第29話

 大魔境周辺の村々から、代表の村長が城下に集まってきています。

 村から魔獣の素材や薬草を購入していた商人も集まっています。

 しかしルークが大改造した城は、誰も寄せ付けません。

 村々や商人が所属する領地の貴族は誰も来ていません。

 ルークが恐ろしいのかもしれませんし、既に大魔境で獣に変化させられてるのかもしれません。


 見て見ぬ振りをして、城の中でルークの世話だけして暮らせれば、安穏な生活ができるでしょう。

 ですがその間に、多くの民が困窮しているのです。

 中には飢えて死ぬ者がいるかもしれません。

 飢えて死ぬよりはと、娘を売る者や、家族の為に自分を売る者まで出てくるかもしれません。


 そんな事を考えてしまうので、安穏に暮らす事はできません。

 私は小心なのです。

 近くで誰かが飢えて苦しんでいるのを知って、平気でいられるような図太い神経ではないのです。

 私が心の平穏をえて、安心してルークの世話をする為には、少なくとも近隣が豊かで平穏でなければ無理なのです。


「お姉ちゃんは民が飢えることなく平和に暮らしていないと、安心して眠れないの。

 ルークには負担をかけてしまうけれど、陳情に来ている民を助けてあげて欲しいの」


「えぇぇぇぇ!

 でも大魔境はお姉ちゃんの国だよ!

 勝手に入って獣を狩ったり、草花を盗んだ奴は許せないよ!」


 やはり思った通りでした。

 既にルークは罰を与えていました。

 それにルークは自分が王だとは思っていないようです。

 私が女王であり、姫でもあると思い込んでいるようです。

 しかしそれも仕方ありません。

 ルークに納得してもらう為に、私とローガン王で決めた事です。


「勝手に入って民は殺していないよね?

 お姉ちゃんとの約束は守ってくれているよね?」


「うん、守っているよ!

 でんでん虫にして、毎日毎日身体を喰い千切られる罰を与えているよ」


 ああ、やっぱり生き地獄に落としていました。

 ローガン王に謀叛した者達と同じ罰を与えています。

 ここで下手に情けをかけたら、今後言う事を聞いてくれないかもしれません。

 ルークなら絶対に私の優先してくれるとは思いますが、過信は禁物です。

 それに勝手に人の物を盗むのは罪ですから、ある程度の罰は必要です。

 キッチリと法を定めて、それに従って罰を与えるべきでしょう。


「ありがとう、ルーク。

 ルークが国王になったから、ちゃんと法律を作らないといけないわ。

 悪い事をした者も、その法律に従って罰を与えないといけないの。

 それは分かってくれる?」


「うん、分かるよ。

 ルークはいい子だから、お姉ちゃんの言う通りにするよ。

 僕が国王で、国はお姉ちゃんのモノで、御姫様になるんだよね。

 でも法律を考えるのは面倒だから、お姉ちゃんがやってくれる?」


「ええ、いいわ。

 全部お姉ちゃんが考えてあげるけど、後で気に食わないとか言っちゃ駄目よ。

 お姉ちゃんだって面倒なのよ。

 それをルークのために頑張って考えるんだからね」


「うん、分かっているよ。

 絶対に嫌だって言わないよ。

 だってお姉ちゃんは僕の嫌な事はしないもの!」

 

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