第15話ローガン王視点

「おお、ジェイデン。

 よく帰って来てくれた。

 これで王国の危機は去った」


「馬鹿な事を言わないでくれ、ローガン。

 相手はあのルークだぞ。

 俺一人の力でどうにかなる相手ではないぞ」


「そんな事はない。

 ジェイデンが味方してくれたら、馬鹿な貴族も反対しなくなる。

 思い切った手が打てるようになるのだ」


「そう言う事なら手助けできるだろう。

 何なら俺がやってやろうか?」


 我が莫逆の友ジェイデン。

 ジェイデンがいなければ、余はとうに死んでいただろう。

 王位を狙う弟と佞臣共の手にかかって、憤死していただろう。

 皆が余を見放す中で、ただ一人味方してくれた誇り高き忠臣。


 なのに、子供可愛さにジェイデンの諫言を聞き入れなかった愚か者。

 それが私だ。

 そしてジェイデンが諫言してくれていたように、王国は存亡の危機に立っている。

 全ては余の不明から始まった事だ。

 この期に及んでジェイデンの手を穢させるわけにはいかない!


「それは余がやる。

 息子を愚か者に育てた責任を取らねばならない。

 王太子とナオミはこの手で処刑する。

 ダニエルを誑かしたナオミだけは、この手で断罪せねば怒りが収まらん」


「そうか。

 そうだな。

 だがそれからどうする心算なのだ?」


「そこを相談したいのだ。

 どうすればルークを抑える事ができると思う?」


「それは簡単な事だろう。

 王太子が考えていたのと同じだ。

 オリビアを抑えればいい。

 まあ、王太子がやったように人質に取るのは下策だ。

 王太子と結婚させるのが一番だったが、今更その手は使えない。

 ガルシア公爵家は独立か謀叛を決断しているだろうからな」


「そうなのだ。

 一時はディランとの婚約も考えたのだが、それではルークが怒り狂うと思ってな」


「そうだろうな。

 最近の噂を聞いても、ルークの姉好きは常軌を逸している。

 今オリビアに婚約を申し込んだら、それこそ滅ぼされるぞ。

 それよりは、オリビアに爵位を与え、ガルシア公爵家から独立させたらどうだ?」


「独立か。

 確かにオリビアが独立したら、ルークはガルシア公爵家を出て、オリビアの家に行くだろうな」


「後はルークに爵位を与え、オリビアに後見人を任せるかだ。

 こちらの方が現実的だな。

 ルークの恐ろしさと、ルークを抑えられるのがオリビアだけだと言う事は、今回の件で国中の人間が思い知っただろうからな」


 ジェイデンの言う通りだ。

 今迄は何をしでかすか分からないルークに爵位を与えるなど、考えもしなかったが、今回の件の功績と詫びとして、爵位を与えて取り込めばいい。

 いっそルークとオリビアの二人とも爵位を与えるか?

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