第14話

 父上と兄上が、兵を率いて無事に戻られました。

 ルークから先に話は聞いてたのですが、実際に御顔を見るまでは少々不安でした。

 ルークの事ですから、どこか悪戯していないかが心配だったのです。

 父上も兄上も、ルークに悪戯されるだけの事をしてきたのです。


「お姉ちゃん、ご飯だべさせて」


「はい、あ~んして」


「「……」」


 父上と兄上が白い眼で見ていますが、それは仕方ありません。


「父上、兄上、これはお二人を助けるための約束ですよ。

 そのような冷たい眼で見られたら、私の立つ瀬がございません」


「いや、すまん、申し訳ない。

 今回は助かった。

 それでな、今後の事を相談したいんだが」


「お姉ちゃん、そんな豚は放っておいて、約束守ってよ」


「はい、はい。

 今度はスープを飲む?

 私が自分で作ったのよ」


「うん!

 飲ませて、飲ませて!」


 父上は諦めたような顔をしています。

 兄上はいけません。

 眼に殺意が籠っています。

 愚かです。 

 この期に及んで、まだそのような目つきをするとは、情けない事です。


 未だにルークの力を認められないのでしょう。

 ずっと虐めてきた弟が、自分より力があるのを認められないのでしょう。

 情けない事です。

 決して無能な方ではないのですが、母上の悪影響から逃れられないのでしょう。


 まあ、でも、確かに、この状況は異様でしょう。

 当主である父上と、跡継ぎである兄上が、私とルークに見下されているのです。

 ですが現実の力関係を考えれば仕方りません。

 ルークに助けられたのですから。


 そもそもルークを虐めて、屋敷に住むことを許さず、あばら家に押し込んだのは父上と母上です。

 魔法の才能が発現したルークが、あばら家を天にも届くほどの塔に造り変え、屋敷を見下ろす状況になっているのです。


 しかも父上がルークに願い事をする時には、私に同行を頼んだ上に、宙に浮くルークに見下ろされることになります。

 今は父上だけでなく、兄上も見下ろされています。

 でも少しおかしいです。


 普段父上は自分だけでここに来られます。

 未だにルークを認められず、なにを言い出すか分からない兄上は、ルークを怒らさないように、普段は絶対に連れてこられません。

 何か重大な決断をされたのかもしれません。


「なあ、ルーク。

 オリビアとずっと一緒に暮らしたくはないか。

 ルークが手伝ってくれるのなら、オリビアと王太子の婚約を破棄して、ルークがオリビアずっと一緒に暮らせるようにするぞ」


 やはりそうですか。

 王家に裏切られて、独立か謀叛を決断されたのですね。

 ですが勝つためには、ルークの支援が不可欠なのは、よく分かっておられるのですね。

 ですが問題は兄上です。

 兄上にルークに頭を下げる胆力があるかどうか……

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