬りかかりました。

 でも、ルークに勝てる訳がないのです。


「ブヒ!

 ブヒ、ブブブ!

 ブヒ、ブブブ、ブヒィィィィィ!

 ブヒ、ブヒ、ブブブ、ブヒィィィィィ!」


 可哀想ですが、怒りを口にしたとたん疣臭豚に変化させられました。

 会場が激烈な臭気に満たされてしまいました。

 これではもう食事処ではありません。


「おのれ、おのれ、おのれ。

 もう絶対に許さん!

 あの女を人質に取るのだ。

 そうすれば成り上がり者は何もできなくなるぞ!」


 いけません!

 最悪の事態です!

 今のルークに私を人質に取るなんて言ったら、何をしでかすか分かりません。

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